マルチコアプロセッサのソフトウェアライセンス問題

米Microsoft社(本社ワシントン州レドモンド)は、最新のサーバ用デュアルコアプロセッサ(来年初めに米AMD社と米Intel社から登場する予定)でソフトウェアを実行する場合のライセンス方式について、ようやく方針(.docファイル)を発表した。Microsoft社は当面、米Red Hat社と同様に、システム単位、つまり2つ以上のコアを持つCPUでもCPU単位で課金するという方針を継続する。しかし、将来さらに強力なデュアルコアプロセッサやマルチコアプロセッサが登場すれば、プロセッサ単位のライセンス方式は意味を失って終わりを告げ、仮想マシンと多様なコンフィグレーションに関わるさまざまなライセンス問題が浮上することになるかもしれない。

米Illuminata社のGordon Haff氏らアナリストたちは、Microsoft社はおそらくデュアルコアで二重取りできるか様子を見ていたが、結局、より強力で効率的なハードウェアの採用でソフトウェアが高コストになることは市場で受け入れられないと判断したのではないか、と推測している。

「Microsoftはプロセッサ内のコアごとに課金する方法がないか探っていたのでしょう」とHaff氏はいう。

このMicrosoft社の方針は、米IBM社や米Oracle社などデュアルコアプロセッサを2つのライセンスに基づいて定義してきたほかのベンダの方針とは異なっているが、これによってすべてのベンダがマルチコアチップのソフトウェアライセンスの方針を変えることはないだろう、それでも、Microsoft社の措置は「ユーザの要望を聞き入れる道を開く」とHaff氏は話す。同氏はまた、仮想化(バーチャライゼーション)などその他のテクノロジは、プロセッサ単位のソフトウェアライセンスから離れる方向にあると指摘した。

仮想化の到来

Haff氏は、デュアルコア/マルチコアのソフトウェアライセンスが注目されているが、仮想マシンの問題と仮想マシンで使用するソフトウェアのライセンス方式もベンダと顧客双方の懸案事項だという。

「これはLinuxの世界では少し違っています。」 とHaff氏はいう。たとえば、SUSEの料金は、プロセッサがいくつ仮想マシンをサポートするかに関係なく物理的なプロセッサ単位であるのに対し、Red Hat社は仮想マシン単位を方針としている。

「Microsoft社と同じように、Red Hat社は稼動しているRed Hatのインスタンスごとに請求しています」とHaff氏は話し、それでもRed Hatはサーバでは米Novell社のSUSEより優勢だ、と付け加えた。

だが、Haff氏は、1つのプロセッサを使用して作成できる仮想マシンの数が増え続けるなか、Red Hat社へのライセンス変更の圧力も大きくなるだろうという。

「Red Hat社はなんらかの変更を余儀なくされるでしょうが、今のところは彼ら自身は大丈夫だと考えているようです。」Haff氏は、SUSEと同じライセンスだったら得られなかったであろうRed Hat社の収益についても触れた。「そのときになったら対処する、という彼らのアプローチはまったく妥当です。」

Haff氏はまた、IBM社(デュアルコア問題を避けて通りながらもコア単位ライセンスの必要性をほのめかしていた)も、マルチコアのソフトウェアライセンスとなれば同じ立ち場にあるという。

IBM社は実際に自社のデュアルコアPower 5プロセッサを販売してきた、とHaff氏は説明する。「IBMは率先して、各コアをあたかも1つのプロセッサのように見なしてきました。IBMは、高速プロセッサを活用してプロセッサの数を減らすことに、より大きな重点を置いてきたのです。」

また、IBM社がプロセッサ単位の方針を変更しなければならないとしても、同社はハードウェアも販売しているため痛みは少ないという。が、IBM社も含め、すべてのソフトウェアベンダは、仮想化ハードウェアのソフトウェアライセンスに対処しなければならなくなる。

「長期的には、皆、仮想化に対応しなければならなくなります。私たちは、サーバソフトウェアを何か物理的なものと見なすのをやめなければなりません。」

プロセッサ単位のライセンスは存続できない

Haff氏は、マルチコアとハイパースレッディングというプロセッサテクノロジと仮想化の到来は、いずれもプロセッサをライセンスの単位と見なす意味を失わせるものだという。「プロセッサをどのように位置づけようと、このやり方ではやっていけないでしょう。固定的なソフトウェアライセンスはもううまく機能しません。」

仮想化、およびCPUとサーバにおける処理量の動向を考えると、古いタイムシェアリングモデルまたは使用量に基づくソフトウェアライセンス方式がより現実的であり、おそらくベンダは現在これを検討しているだろう、とHaff氏はいう。この問題は、先日行われたカリフォルニア州サンタクララのSoftSummitイベントで、ソフトウェアの販売と購入双方の立場から取り上げられた。

IDCアナリストのJean Bozman氏は、これから1年半の間に予定されているIntel ItaniumとXeonデュアルコアチップ、およびAMDのデュアルコアOpteronで、ユーザは熱放出と消費電力の少ないプロセッサの恩恵を得られるという。現在、ユーザはさまざまな検討事項に照らしてソフトウェアライセンスを評価しているところだという。

Bozman氏はマルチコアチップについて、「業界のこの動向を受けて、人々はISVライセンスをどう捉えるかを見直しています。その過程において、ISVはほかの方法を検討しなければならなくなるかもしれません」と話す。

また、Bozman氏も、仮想化によって最新のハードウェアにおけるソフトウェアライセンスの方式は変更を強いられるという考えだ。同氏は、IBM社を例に挙げ、既存のPower 5サーバのマイクロパーティション化について話した。

「1つのチップを分割できます。複数のイメージがあるのですから、これは明らかにISVの考える使用モデルとは異なります」とBozman氏はいう。

Bozman氏は、IBMが一部のメインフレームライセンスで採用していたような、設備全体を対象とするソフトウェアサイトライセンス、または従量制や監視制のライセンス方式が、より一般化する可能性もあるという。「これにはほかの方法もあります。まだ誰もプロセッサ単位を採用していない頃に検討された方法です。」

プロセッサ単位より先の細分化

Bozman氏は、ハードウェアの進歩に伴うソフトウェアライセンスの問題は目新しいことではないと話し、かつて、2ウェイサーバが2台分の作業をこなすようになり、4ウェイサーバが4台分、と増えていったことに触れた。「これからはサブプロセッサレベルの話になるでしょう。処理量の統合と仮想化の動きは、OSに関係なく進んでいます。問題は料金体系をどうするかです。」

Bozman氏は今年初めのIntel開発者フォーラムについて話し、これはISVとOEMが積極的に話し合って解決策を探るべき問題だと指摘した。「これが一般化してくれば、さらにさまざまな戦略の詳細がはっきりしてくるでしょう。今は初期段階の議論が行われています。」

使用量に基づくライセンス方式、いわゆるユーティリティプライシングモデルに加え、米Macrovision社や米Sun社などの企業は、サブスクリプションベースの料金設定とライセンスも進めているが、顧客からは歓迎されそうにない。2年以上も前にMicrosoft社の提案がうまくいかなかったときと同じように受け取られるだろう。

Bozman氏は、ソフトウェアライセンスの進む方向は1つだけではないとしながらも、いくつかの変更は確かに必要だという。「いまや非常に小さなスペース内で大量のソフトウェアを動かせます。問題は、プロセッサによって処理量が異なるということです。今日では選択肢はたくさんあるのです。」

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