Web 2.0 Conference: どこもかしこもオープンソース
実際、Web 2.0の初日はオープンソースのオーラが強すぎて、MSNの担当者が少し気の毒になったほどだ。彼らは「Building a Developer EcoSystem(開発者エコシステムの構築)」と題するワークショップを開催していたが、午前8時半のセッション開始時には20人ほどの聴衆しか集まっていなかった。その隣の部屋では、ビジネスの観点からのAJAXの討議が行われていたが、100席では足りないほどの聴衆が集まり、ホールまで人があふれていた。同時に行われていた他の2つセッションも満席だった。
しかし、Web 2.0の参加者が検索に無関心というわけではない。午前9時45分の「Search by Another Name: New Ideas in Search(別の名前による検索:検索の新しいアイデア)」と題するセッションには200人近い人々が詰めかけ、さらに大勢が部屋に入ろうとしていたり、せめてドアに近づいて中の話を聞こうとしていた。
私は「Open Source Infrastructure(オープンソース・インフラストラクチャ)」のセッションには参加し損ねた。参加した数人と話をしたが、私を含めて多くのNewsForgeの読者には、特に目新しい話題はなかったようだ。
他にもいくつかのセッション、特に「Launch Pad: A Dozen New Companies in One Sitting(跳躍台:新興企業十数社が集結)」を見て回った。この喧騒の中で最も注目を集めていたのが、Zimbraという参加企業である。Zimbraは、1社や2社ではなく、3社ものベンチャー・キャピタルの支援を受け、“オープンソース・ベースの”Microsoft Exchangeの代替製品を製造している。NewsForgeはいずれ必ず、ZimbraのCEO、Satish Dharmaraj氏へのインタビューを行うはずであり、我々はZimbraの製品を実際に稼働中のエンタープライズ環境でテストする(あるいは、少なくともそのケース・スタディの記事を書く)機会を心待ちにしている。現場にいる大勢のシステム管理者が、Microsoft Exchangeサーバを厄介払いしたいと考えているようだが、実際にそれを試みた大勢のシステム管理者は、これまでテストしてきた代替製品、特にそのカレンダー機能に失望したと言っている。もしかしたら、Zimbraは多くの人々が待ち望んでいる“Exchangeキラー”になるかもしれない。それはもうすぐ明らかになるだろう。
次の大きな(Webの)目玉はマッシュアップ
マッシュアップは、他人の成果物を組み合わせて、新しい… 何かを生み出す手法である。Ourmediaで公開されているビデオ・クリップに、どこかで手に入れた音楽を加えれば、マッシュアップのできあがりだ。“サンプリング”のことを考えてほしい — そして、多くのDJやラッパーたちが、他人の著作物の断片を無許可で使用して重罪で告訴されていることを思い出してほしい。Googleマップに別の巧妙なアイデアを組み合わせて、犯罪多発地域マップのようなものを作っているサイトはどうだろうか。あるいは、地下鉄の路線図や運休情報を掲載しているサイトはどうだろうか。これらはすべてマッシュアップであり、Web 2.0ではこの種の手法が大きな目玉となっているようだ。マッシュアップでは、他人の成果物(および投資)を基にしてWebサービスを開始できるので、自分では多くの人手(や資金)をかける必要がない。ちょうど、他人の音楽を基にして“曲”を作り上げれば、自分で一から作品を生み出してレコーディングするほどの音楽的技術(および投資)が必要ないのと同じである。
ここで人々が話題にしているマッシュアップは、Googlefightのようなちょっとした愉快なサイトではなく、開発者もベンチャー投資家もビジネスとして本気で考えているマッシュアップベースのWebベンチャーである。投資家たちは突如として、絵に描いた餅のようなWebビジネスに大々的に戻ってきたようだ。
ベンチャー・キャピタルをつかまえる方法
まさに1999年の再来である。私は何人かのベンチャー投資家に会ったが、彼らは異口同音に、面白そうなアイデアを持っているが、まだドメイン名も実用コードも持たない会社への“初期段階の融資”について熱心に語っていた。また、ドットコム崩壊で死滅したはずの業界用語や、それ以降に登場したたくさんの用語が飛び交う中で、名刺交換が行われる場面も目にした。
私は一瞬舞い上がり、Argent Hotel(カンファレンス会場)から通りの向こうにあるOffice Depotまで走って行って、空のCDを何枚か手に入れようかと考えた。そして自分の部屋に戻り、ビジネスのスライド・プレゼンテーションを作成するのだ。内容は、直接投資を受けたコミュニティが生み出すPodcastブログ・レビューを追跡する、VoIPベースのマルチメディアWikiを開発するビジネスである。もちろんベースはオープンソース・ソフトウェア。それにクロスプラットフォーム。拡張性があり、スケーラビリティも申し分ない。
恐ろしいのは、これをパロディーと受け取ってもらえるかどうかがわからないことだ。今日も、収益をどのように生み出すかについては何も触れず、私の空想話のように業界用語がてんこ盛りになった、さまざまなビジネス計画を目と耳にした。そして現実のベンチャー資本家たちが、こうした話に乗り気になっているのだ。
今回のカンファレンスで、1999年のデジャヴのような印象を持ったのは私だけではない。おそらく今夜、カンファレンス会場の近くのバーで、非公式の“Web 1.0”パーティーが開かれるだろう。私もそこに行ってみるつもりだ。たとえそのおかげで、今夜のWeb 2.0 Dinner, Hosted by MSN Search, Featuring a Conversation with Microsoft(Web 2.0夕食会、MSNサーチ主催、呼び物はMicrosoftとの対話)の一部または全部に出られないとしてもだ。
Microsoftによる無料の食事と、どこか通りの向こうで開かれるかもしれない内緒のパーティー。これは悩ましい選択だ。それに今夜は、他にも2つのカクテル・パーティーが予定されている。Microsoftの夕食会の前のOutcast PR主催のパーティーと、夕食会の後のGoogle主催のパーティーだ。どのパーティーに出席するにせよ、今夜はしらふでいることは難しそうだ。しかも、明日も金曜日の夜にもまた別のパーティーがある。
しかし、ベンチャー・キャピタルや起業家たちは、反逆者パーティーではなくMicrosoftの夕食会に出席するだろう。そして私は、ここでまじめなニュースの取材をすることになっているので、“遊ぶことよりまず仕事”を優先せざるを得ない。Microsoftに、すばらしいごちそうを振る舞うだけの資金的余裕があることは確かだ。Microsoft製品に何年も金を払ってきた読者も、きっとその金がどのように使われているかを知りたいだろう。つまり、料理がおいしいかどうかということを。
Web 2.0の取材はさらに続く
私はこの記事を10月5日水曜日の午後6時に書いている。今日はカンファレンスの初日だ。今日から土曜日までに、Web 2.0 に関する記事をあと少なくとも2つ投稿し、週末にかけて山ほどの写真をアップロードする予定だ。
NewsForgeでは、去年のWeb 2.0も取材している。今年は去年と同じビジネス著名人に加え、新しい著名人も数多く招待されている。参加者の数は2倍にふくれあがり、去年の400人に対して800人を数えている。それにパーティーの数も増えている。実際、これほど多くのパーティーやイベントが予定されているカンファレンスは初めてだ。この(エヘン!)重要なイベントの側面を取材しないとあっては、レポーター失格なので、これからデジタルカメラを手にオープニング・カクテル・パーティーに繰り出して、何が起きているのか見てこようと思う。
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