ITプロフェッショナルの採用方法を再考する
組織が持つ多くの問題は、優れた人材の雇用能力にも影響を与え得る。それらのうち、現在の市場レートより給与が低い、福利厚生が充実していない、新しいテクノロジに接する機会を提供できないかそのつもりがない、研修や昇進の機会が少ない、といった問題に説明はいらないだろう。ここでは、組織がそれなりに魅力的な雇用条件を提供しているのに望ましい人材を採用できない場合を考えてみよう。給与や手当、労働環境に問題があるのでなければ、ほかに何か原因があるはずだ。
こうした場合の問題は、適切な人材を見つける過程や彼らの関心を惹くために費やす費用にではなく、採用を決めるまでの方法にある。適切なIT人材を獲得しようとしても、空振りに終わることが多い組織は、人材採用プロセスの変更を検討するとよいだろう。
まずは、IT人材を採用する現在の方法を分析する。ITプロフェッショナルの採用に関するよくある過ちを以下に示しておく。
求人の問い合わせに迅速に対応できていない。企業は、人材雇用に「フリーサイズ(どんな場合も画一的に対処する)」方式をとることが非常に多い。つまり、受付順に問い合わせに応えているということだ。多忙な部署では、受け取った履歴書や質問に返答するまでに時間がかかり、場合によっては数週間かかることもある。資質の高いITプロフェッショナルであれば、その間に別の仕事を見つけてしまうだろう。
面倒な採用プロセス上の時間的拘束が原因で、有能なIT人材を雇用できない。志望者が、数日または数週間にわたって面接を何度も受けなければならない場合だ。まず人事部門の担当者との面接から始まるが、彼らは技術面の知識に乏しく、志望者の技術的な資格、経験、要望を十分に理解できない。そのため、志望者は組織に対して好ましくない印象を持ったまま面接を終えることになる。IT分野についてのニーズが明確なら、採用の決定までに何度も面接する理由はどこにもない。
採用決定の責任を雇用委員会に委ねようとしている。面接にやって来た志望者がその場に集まったIT部門の社員3名から面接を受けたとする。だが、雇用契約を申し出る権限が誰にもないため、その3名が下した決定は、ほかの誰かのレビューを受けることになる。
こうした委員会的アプローチでは、気乗りしないまま参加する面接官がきっと1人はいるため、採用プロセスにおける面接の効果が薄れてしまう。また、志望者の能力と経験のすばらしさに自らの身の危険を感じた面接官が、何かと理由をつけて採用を見送ろうとするかもしれない。
雇用の申し出をすぐに出せない。その組織の仕事に適切な人材なのに、契約の申し出を行う者が二の足を踏んでいるうちに、志望者がよそへ行ってしまう。すぐ決断していればそんなことにはならなかっただろう。
必要な変更を行う
採用に至るまでの障害が1つでも組織の側にある場合は、有能なIT人材を集めるためにその克服が不可欠だ。必要な変更の実施は容易でないことが多い。既存の採用プロセスには多くの人が関わっており、彼らは変化に抵抗するからだ。しかし、優秀なIT人材を集めることの重要性とその実現が組織の目標になることを全員が理解すれば、多少は進めやすくなるだろう。
好ましくない採用の慣例をなくすには、次の手順に従う。
IT人材の雇用に関する問い合わせには、必ず24時間以内に回答する。面接のスケジュールはできる限り早急に組む。また、面接は一度だけ行い、そこでは採用プロセスのすべての側面を取り上げること。
採用プロセスの担当者をできるだけ少人数に抑える。理想的には2人だ。1人は、ITプロフェッショナルを雇った経験のあるIT部門のメンバーにすべきだろう。この人物は、IT部門の職務がどのように組織の戦略目標に連携しているかを理解し、その考え方を志望者に説明できなければならない。もう1人は、人事部門に所属している者になるだろう。この人物は、福利厚生と組織の方針の説明、志望者の身元の確認、必要な事務手続きの完了に責任を負う。
検討中の処遇を詳細に見直す時間を確保する。求人の要件、IT部門および組織の考え方、使われているテクノロジ、IT部門の将来展望に注目して確認を行うこと。
マーケティング戦術を応用する。業務、IT部門、組織について好ましいイメージを作り上げ、志望者にとってその仕事ができるだけ魅力的に見えるようにする。ただし、誇張があってはならない。仕事の内容を粉飾すると、虚偽の契約を結んでしまう恐れがある。新しい仕事が説明を受けた内容と違っていた、というのは最悪の状況だ。
志望者には48時間に結果を連絡する。経歴照会が行われることは志望者も理解しているはずだが、照会は早急に済ませ、雇用が遅れるのを避けること。
志望者を不採用にするなら、その決定を伝える。不採用通知を行わないのは、ビジネスの悪い因習だ。時間をとって面接に参加してくれたのだから、志望者にその結果を知らせるのは当然のことだろう。
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