エプソン、ZopeとPloneに導かれてオープンソースの世界へ
EEA(カリフォルニア州サンノゼ)はセイコーエプソンの子会社で、1998年11月に設立された。省電力LCDスクリーンやモニターなど、一部のエプソン製品について、米国における販売、マーケティング、エンジニアリング上のサポートを行っている。
EEAがWebサイトを立ち上げた頃について、DaSilvaは次のように述懐する。当時、Webはまだ「揺籃期にあり、一方、業界も不況を脱しようとしている」ところだった。そのため、最初のサイトは「パンフレットのようなもの」で、会社の紹介と問い合わせ先を提示する以上の機能はなかった。しかし、1999年になるとエプソンは「変化の時代」に入り、DaSilvaは新しいサイトの計画に着手した。目指すは、営業担当者や販売店さらには内部スタッフにも有用かつ最新の情報を提供してサポートするようなダイナミック・サイトである。
「スタティック・サイトの管理には本当にコストがかかりました。ソフトウェアはすべてプロプライエタリでしたし、コンテンツの維持管理はまるで悪夢、膨大な費用が必要でした」。DaSilvaは上層部の承認を取り付けた。次の難関は「どのようなソフトウェアとハードウェアを使うべきか」である。AllaireのColdFusionとSpectraを検討したが、このライセンス料も「天文学的な数字」だった。
コードの開発は外注を予定していたため、「コスト要因は、ライセンス料と開発費の2つです。(プロプライエタリ・ソフトウェアをライセンスする)コストは途轍もなく高く、最終的に開発と同程度のコストがかかると予想されました。当社の運用規模と目的を考えると、とても現実的ではありませんでした」
その上、DaSilvaは「短命ではない」製品を選ぶことを条件に設定していた。DaSilvaのチームは市場を広範に調査し、サイトを構築する枠組みとして最終的にオープンソースのWebアプリケーション・サーバーZopeとコンテンツ管理システム(CMS)Ploneを選んだ。
Zopeを選んだ理由の一つは、米国海軍が採用していたことだ。「冗談ではなく、海軍が沈まない限り私たちも沈まないだろうと考えました。今日現れたと思ったら明日には消えてしまうようなものを掴みたくなかったのです。リスクを最小限に抑えようとしていました」
Zopeとオープンソースに満足したEEAはオープンソース・ツールを全面的に採用してサイトを構築することにし、Cignexに開発を依頼した。DaSilvaによれば、その頃のCignexにオープンソースの経験を持つ開発者が十分いたわけではなかったが「能力はあった」という。今、CignexはZopeトレーナーとして認定されており、単なる取引業者を超えてEEAの戦略的パートナーとなっている。
現在、このサイトは営業担当者と顧客向けに最新の製品マップをダウンロードするサービスを提供し、問い合わせに対しては自動的に潜在顧客リストを作成する。EEAの担当者は、このリストに基づいて問い合わせに対応する。DaSilvaによれば、新しいシステムの最大の利点は、IT部門が自身よく知らないコンテンツを維持管理する必要がなくなったことだという。「IT部門は(コンテンツを管理するのではなく)研修を行います。製品の担当者が自らの手で情報を設定しコンテンツを更新できるように研修しているのです。このため、コンテンツの維持管理コストを大きく削減することができました。維持管理のコストは、研修の日を境に、製品コストに吸収されてしまったからです。しかも、コンテンツの正確さも向上しました。効率の改善効果もあったわけです」
DaSilvaは、こうしたオープンソースの活用は始まりに過ぎないと言う。「今後も、オープンソースを使って顧客主導の機能を構築していくつもりです。設計した技術者がすべてのプロジェクト情報をサーバーに置けるようにし、当社の技術者と(顧客の)技術者がこのサイトを通じてコラボレーションできるようにします。改善によって利用者の充足感が高まることが理想です」。DaSilvaは、一例として、営業担当者の紹介を名前と電話番号だけでなく映像にしたいのだと述べた。「サイトの訪問が今よりもずっと親しいものになります。本当に会ったのと同じような効果がありますから、取引に先だって、24時間いつでも相手がどんな人かを知ることができます。現状よりも、遥かに深い情報を得ることができるでしょう」
そして、オープンソースはさらに有効活用されるだろうと言う。「これまでは、試用段階にすぎません。活用が進むにつれて、オープンソースが活躍できる場が沢山出てくるでしょう」
原文