IBM iSeriesの論理Linuxパーティションがもたらすメリット

コンピュータ業界ではIntel ItaniumとAMD Opteronの間で繰り広げられる64ビット競争ばかりが注目されているが、もっと興味深い64ビットプラットフォームはIBMのPowerPCだ。 IBMが擁する2つのPowerPCプラットフォームpSeriesとiSeriesのうち、かつてAS/400と呼ばれていた後者は注目に値する。iSeriesは、Linuxと組み合わせることで、新しいレベルの生産性をエンドユーザに提供する。

現在、40万台以上のiSeriesとAS/400サーバが、100カ国以上、24万5000以上のIBMの顧客で利用されている。iSeriesとAS/400の顧客が最も多いのはイタリアで、IBMによれば、販売されたiSeriesおよびAS/400の46%がヨーロッパ、中東、アフリカで使われているという。

1999年、IBMが最初にiSeriesを発表して以来、論理パーティション(LPAR)は、アプリケーションおよびハードウェアの統合に欠かせない存在となった。IBMはLPARの発表に引き続いて、2001年には追加の統合ツールとしてLinux LPARを発表した。Linux LPARは、LinuxまたはWindowsを実行しているIntelサーバを統合できるようにすることで、ローエンドの複数のハードウェアおよびソフトウェアプラットフォームのメンテナンス頻度を減らしてくれる。iSeriesサーバ1台で、31までのLinux環境をサポートすることができる。

iSeriesには、技術面でのメリットも数多くある。iSeriesで最も魅力的なのは、プロセッサを共有できることだ。これにより、ユーザは小刻みにプロセッサをプールし、それを複数のパーティションで共有することができる。1つのプロセッサを、それぞれに管理者が指定した割合(10%単位)で10のパーティションが共有できる。これが画期的なのは、1つのプロセッサをたった1つのLinuxパーティションに割り当てるのではなく、さまざまなワークロード、そしてOSまでも、1つのプロセッサで実行できるようになるからだ。

iSeriesは、LPARと動的なリソース供給をサポートしていることから、ホットスワップ・サーバとしての用途も考えられる。これは、ローエンドのIntelサーバとミッドレンジUnixサーバの市場を圧迫するだろう。同じサーバ上でLinux、Windows、OS/400、そして将来的にはAIXも実行できるというiSeriesの機能は、Sun、HP、Dellには真似のできない利点といえる。

中小企業が、ERP、CRM、SCMアプリケーションをiSeriesハードウェアに配備するという傾向は、ネイティブLinuxパーティションをiSeriesで活用して、サーバとワークロードの統合を実現するということに対する関心の高さにも反映されている。iSeriesに動的なリソース管理機能が加わったことで、ユーザは、十分に活用されていないプロセッサを、特定のワークロードに動的に割り当てることができるようになった。

iSeriesでは複数のLinuxディストリビューションを利用できる。Red Hat Enterprise Linux 3、SUSE Linux Enterprise Server 8、およびこれに相当する、TurbolinuxとConectivaのSUSEベース・ディストリビューションだ。iSeriesの現在のインストール・ベースが、小〜中規模企業、そして地方銀行であることから、SUSEが選ばれることが多いようだ。Red Hatは市場への対応が遅れたことと、IBMのPowerPCプラットフォームをサポートすることによる収益の予測があるために、iSeriesとpSeriesにおいてより長い実績を持つSUSEよりも不利な立場にある。しかし、Powerおよびほかのアーキテクチャ向けのRed Hat Enterprise Linux 3.0のリリースは、現在のアプローチからの脱却を示唆している。

