LISA '05カンファレンス:最終日
その好例が、私が直面した金曜日の午前中の選択だ。マネージメント・ツールに関する審査論文セッション、ワイヤレスセキュリティに関する招待講演、変更管理についてとセキュリティ/暗号化についての専門家セッション、Kevin Bankstonの招待講演”電子フロンティアにおいてシステム管理者はいかに言論の自由とプライバシーを保護できるか”、このうちどれを選ぶかで迷ったが、Bankston氏の講演に出席することにした。
Bankstonは、盗聴と記録入手に関する裁判所の決定、米国愛国者法(反テロ法)、オンラインサービスプロバイダ(OSP)への指針、Tor匿名インターネット通信システムについて論じた。なかでもかなりの時間をかけて取り上げたのは、愛国者法条項についてと、ユーザに関する情報提供の”極秘”指令をプロバイダが受け、それをユーザに知らせることも禁止される場合についてだった。Bankstonは、OSPは緘口令を受けても弁護士に連絡することは可能で、争うことができると話した。
Torについては何度か言及し、出席者に可能ならTorサーバを実行することを、あるいは少なくとも利用することを奨励した。Bankstonによると、現在約150のTorサーバが稼動中だという。
数人の出席者から、Torノードの実行に法律上の問題はないのかという懸念の声があがった。違法行為を匿名で行うためにTorが利用される可能性もあるからだ。Bankstonは、これまでTorノードを実行したことで訴えられたケースはないが、可能性は否定できないと話した。
ある出席者は、Torノードが押収されてもPCは押収されないのか、と質問した。つまり、Torノードの実行に使用するコンピュータと他のPCの分離をどうやって証明できるのかという疑問である。Bankstonは、ホスト機関など分離された場所でノードを実行している場合、当局がPCまで押収する可能性は低いと答えた。
全般に有益な講演だった。また、これほど多くのシステム管理者が、仕事に必要な技術的情報のみならず、ユーザの自由を守ることに関心を寄せているのは心強いと感じた。
Jordan HubbardのMac OS Xセッション
次に、Apple社のUnixテクノロジディレクタ、Jordan Hubbardの「専門家参加型」(guru is in)セッションに参加した。LISAの出席者たちがどんな疑問を抱いているか、またLinux/Unixの人々のMac OS Xへの関心はどの程度か見てみたかった。
このカンファレンスではAppleのラップトップをよく見かけた。私の個人的な集計では、LISAでのラップトップの約半分がiBookとPowerBookだった。
セッションが始まってすぐに、非常に多くの出席者が実はMac OS Xにかなり関心を持っていることがわかった。このカンファレンスでは、ほぼすべての講演で参加人数に見合った部屋をうまく割り当てていたが、このセッションだけは違った。部屋には20人分ほどの席が用意されていたが、Hubbardが質問を受け付け始めるころには、参加人数はその2倍になっていた。セッション開始から20分もしないうちに部屋は人であふれてしまった。
誰もが知っているように、Apple社には将来の製品についての言明を避けるポリシーがある。Hubbardも製品情報は漏らさなかったし、Apple社のMac OS XとIntelハードウェアとの連携の計画についての私の質問もかわした。けれども、Apple社のUnix方面での将来の開発の動向については、いくつかヒントを示してくれた。
ある質問に答えて、HubbardはApple社がSun社のDTraceをMac OS Xに移植することに関心を持っていることを示唆した。これに対する出席者たちの反応は非常に好意的だった。
パッケージ管理とパッケージフォーマットについての話題も出た。Mac OS XにGUIアプリケーションをインストールするのは簡単だが(”Applicationsフォルダにアイコンをドラッグする”以上にシンプルなことはない)、アプリケーションサーバもインストールしたいユーザの間には、パッケージフォーマット、それもRPMやDebianパッケージフォーマットのようなものへの関心があった。
Hubbardは、Apple社がパッケージ管理を検討していることを教えてくれた。さらに、同社がまったく新しいものから始めるより既存のパッケージフォーマットを採用する可能性が高いことを示した。RPMフォーマットを検討していることを示唆したが、確実なことは言わず、タイムフレームも明確にはしなかった。
質問の多くが、Mac OS Xの問題点やバグ(あるいはバグと見なされるもの)、Mac OS Xのサーバロールでの展開、Mac OS Xを特殊な環境や大規模な展開で使用する方法に関するものだった。Hubbardは何度も、Apple社にバグレポートか機能リクエストを送るようにと繰り返し、たとえApple社から直接のフィードバックがなくてもそれらは必ず読まれていると強調した。Hubbardはまた、いくつかの問題や要望については自分の電子メールアドレスを教え、それらがきちんと対処されるようHubbard自身が責任を持つと受け合った。
Hubbardの専門家セッションは、LISAのようなカンファレンスに参加する大きなメリットだ。われわれが毎日使っているIT製品の決定権を握る人物と、直接話をする機会が得られる。出席者はMac OS Xの疑問に回答を得られるし、Hubbardの方も、ユーザがどのようにMac OS Xを使用し、どのようなことで困っているか、生の声を聞くことができる。
LISAゲームショー
LISAゲームショーは、Rob KolstadとDan Kleinの司会による、LISA ’05の最終イベントだ。会員ブースで配られたクイズ用紙の結果から12人の出場者が決定され、欠場する者がいた場合に備えて補欠も選ばれた。
このゲームショーはとても楽しいものだった。テレビで放映しないのがもったいないくらいだ。テレビでやっているクイズ番組よりこっちの方がずっとおもしろい。少し異色ではあるが。
各ラウンドで、チャットクライアントなどのギーク向け問題から漫画ネタまで、さまざまなカテゴリから出題された。よくあるギターリフクイズもあり、イントロを聞いて曲をあてなければならない。出題は古典ロックの定番で1990年以前の曲ばかりだった。出場者の成績から見ると、古典ロックはシステム管理者の間であまり人気がないようだ。
出場者がもらった参加賞は、Tシャツ、Minix 3.0 CD、専門書など。第1ラウンドの勝者は、PlayStationのゲーム(Kolstadは”悪者ではないSony”から、と何回か言っていた)、ブックバッグ、その他豪華賞品をもらった。
最終ラウンドの優勝賞品は、またしてもLISA 2006の3日間テクニカルパス。LISA 2006の開催日は12月3日から12月8日までで、場所はワシントンDCだ。
12月のワシントンDCの気候はサンディエゴほど快適ではなさそうだが、私は次回もぜひ参加したい。LISAは、システム管理者やシステム管理に関心のある者にとって、決して見逃してはならないカンファレンスである。
原文