wikiCalcファースト・インプレッション

VisiCalcの共同開発者の1人であるDan Bricklin氏が再び多忙になっている。Webベースの表計算アプリケーションであるwikiCalcの開発に取り組んでいるのだ。wikiCalcは、表舞台で脚光を浴びる段階には至っていないものの、その将来は有望だ。

Bricklin氏はwikiCalcのことを、「定型化された、単なる羅列ではないデータを提示するページを作成するためのWebオーサリング・ツール」と称している。別の言い方をすると、wikiCalcは、各種機能を完全装備した表計算アプリケーションではなく、表計算のメタファーを用いてデータを扱うための、Wiki風のオンライン・ツールである。

私は、wikiCalcを試用して、OSTGの編集チームが使用しているスプレッドシートの代わりとして適しているかどうか調べてみた。

wikiCalcのインストール

wikiCalcのインストール方法は、オペレーティング・システムの種類や、wikiCalcへのアクセス方法によって異なる。wikiCalcのtarballとzipファイルは、PerlプログラムとしてのwikiCalcのインストール方法を説明したこのページで配布されている。また、Windows用のインストーラはこのページにある。

wikiCalcをローカル・コンピュータで起動するには、単純にperl wikicalc.plを実行すればよい。すると、http://localhost:6556/でwikiCalcのページを表示できる。ポート番号を変更するには、WKC.pmをたとえば次のように編集する。

our %config_values => (socket = 6555);

また、wikiCalcは、サーバで実行することも可能だ。ダウンロード・ファイルには、CGIスクリプト(wikicalccgi.pl)とmod_perlスクリプト(wikicalcmodperl.pl)が含まれている。詳細なインストール方法については、このページに説明がある。

wikiCalcをローカル・アプリケーションとして使用する場合も、CGI/mod_perlアプリケーションとして使用する場合も、セットアップに要する時間は10分足らずである。ただし、mod_perlやCGIサポート自体がセットアップされていないサーバの場合は、そのための時間が別途必要だ。

wikiCalcの使用

wikiCalcで何日か遊んでみたところ、既にさまざまな機能が搭載されていることに感銘を受けた。Webベースのアプリケーションなので多少の制約はあるものの、簡単なスプレッドシートを作成して、FirefoxやKonquerorなどのブラウザで編集することが可能だ。

ただし、スプレッドシートの機能の中には、Webベースのアプリケーションではうまく実現できないものもある。表計算アプリケーションを日常的に使用している人なら、ちょっとした操作を簡単に実行できることに慣れているはずだ。たとえば、列の幅をクリック・アンド・ドラッグで拡張するなどだ。

wikiCalcの場合、列の幅を変更するためには、”Format”ページに移動して、列の幅を設定する必要がある。また、私が試した限りでは、1つの列全体の背景色をまとめて設定することもできない。ただし、背景などの書式設定オプションをセル範囲に対して設定することはできる。

一方、wikiCalcで巧みに再現されている機能もある。たとえば、一般的な表計算アプリケーションと同様に、Enterキーを押したときに1つ右または1つ下のセルに移動するように設定できる。これは、データをすばやく入力するうえで便利であるし、Webサイト用の簡単な表を作成するときにも役立つ。また、書式設定のオプションは非常に豊富で、セルの境界線、色、テキストの書式などを細かく制御できる。

wikiCalcでは、加減乗除の簡単な関数は使用できるが、複雑な関数はサポートされていない。

wikiCalcには、FTP経由で他のサイトに発行できる機能もある。この機能は、ローカルのwikiCalcで作成したファイルを会社のサイトに発行する場合に便利かもしれない。wikiCalcの今後のバージョンアップの中で、通常のFTPに加えてセキュアFTPを使用する機能が追加されることを期待したい。

また、誰でも自由にページを編集できるようにはせずに、ユーザを設定して、所定のユーザ以外は編集できないように制限する機能もある。不特定多数向けの公開サーバにwikiCalcを設置する場合には非常に有用だ。

wikiCalcは、アルファ版のプログラムにしては安定しており、きちんと動作するが、速度は今一つだ。操作によっては、多少時間がかかることがあり、Gnumericなどのプログラムに比べると、動作がいくぶんぎこちない。どういうわけか、FirefoxよりもKonquerorの方が、wikiCalcの動作はいくぶん速く感じられた。

wikiCalcを試用する中で、速度以外のめぼしい問題として唯一気付いたのは、CSVファイルのインポート機能だ。いくつかのCSVファイルのインポートを試みたのだが、駄目だった。スプレッドシートにデータが表示されないのだ。一方、CSVへのエクスポートはきちんと動作しているようだ。

wikiCalcを試用するときには、既知のバグのページをチェックするとよいだろう。wikiCalcのバグなのかブラウザのバグなのか(あるいはその両方なのか)、判断が付かないときに役立つかもしれない。

wikiCalcの今後

wikiCalcはまだ開発途中であり、プログラムの完成度が高まっていく中で、多数の改良や新機能が組み込まれていくものと予想される。また、wikiCalcはGPLなので、他のパッケージに組み込まれることも予想される。TinyMCEがWordPress 2.0に組み込まれたのと同じようにだ。

wikiCalcが、Microsoft Excel、Gnumeric、OpenOffice.org Calcなどのプログラムに取って代わる存在になるとは思えないが、オンライン・コラボレーション向けや、簡単な「データベース」や手軽な予算表としてスプレッドシートを使用する私のようなユーザ向けに、ニッチを埋める存在になる可能性はある。また、オンラインで使用する表を作成する手段としても便利だ。たとえば、MediaWikiの書式などで、表の作成に苦労した経験のある人なら、その大変さがわかるはずだ。

当面は、OSTGの編集者たちがスプレッドシートを作成して記事の一覧表を管理するときには、GnumericやOpenOffice.org Calcを引き続き使うことになりそうだ。現時点では、wikiCalcは低速で扱いにくいので、移行は困難である。

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