IBMのUbuntu認定はDebianの勝利

Ubuntuプロジェクトは、IBMがUbuntu 5.04上でDB2 Universal Databaseの動作を確認したと発表した。Ubuntuは昨年最初のバージョンをリリースしたばかりのLinuxディストリビューションである。これにより、容易なインストールと使いやすさを標榜するUbuntu上で、時間を要するさまざまな作業を自動化できるように設計されたデータベースが使えることになる。

Ubuntuは、この10月にサーバー・バージョンをリリースしたばかりで、来年4月にはエンタープライズ・エディションのリリースを予定している。そうした時期でのIBMの認定である。Ubuntuと同プロジェクトの協賛企業Canonical Ltdの戦略的提携およびパートナー担当マネージャであるMalcolm Yatesは、このリリースが今後の認定のベースになるだろうと述べている。

Yatesによれば、Ubuntuプロジェクトの目標は、デスクトップ・ユーザー向けに実現した使いやすさを大規模なシステムとネットワークにも提供することに移っている。したがって、DebianのアーキテクチャとインフラストラクチャをベースとするUbuntu Linuxのサーバー・バージョンやエンタープライズ・バージョンがリリースされるのは時間の問題だったという。「Ubuntuを次のサポート・プラットフォームとして選択したことに、DB2製品チームの洞察力が現れていますね」

IBMはDB2を利用する際の推奨オペレーティング・システムだけでなく、動作の確認ができたオペレーティング・システムも公表している。同社のWebサイトに掲載されている動作確認済みLinux環境一覧には、DB2が動作するディストリビューションが12種――推奨ディストリビューションとしてRed Hat Enterprise Linuxの2バージョンとSUSE Linux Enterprise Serverの2バージョンを含む5種、動作確認済みプラットフォームとしてUbuntu、Mandriva Corporate Server、Turbolinuxサーバー・ソフトウェアの2つのバージョンを含む7種――挙げられている。

Debian Projectの創設者Ian Murdockは、IBMの認定はUbuntuにとって大きな前進だと歓迎している。Debianベースのディストリビューションには独立系ソフトウェア・ベンダー(ISV)のサポートがなく、これが長年の弱点になっていた。したがって、IBMがDebianベース・システムに目を留めたことは、Ubuntuプロジェクトのコミュニティ全体にとって大きな意味がある。

Debianの立場

「Debianは弱点を克服し、ついに第3のグローバル・エンタープライズLinuxという、本来あるべき位置に立ったのです」とMurdockは述べた。しかし、コア・プラットフォームとしては、この認定がUbuntuに限定されないことが望ましいとも述べた。「もちろん、Ubuntuなどの個別の派生ディストリビューションではなく、直接Debianを認定してほしいと思います。ISVコミュニティに対する代表の立場を巡ってDebianの各派がしのぎを削るのは願い下げですからね」

Murdock自身のProgenyを含む、KnoppixやXandrosやMepisなど、Debianをベースとする主要ディストリビューションはDebian Common Core Alliance(DCCA)を組織しており、Murdockはコア自体の保護と継続を図っている。DCCAはLinux Standard Base(LSB)に準拠しているが、少なくともDebianシステムの基本部分は相互に一致させようと努めている団体である。

「思うに、Debianを巡って私たちが協力して作り上げてきたビジネス環境は、個別に動いていては決して達成できなかったでしょう。たとえ、それを壊さないように市場を得ようとしても。そうしたこれまでの動きがまったく無意味になることはないと思います」

UbuntuとDCCAの協調についてYatesは何も発言していないが、MurdockはUbuntuの創設者であり後援者でもあるMark Shuttleworthを含むUbuntuプロジェクトの関係者と相互協力について話し合ったと述べている――ただし、Debianコミュニティの代表としてではなく一人のメンバーとして話し合ったのであり、両者には「大きな違いがある」と述べている。

また、何らかの動きを期待して、Ubuntuが、バックポートのソースコード・パッチでしかDebianコアに寄与していない点について4月のブログで提起した問題を繰り返した。Murdockは主にDebianコミュニティの統合を維持するために活動しており、そうしたパッチは「有意義ですが、Debian環境全体を成長させるほどの意味はありません」と述べた。

ところで、Murdockによると、DCCAも独自に動作確認と認定のプログラムを進めているという。だが、Murdockは、多くのISV、独立系ハードウェア・ベンダー、OEMと協力していると述べるだけで詳細を語ろうとせず、数週間以内に詳細を明らかにするが、完全な開示は近い将来DCCAのパートナーと認定プログラムが正式に発足した後になると言う。

「大まかには、製品がDCCAで認定されれば、すべてのDCCA認定ディストリビューションで認定されたことになるような制度です。DCCAの各メンバーに個別に出向いて交渉する必要はありません。あるサービスを提供するベンダーが1社だけということはありませんから、今のサポート・パートナーのサービスに満足できなければプロバイダーを変えることができます。認定を改めて取り直す必要はありません」

また、Ubuntuが提供しているサービスとよく似たサービスを、認定したすべてのプラットフォームに対して提供するという。

Ubuntuはリリース・サイクルを6か月にし、サポート機能を絶えず充実させてきた。頻繁に機能を改善し、顧客が利用可能なサービスを増やしている。直接サービスだけでなく、Canonical経由、Webフォーラム、メーリング・リスト、IRCチャネルによるサービスを追加してきているのだ。Yatesによれば、Ubuntuの5.10サーバー・バージョンではまだサポートの拡張はないが、サーバーを提供したことで「ハードウェアとソフトウェアの両方の認定に関して計り知れない経験が得られたことは確かです」と言う。

そして、Ubuntuはプロプライエタリ・ソフトウェアを提供するつもりはまったくないと繰り返す一方で、さらなる認定と動作確認を得る活動を進めつつ、エンタープライズ・バージョンを提供し、そのためのサポート・サイクルを広げようとしていることを、さらに多くの企業に知ってもらいたいと述べた。

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