IT転職を減らす方策

IT業界の社員の定着問題を理解している会社はほとんどないようだ。IT転職は御し難きことで、高い転職率は生き方の問題だと見る向きも少なくない。だがそれは違う。問題の本当の原因を知り、適切な対策を講じれば転職は回避できる。

『IT Manager’s Journal』の「Hey Boss」セクションに寄せられるコメントを見ると、IT業界の社員と管理者の間に不満が渦巻いていることがわかる。この手の不満は今になって現れたわけでなく、IT時代の黎明期から現在に至るまでずっと存在している。しかし、IT転職を端から手に負えぬ問題と決めてかかるのは、ITおよび人事部門による運営管理の怠慢と言わざるを得ない。その結果、IT部門の転職率が徒に高くなっているのだ。

またこれもよく見られることだが、有能なIT社員が退職の意を示すと、その決定を撤回させるべくお定まりで一連の説得が始まる。皮肉なのは、そこでの好意と関心がもっと早い段階で示されていれば件の社員は踏みとどまったかもしれないのに、この期に及んで好意を示しても悪あがきとしか映らないことだ。たとえ説得が成功しても、たいてい一時的なものにすぎない。説得されて踏みとどまった社員も多くは1年以内に辞めていく。

『IT Manager’s Journal』の最近の記事「Exit interviews are not the time to find out why」にIT業界の転職率の高さが何に起因するのか詳しく書かれている。これはどこにでも見られる問題で、しかも以前からずっと続いている。転職率を下げることに関心があるなら、この記事を読むとよい。ここに述べられている要点を納得した上で実践すれば事態は改善するのではないだろうか。

転職の原因を説明するデータは豊富にあっても活用されることはめったにない。多くの場合、辞めていく社員に退職者面接を申し出るだけで、面接の表向きの目的はIT作業の条件を改善するための情報収集だったりする。ところが退職者面接は相当の割合で、意図せぬ否定的な結果をもたらす。

例えば、当の社員は会社がなぜ退職者面接までして悪条件についての情報を集めるのか怪訝に思うだろう。社員の定着にそれほど関心があるなら、人事部門はなぜもっと速やかに対応しなかったのか?

転職率が高止まりを示す一方、退職者面接が好ましい変化の切っ掛けとなった形跡はほとんど見られない。IT部門は一般に強い絆で結ばれているので、退職者面接の子細は周知の事柄になることが多い。その結果、残された社員は、不安を感じつつも、結局は変化をもたらす計画が存在しないのだと判断するのである。そして不満が不満を呼び、転職の流れは途切れることがない。

IT社員の転職はコスト面でも打撃となる。後任者を探すコストばかりでなく、多くの場合、才能ある人物を引き寄せるために給与水準を一段上げる必要がある。雇用後も新入社員の生産性を上げるためにコストがかかる。正規の訓練にかかるコストとは別に、社員が会社の文化や仕事のやり方に慣れるまで初期の欠損が出る。

事態をさらに悪くすることがある。評判のよい社員が辞めた場合、感情的なもつれが後任者の募集に要する費用以上の損失を生むことは想像に難くない。例えば、経験豊かなIT専門家は他の社員の手本や信頼のおける助言者となることが多く、そうした人材を失うことは部門全体の士気を下げることにつながる。また、評価の高い専門家が辞めると、残された社員は自分も会社を辞めるべきか迷うようになる。

IT転職に関係するコストを何から何まで定量化するのは難しいが、それが常に高い値を示していることは間違いない。IT管理者が予算のやり繰りに汲々としている現状を考えれば、そうしたコストの発生を避ける意味でも有能なIT専門家の定着問題にもっと気を配ることは理にかなっているはずだ。

問題の細部に意識が向くと解決の企てが偏狭になりがちである。一般性のある方策がとられず、個人の問題にばかり焦点が当てられる。もっと予防的で一般性のある方向へ転換する姿勢を示せば、きっと転職を減らすか無くすことができるだろう。

転職を減らす方策は難しくもなければ複雑でもない。しかし、担当管理者が問題の存在を積極的に認め、真摯に取り組む姿勢を示す必要がある。

まずは社員の訴えに耳を傾けること。偏見を持たず誠実であることが何より重要だ。こちらから訊ねれば、たいがいの社員は問題を積極的に話してくれるものである。だが、質問だけでは十分でない。話を聞き、行動することがゴールとならなければならない。

リップサービスだけではダメだ。必要な変更をどう実施するか具体的に計画を練り、計画を実施する中で進捗を知らせねばならない。また、その情報伝達プロセスで社員の意見を聞くことも必要だ。

IT管理者が社員に適切な質問を投げかけ、作業環境を改善する対策を講じれば、社員の定着率は改善するだろう。この取り組みは時間がかかり、社員の心配事に対応した実績が乏しいと、社員はその間に疑いを持つことになる。だが、誠実に取り組めば自ずと結果は出るものである。

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