JBossによるjBPMの採用がオープンソースにドアを開く

JBoss社は、同名のオープンソースJ2EEアプリケーションサーバを開発した会社である。先週、エンタープライズソフトウェア市場向けの製品スイートに、オープンソースのjBPMワークフロー管理アプリケーションを加えると発表した。Webサービスやサービス指向アーキテクチャ全盛のこの時代らしく、BPM(ビジネスプロセス管理)ソフトウェアの目的は、複雑なワークフロー設計におけるデータ操作や手続き論理などの技術的問題を抽象化で覆い隠し、より上位の論理に集中することにある。

オープンソースプロジェクトを加えるというJBoss社の今回の動きは、Java/J2EEエンタープライズソフトウェア分野の製品充実度を一気に高めようという戦略的ステップである。同社は、TomcatとHibernateというオープンソースミドルウェアの主流製品の指導的開発者を雇い入れており、これらの製品をミッションクリティカルなシステムに使おうとする企業のIT部門に対し、包括的なサポート契約とカスタム設計を提供できる立場にある。この戦略を、同社は「プロフェッショナルオープンソース」と呼んでいる。

JBoss社の腕力と主要企業のIT部門とのつながりを考えれば、jBPMプロジェクト関係者にとっても今回の提携は悪い話ではない。オープンソースコミュニティでさらに悪名をとどろかせるための踏み台となるだろう。また、Gluecode社のBPMやOpenFlowといった類似プロジェクトからjBPMを差別化するのにも役立つ。

だが、もっと重要なのは、BPMスイートがオープンソースソフトウェアの強化に役立つことである。オペレーティングシステムレベルでのLinux、アプリケーションサーバでのJBoss/Tomcatなどのソフトウェアが広く採用されているのは、一方では、いささか値段の高いクローズドソース製品に勝るとも劣らない機能を提供しているからであり、他方では、高価なプロプライエタリ製品に対してニッチ市場を形成してきたからである。

J2EEエンタープライズソフトウェアを商品化しているIBM、BEA、Oracleといった企業は、BPMスイートと、その標準言語であるBPEL(Business Process Execution Language)に多大な投資をしてきた(BPELは、標準化団体Oasis Consortiumのもとで開発された)。こうした製品の意義は、ソフトウェアベンダがソフトウェアの買い手である企業に対しユニークで特徴的な製品を提供できる点にある。しかし、ミドルウェアソフトウェアのバリューチェーン(価値連鎖)にオープンソース製品が登場し、それを専門的なサービス企業がバックアップするようになれば、その戦略が将来的に有効でありつづけるかどうかは不確かである。

より上位のアプリケーションへという今回の動きは、ニッチソフトウェア市場への参入を目指すオープンソースソフトウェア開発プロジェクトにとって、将来を占うテストケースになる。主流市場でオープンソースサービスを提供している企業にとって緑だった草は、果たしてこれらのプロジェクトにとっても同様に緑だろうか。

Daniel Rubioは、エンタープライズソフトウェアの開発・教育・コンサルティングを専門とするメキシコの企業、Osmosis Latina社の主任コンサルタント。

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