Fluendo社のMP3コンポーネントの足かせになりうる法的論議
Fluendo社はMP3の特許を持つ独Fraunhofer ISSと契約を結んでおり、エンドユーザとディストリビュータにこのプラグインを無償提供することを許可されている。ただし、ディストリビュータはFluendo社と再配布契約を結ばなければならない。これによってFluendo社はFraunhofer社との上位契約の要求事項を守っている。
この問題における最大の争点は、以下に(一部を)示すGPLの第7条にある。
裁判所の判決または特許侵害の申し立て、もしくはその他の(特許の問題に限定されない)理由の結果として、本ライセンスの条件と相反する条件が(裁判所による命令、取り決め等により)使用者に課せられる場合も、本条件は免除されない。本ライセンスおよびその他の付随義務のもとで、同時に利用者の義務を遂行できなくなる場合は、本プログラムを一切頒布してはならない。たとえば、ある特許ライセンスが、使用者を通じて直接または間接的にコピーを受け取った任意の第三者が特許権使用料を課さずに本プログラムを再頒布することを認めていない場合は、本プログラムの頒布を一切控えることでしかその特許ライセンスおよび本ライセンスの双方を履行することはできない。
この条文はダイナミックリンクをカバーするように解釈されている。そのため、GStreamerがFluendo社のMP3プラグイン(フリーでないプログラム)とリンクしている状態で、Rhythmbox(GPLプログラム)とGStreamer(LGPLプログラム)がリンクすると、RhythmboxとFluendo社のMP3プラグインがリンクされることになる。このMP3プラグインのライセンスはGPLに準拠していないため、どのディストリビュータもこれらを一緒に販売できないのである。
この問題は特許権で保護されたすべてのコーデックにあてはまり、GStreamerのライセンスをどのように変更したところで解決できない。しかし、GStreamerの開発者はこの問題を十分承知しており、アプリケーションのデュアルライセンスかGPLへの免責事項の追加のいずれかによって、フリーでないプラグインをアプリケーションと同時に使用できるよう方策を講じることをアプリケーションプログラマに推奨している。
Muine、Totem、Bansheeといった他の主要なメディアプレーヤーは後者の方策をとっている。あるメーリングリスト購読者は、免責事項についてRhythmboxの開発者に質問したものの明確な回答は得られなかったと報告している。しかし、Fluendo社のMP3コンポーネントを搭載したディストリビューションでは、GStreamerをリンクしているGPLライセンスのアプリケーションすべてにこうした免責が必要になってしまう。現在でも十分に面倒な手続きだが、将来はGStreamerを利用する追加のアプリケーションばかりか他のライブラリまでもがその対象になるため、想像もできないほどの問題になるだろう。
もう1つ考えられる解決策は、デフォルトの状態ではFluendo社のプラグインを含めずに、改めてこのプラグインを取得するしくみをユーザに提供することである。UbuntuはCDとISOイメージをデフォルトとして各種パッケージを出荷しているが、いくつかの制限付きライセンスのものも含めて、apt経由でのみ利用可能な追加パッケージを提供している。
さらに、このプラグインのソースコードはMITのライセンス下にあり、バイナリのプラグインの再配布契約では、万一変更が生じた場合にはディストリビュータがFluendo社に著作権を譲渡することを要求している。そのため、Ubuntuがapt経由でのみこのプラグインを配布することを選択する場合は、Fluendo社の供給するバイナリのプラグインを出荷するのではなく、ソースからビルドしなければならないことはほぼ確実であろう。
この方法はうまくいくものの、LAMEやlibmadのような他のMP3ライブラリが直面した法的な問題を回避するためにすでに使われたシナリオである。その取得が競合製品に比べて決して容易ではないとすると、Fluendo社のコンポーネントは苦戦を強いられるかもしれない。
Linuxユーザにデフォルトの状態でMP3再生機能を提供するには他に合法的な方法がないという理由から、Fluendo社はこのMP3プラグインをリリースすると公表している。しかし、ライセンス問題の束縛から逃れる方法を見つけ出さないかぎり、Fluendo社が各ディストリビュータに大きな進歩をもたらしたと受けとられることはないだろう。
原文