IT部門の管理職をオファーされたら
あまりに多いのは、IT部門の管理職を志望する人がこの仕事を誤った方向からしか見ていないことだ。報酬額、地位、実権、影響力、IT部門の予算規模といったことばかりに気を取られている。こういった項目は重要ではあるが、それに気を取られるあまり、それより目立たないが同じぐらい重要なものを軽視してしまうのは問題だ。
オファーを出した側は、彼らの目下のIT管理上の問題を解決してくれる人物を求めているということを考えてほしい。このような問題を解決しようと苦労する中で、彼らはそういった状況について非現実的なイメージで語る場合がある。
雇う側には、問題の大きさを見くびると共に、微妙な問題点を取り繕おうとする傾向がある。オファーの理由を尋ねられた彼らは、こんなことを言うものだ。「そろそろ新しい人材を迎える時期じゃないかと思っただけですよ」、「ITをもっと活用する必要があるんです」云々。こういった答えは、それ自体が問題の兆しとも言える。
もちろん、問題の状況を正確に説明できないのは、問題を見くびった結果ではないかもしれない。たぶん、問題について語った人々は、何が誤っているのかを完全には理解していないのだ。いずれにせよ、大勢のIT管理者は、その地位を受け入れた後になって、組織の問題が最初に聞いたときより深刻であることに気が付く。職場にやってきた後で深刻な問題が姿を現すと、管理の仕事は難しくなり、失敗のリスクは増える。よって、組織が新しい管理者を求める理由を深く追求することは、雇用される前にやるべき健全な戦略だ。
とはいえ、IT部門の管理職のオファーを受け入れる前に根掘り葉掘り質問することは、ジレンマも招く。あまりに質問しすぎるのは、将来の雇い主になるかもしれない相手に気まずい思いをさせることになり、オファーの取り下げにつながらないだろうか。しかし、適切な質問への回答を引き出せなかったら、あなたの立場は悪くなるだろう。関係する人々のすべてが各自の立場において正直かつ率直でなければ、最善の成果は得られないのである。
また、質問攻めにすることで、組織の文化が見えてくる場合もある。組織には固有の文化があり、オファーを受け入れる前に企業の文化をよく理解しているに越したことはない。文化を理解できれば、組織で快適に過ごせるかどうかを判断でき、その文化の中で効果的に働くことができる。
時間をかけて問題点を明確にする
新しいIT管理者の成否を左右する要素の例を以下に挙げる。すべてを網羅しているわけではないが、追求する必要がある領域の多くが含まれている。
- なぜ前任者は退職したのか? 全般的な権限の欠如が理由か? 関係者、つまりITスタッフ、IT顧客、または上司と良い関係を築くことができなかったのか? IT部門の展望を見通し、それを推進することに失敗したからなのか?
- 問題点を広い視野から見るため、ITを利用する部署に所属するスタッフと話をすることができるか?
- 組織の幹部は、IT部門に十分な権限を与えていたか? ITの職務と目標について組織全体の人々に知らせる通達があったか? このような文書がない場合、この種の文書を作成して発行することに経営者は前向きか?
- 幹部はITを組織を前進させるための武器として見ているか、それとも単なる備品と思っているか?
- ITは「金食い虫」であり、IT経費を削減すれば組織は得をすると思われているか? 幹部がITのコストを多すぎると感じている場合、そう不満を抱くほどの出費なのか検証するように求める必要がある。
- 幹部は、新しいIT管理者に期待する改善を具体的に認識し、不可欠の変更を実施するために必要な支援を提供するか?
このような質問を投げかけると、仕事をオファーする側の機嫌を損ねるかもしれない。そうなった場合、オファーを受け入れる前にそういったことを確認することは、将来の問題を回避するために必要なのだと答えるとよい。仮にそう答えた後でもオファーした側が難色を示すようであれば、おそらく交渉を打ち切る時期だろう。将来の雇い主が、何が間違っているのかについて候補者と話し合うことに価値があると思わないなら、なぜそのポストが空席なのか理由がわかろうというものだ。
どの程度の支援が得られるか
新しいIT管理者を必要とする組織では、管理者を迎えた後で、ある程度の変革をIT部門で行うことが必要になる。単に新任の管理者を迎え入れるだけで、何もかも以前と同じというのでは、新しい管理者の失敗はお膳立てされたようなものだ。よって、変革が必要なことをどれだけ経営者が認識しているか、必要な変革を支援する意思がどれほどあるかをはっきりさせる必要がある。この疑問への答えを推測するのは難しく、それが後になって深刻な問題を招く可能性がある。最適な方法は、率直に意図を説明し、ITのために適切な支援を提供する意思が経営者にあるかどうかを尋ねることだ。
支援の増強が何を意味するかは人によって違うので、特定の財政規模の支援強化について将来の雇い主に質問してみよう。その答えから、雇い主がIT部門の現状をどの程度理解しているかがうかがい知れる。また、雇い主がIT部門の歩みを速めるために適切な予算を出す意思があるかどうかも確認できる。
必要な前進を達成するために必要な具体的な数字、たとえば今後3年間でのIT年間予算の20〜25%増額などを挙げてみるのもよい。組織の反応から、IT問題に本気で取り組む姿勢があるかどうかがわかる。IT利用を正しい軌道に乗せるには費用がかかる場合がある。特に、組織が技術の進歩に遅れをとっているのに安穏としている場合がそうだ。ITの役割を強力にするために必要な助力が提供されそうもないなら、なるべく早くオファーを断るのが得策だ。
もし会社側が「コンサルタントに相談して問題を調査します。目標の実現には、今後3年間でIT予算を3倍に増やす必要があるかもしれません。必要だとわかった場合は、その投資に踏み切る用意はできています」などと答えれば、好感触である。逆に、答えの中に「ええと、そのことはあまり考えてませんでした。技術の進歩に遅れているような気がしただけなんで」といった言葉がある場合、要注意信号と言える。
結論
万事正しくやったとしても、新しい仕事がうまくいく保証はどこにもないが、適切な下地を作っておけば、成功の確率を高くすることはできる。お互いに質問と答えを率直にやり取りし、問題に対する見方が一致していることを確認できれば、協力関係は有益なはずである。
これは難しいプロセスかもしれないが、うまくいかない管理職の立場を避ける方が、不幸な結末になりそうなことに首を突っ込むよりましだ。IT部門の管理職のオファー受諾で過ちを犯すのは、愉快な経験ではない。不幸な結末を避けるために時間と労力をかけるのは、この課題に取り組む適切な姿勢である。
原文