オープンソフトウェアERPの活用例

Moline Bearing社は金属製ベアリングの製造と販売を行うメーカーで、工場をイリノイ州セントチャーチルに、倉庫をミシシッピー、テキサス、コロラド、カリフォルニアに構えている。オーナーのDavid Fauntleroy氏は、会社の経営を円滑にするERP(enterprise resource planning)ソフトウェアには、オープンソフトウェアの考え方が合っていると実感している。

Fauntleroy氏はMoline社のオーナーであると同時に、唯一のIT担当者だ。サーバーを一台使用しているが、Tiger(Mac OS Xの最新リリース)で動作している。去年までは、4DというプロプライエタリなデータベースをMac OS Xで動作させ、在庫、出荷、顧客、ワークフローを管理していた。だが、安定性や柔軟性に問題を感じ始めていた。「中身がどうなっているのか分からないし、頻繁にクラッシュするので、バックアップをこまめに取らなければならなかったんです」。

その上、事業が拡大していたため、何か手を打たないと製造スケジュールや出荷日を顧客に知らせるのが難しくなってきていた。「今までのシステムでは対応できなくなっている、と感じ始めました。(どれに代えたらよいのかと)いろいろなシステムを探しました」と彼は言う。

Fauntleroy氏を納得させたのは、OpenMFG社が開発したソフトウェアだった。OpenMFG(社名と同名)は、ERPと会計ソフトウェアのパッケージで、オープンソースのデータベース、PostgreSQLを使って構築されている。OpenMFGは、OSIの定義では純然たるオープンソースソフトウェアとは言えないが、顧客にソースコードが提供されるので、必要に応じてプログラムに変更を加えることができる。ただし、変更したプログラムを、OpenMFGの許可なく再配布したり販売したりすることはできない。

オープンソースのコンセプトはFauntleroy氏の要望にかなうものだった。「4Dをカスタマイズするのは非常に困難でした」と彼は言う。「OpenMFGなら、短期間にいろいろなものを加えることができます」。OpenMFGのカスタマイズは地元の開発者に依頼している。「『こんな風にしたい』と言えるのです。費用は払わなければならないが、少なくともやりたいことができるのです」。

Fauntleroy氏は、2004年のはじめにOpenMFGへの移行を始め、5ヶ月間テストし、現在はすべての業務(会計、製造、仕入れ、在庫)の管理に使用している。「いちばんの難問は、旧システムからできるだけ多くの情報を持ってきたい、ということでした」と彼は言う。「データベースから直接データを持ってこれないので、気の遠くなるような作業だということが分かりました」。結局、手作業でデータをスプレッドシートに変換し、Microsoft AccessをつかってOpenMFGに入力することになった。

OpenMFGでは何ができ、どんなレポートがつくれるのかを理解し、会社にとって必要な情報を絞り込むのも、Fauntleroy氏にとっては大変だった。「このシステムだと、あまりにたくさんの情報が得られるので、それを絞り込んで、使える情報を区別できるようにならないといけません」。

Fauntleroy氏によれば、顧客により満足してもらえるようになったことも、制約の多いプロプライエタリから扱いやすいオープンソースにシステムを切り替えたことで生まれたメリットだという。「いちばん大きいのは、情報が得られるおかげで、自分たちのしていることをコントロールできていると感じられることです。とても分かりやすくなりました。顧客から電話があったときに、出荷可能日、出荷方法、対応可能なのかが分かります。別メーカーの製品を仕入れて販売する場合は、顧客に入荷時期が言えるというのが、とても大事なのです。以前は無理でしたが、そのおかげで売り上げがあがりました」。

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