カナダの通関代行会社はオープンソースだらけ
Fortlageは、カナダの通関業務代行会社、GHY社のIT担当副社長である。GHY社が取り扱う貿易貨物量は年間20億ドルを超え、顧客の輸出入業者も1,000社を超える。そして、カナダと米国でのすべての通関業務にオープンソースソフトウェアを使用している。
「Linuxを使いはじめたのは、初めてLANシステムを導入したときでした」とFortlageは振り返る。それが1997年だから、Linuxが有力オペレーティングシステムの地位を築く、はるか前のことである。当時のGHY社はAS/400一色の企業だったが、「プロプライエタリ標準に取り込まれたくないな、とはいつも考えていました」とFortlageは言う。オープンソースソフトウェアのことなど何も知らなかったが、とにかくプロプライエタリへの道は歩みたくないと思っていた。「だって、行く手には巨大なドル記号標識しか見えませんでしたからね。で、Windowsを見、Novellを見、その他、いまは存在しない数多くのベンダを見て、Linuxの使用に決めました。おお、いいじゃないかという感じで、自然に」
FortlageにLinuxを教えてくれたのは、GHY社と取引のある業者だった。「初歩的なLAN設定のことで問題があって、その相談を持ちかけたんです。で、もらった答えがLinux。ついでに、Linuxにくっついてくるいろんなことも全部やりましたよ。ダイヤルアップモデムの負荷分散とか、聞き慣れないこともいろいろと」とFortlageは言う。
以後、GHY社はオープンソースの使用を増やしつづけ、いまでは「全部」をオープンソースソフトウェアで間に合わせるようになっている。「コアの部分は、ファイアウォールから、電子メールから、プロキシサーバ、DNSまで全部。開発環境にも、PHPなどのオープンソース製品を使っています」
これまでのところ、Fortlageがどんな難問を投げかけても、オープンソースコミュニティがそれを解決してくれている。「ツールの限界を、外に向かって徐々に押し広げていっているという感じですね。私たちも一緒に成長し、さらに強力に押し広げていきます」
Fortlageが「まさに瞠目すべき製品」と絶賛するのが、PDFデータをその場で処理するデュアルライセンスのツール、PDFlibである。GHYの顧客は、必要事項をバーコード用紙に記録する。この用紙は1枚が1ドルもし、発注単位は1,000枚である。「用紙には静的バーコードと動的バーコードがあって、お客様はこれを荷主に送って記録してもらいます。問題は費用効率が低いことですね。そして、その費用は弊社が負担するわけです。そこで、紙を使う代わりにWeb上にフォームを用意したらどうだろう、と考えました。以前の記入結果は、クッキー情報としてデスクトップに残しておく。これで、簡単なWeb対応ドキュメントができないだろうか、と」このアプローチを追究していった結果、GHY社は年間2万5,000ドルにものぼっていた書類作成費用を90%ほども削減できた。だが、費用削減はそこで終わらない。「いろいろなオープンソース製品があるおかげで、年に数十万ドル近く節約できているんじゃないでしょうか」とFortlageは言う。
近い将来、GHY社のデスクトップにはSUSE Linuxが配備される。Fortlageは、かつてデスクトップRed Hatの可能性をテストしていたが、2004年にそれを打ち切り、全社のインフラストラクチャをRed HatからSUSEに切り替えた。「プロトタイプの作成と配備まで進んでいましたが、ディストリビューションの変更にともなって、急遽そういうことに」と言う。新しいプロトタイプは特注のSUSEデスクトップとなる。「デスク上には、きわめて薄いオペレーティングシステム層しか置きません。ユーザはメインフレーム上の仮想サーバにサインオンして、仮想サーバからデスクトップを送ってもらうことになります。社内のデスクトップは108台。今後1年以内に、そのうち50%でSUSE Linuxを稼動させたいですね」
GHY社では、IBM I-Seriesサーバ1台ですべてのITニーズがまかなわれている。このサーバ上で17台の仮想マシンが稼動し、そのうち10台がLinuxである。Fortlageの計画では、ここにLinux VMがあと2台追加される。こうした中央集中型サーバ環境の利点は、ITスタッフが少人数ですむことである。現在、Fortlageも含めて4人しかいない。「これまでは肥大化せずにすんできました。多くのことを1つのソリューションにまとめられるというのは、すごくインパクトがありますね。おかげで、オペレーティングシステムにもっと多くのソリューションを載せることに時間を費やせます」
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