キング・コングの復活にOSSが一役
見る者を驚かすピーター・ジャクソン監督最新作の特殊効果は、Weta Digital社CTO、Milton Nganのようなアーティストによって実現された。Nganは、同じジャクソン監督のロード・オブ・ザ・リングシリーズでも特殊効果を担当しており、こうしたファンタジー作品が可能になったのはオープンソースソフトウェアのおかげだと、開発者に感謝している。特殊効果そのものの作成には使われていないが、ワークフローをスムーズにするうえで絶大な働きをしており、映画制作に欠かせない、とNganは言う。
NF:昨年でしたか、これまでに携わった映画では、オープンソースによって制作過程が改善されたと言っておられました。具体的には?
Ngan:オープンソースプロジェクトは、主として「グルー」コードとして使われています。作業の流れを自動化するための「つなぎ」の役割ですね。プロジェクトやパッチ、ユーザからの貢献が無数にありますから、私たちはそのなかから、開発時間の節約――もちろん、最終的には実行時間の節約――に役立ちそうなソリューションを選んで使っています。システムの観点から言うと、調達段階に長い時間をかけなくても、いくつかのソリューションを手早く組み合わせて実装できるのが利点でしょうか。問題は時々刻々発生してきますから、手早く解決しないと制作が滞ります。いつもそのプレッシャーの下で動いているので、実に助かります。
NF:キング・コングの特殊効果シーンの制作にどんなフリー/オープンソースソフトウェアが使われていますか。
Ngan:視覚効果を作る作業での直接的な使用はありません。さっきも申し上げたとおり、主としてワークフローの改善に使用しています。私たちのWebアプリケーションはオープンソース技術で開発されていますから、使用している主だったプロジェクトというと、やはりLAMP(Linux、Apache、MySQL、Perl/PHP/Python)ということになりますか。ときどきは、ImageMagickの出番もあります。
まあ、正直に言って、純粋に視覚効果を作り出す機能に絞れば、商業ベースのソフトウェアに太刀打ちできるオープンソースプロジェクトはありません。ソフトウェアの作成に費やされる資金量が全然違っていますもの。ソフトウェアベンダは最高の頭脳を集めて、視覚効果で発生する面白く奥深い問題の解決に当たらせていますから。
NF:映画制作にはさまざまな要素があると思います。特殊効果と制作技術という観点からそうした要素を分類したとき、オープンソースソフトウェアはどんな位置付けになりますか。そして、その重要度は?
Ngan:自動化、情報管理、システム――オープンソースが重要な役割を果たせる分野は、この3つですね。いくら特殊効果や撮影技術がすばらしくても、それを効率よく、かつ安定的に処理していくためのパイプラインがなければ、作品は完成しません。そういう意味で、開発者やオープンソースコミュニティがしてくれていることは、視覚効果アーティストにとってとても重要です。
NF:映画産業の視覚効果セグメントで、オープンソースソフトウェアはどれほど認識されているでしょうか。また、受け入れの意欲のほどは?
Ngan:私たちと同様、実利的に使っているというスタジオは多いと思いますよ。有名どころで見ても、何らかのLinuxを使っているところは少なくありません。もちろん、使っていないところもありますが、一方で、64ビットLinuxを入れているところもあります。種類で言うと、Red Hat Enterprise Linux、SUSE Linux Enterprise Server、Fedoraなど、スタジオの規模によっていろいろです。
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