顧客は、レガシーなハードウェアとIntelシステムの代替としてiSeriesを選択する

iSeriesの既存の顧客層は、中小企業から大企業まで幅広い。IBM iSeriesのソリューション・プロバイダであるS2 Systems社は、企業の電子決済ソリューションを扱う独立ソフトウェアベンダとしては第2位だ。S2 Systemsは、銀行、小売、テレコム、旅行業界に400社を超える顧客を持ち、ATMや、クレジットカードおよびデビットカードトランザクションのPOS処理を提供している。S2 Systemsのアプリケーションは一般的に、コアとなるバンキング・システムの隣にあるデータ・センタで動作する。

iSeriesへの移行前は、S2 Systemsの電子資金振り替えシステムはレガシーなStratus VOSプラットフォーム上でON/2として動作するか、WindowsまたはAIX、HP-UX、およびSolarisでOpeN/2(S2の第3世代企業決済プラットフォーム)を実行するかのどちらかであった。S2が、Stratusプラットフォームから移行し、銀行にすでに導入されているiSeriesおよびzSeriesシステムを活用することを決めた要因は、レガシー・インストールの不安定さ、新しいハードウェアの交換サイクル、EFT機能をコアなバンキング・ハードウェア・プラットフォーム(多くの場合、zSeriesまたはiSeries)に統合することによるコスト削減、開発期間短縮の必要性、新規チャネルのサポートなどであった。金融サービス業界におけるLinuxの普及と、iSeriesの信頼性と拡張性を考慮した結果、S2は2004年に、SUSE Linux Enterprise 8を実行するiSeriesにOpeN/2を移植すると決定した。

タンデム・ノンストップ・システムを採用している、S2の顧客2社が、zSeriesへのOpeN/2実装前に、5年間のROI予測を発表した。両社とも、5年間で最低でも50%のコスト削減を予測している。これは、既存のzSeriesにOpeN/2を実装(iSeriesの場合も同様)することにより、顧客はハードウェア、リソース、スキル・セット、障害復旧インフラストラクチャ、そして年中無休の稼動に対して行っている投資を最適化できるという事実によるものだ。

やはりiSeriesを採用している中小企業としては、MXI(Memory Experts International)社がある。MXIは、バイオメトリックUSBドライブや、ネットワーク機器の接続デバイスを製造している。MXIがiSeriesを採用した理由は、各種ホワイトボックス・サーバを統一プラットフォームに統合し、業務を集中化させるためであった。MXIはWindows上のAccpacを利用しているため、Linux、OS/400、そしてWindowsをサポートするプラットフォームを選択した。iSeriesのほかに、Intelベースのブレード・サーバまたはラックマウント・サーバのマス・ストレージ・アレイを使ったクラスタ化サーバという選択肢もあったが、TCOの面で、ブレード・サーバやIntelのラックマウントシステムよりも、iSeriesのほうが上回ったという。

推薦

iSeriesのLPARと、サブプロセッサレベルでワークロードを実行する機能を利用すると決めたら、まずは、各パーティションで必要となる処理能力を判断しよう。また、iSeriesで動的なリソース供給を有効にしたいなら、プライマリ・パーティションでOS/400 V5R2を実行し、セカンダリ・パーティションでカーネルがブートするようにする必要がある。

ワークロードやサーバを統合したいと考えている組織、また、配備する前にLinuxのパッチやアプリケーションを試したいといった場合に、iSeries上のLinuxはお勧めだ。

iSeriesは、Linux、Windows、OS/400、そしてAIXのサポートを必要とするワークロードがあり、なおかつ、インフラストラクチャの単純化とワークロードの統合を行い、システム管理者を増やしたくない組織にとって魅力的な選択肢だ。

Stacey Quandtは、Quandt Analyticsの主席アナリストである。ITベンダや企業Linuxユーザにとって重要な市場トレンド、そしてオープンソース・テクノロジを扱う。Quandt Analyticsの創業前には、Open Source Development Labsでは主席アナリスト、Forrester Researchでは業界アナリストを務めた。Forrester Researchの子会社Giga Information Groupでは、Open Source Research Competencyプログラムを創設し、Fortune 1000企業を顧客として、Linuxに関する調査書や、戦術・戦略アドバイスを提供した実績を持つ。