Microsoftがシェアードソースコードに対する見解を明らかにする

サンフランシスコ――多くの人々にとって意外なことに、米Microsoft Corp.では、ほぼ3年にわたって特定の人々にWindowsのソース・コードを公開してきた。 実際、このソフトウェアの巨人は、パートナー向けにそうしたプログラムを15種類用意している。 しかも、Microsoftはそこから何も利益を得ていない。 それなのに、なぜMicrosoftはオープンソースの世界の大敵と見なされているのだろうか。

読者のご想像どおり、これにはいくつかの但し書きが付く。 Microsoftが全世界のパートナーにコードを公開している「シェアードソース」という方式は、オープンソースではない。 GPLがないので、コードはいくらでも閲覧できるが、改変することはできない。それにもちろん、Microsoftの顧客として認可されている必要がある。 詳細については、上記のリンク先にあるドキュメントの注意事項をお読みいただきたい。

Microsoftのシェアードソース・イニシアティブのマネージャ、Jason Matusow氏は、夏のような気候の北カリフォルニアで開催されたOpen Source Business Conferenceの2日目に、この話題に関する説明を行い、いくつかの質問に答えた。

「客観的に見れば、企業によるオープンソース開発はすべて営利目的の開発です」Matusow氏は言う。 「慈善目的で行われているわけではありません。 Red Hatを例に取りましょう。 お望みならサポート・ライセンスと呼んでもかまいませんが、Red Hatは利益を生むものをライセンスしています。 SuSEは明らかに営利事業です。 MySQLは、非常に興味深いオープンソース・ビジネス・モデルの1つです。 営利目的を持つことは明確で、そのためにオープンソース・コミュニティによる誠実なサポートを利用しています。」

さらに、非常に評価の高いBerkeleyDBを販売している、カリフォルニア州バークレーのSleepycat Softwareという小さな会社にも話が及んだ。 「Sleepycatも非常に興味深い会社です。 Sleepycatでは、Sleepycatの開発者しか雇っていません … 外部の貢献を受け付けていないのです。 これをどこまでオープンソースと呼べるでしょうか。 これは、多少異なる手法を用いたハイブリッド(ビジネス)モデルです」Matusow氏は言う。

Matusow氏は、ソフトウェア開発が「中間に統合される」と予想していると述べた。 「(ビジネスに携わる)人々は、オープンソースを感情的な観点からではなく、よりビジネス寄りの観点から見ています。 彼らは、オープンソースが自分たちの会社にとってどのような価値を持つのかを見出そうとしています。それはいいでしょう。オープンソースは理にかなったツールだからです。 しかし、オープンソースだけでやっていける会社はほとんどありませんし、今後もほとんどないでしょう。」

Microsoftはオープンソースの背後にあるアイデアからどのように利益を得るのだろうか。 「我々の戦略的目標は、統合された改革を中心に構築されています … 我々はそこに賭けています。 賭けがうまくいくかどうかは時間が経たなければわかりませんが、悪くない賭けだと考えています」Matusow氏は言う。

Matusow氏は、ソフトウェア自体にも、その利用方法にも、常にプロプライエタリな専門家の手助けが必要とされると述べた。

「オープンソースには、実にさまざまな形態があります。 顧客は必要な部分を変更し続けて、実際に自分たちが作成したのがどの部分かを把握できなくなることがあります。 企業は一般に、インフラストラクチャ・コンポーネントに投資するつもりはありません … インフラストラクチャではなく、ビジネス・アプリケーションに投資したいと考えています。 けれども、統合のコストはなくなりません。彼らは、可能な限りそのコストをオープンソースで埋め合わせるでしょう。」

ベンダ・ロックインに関する質問に対して、Matusow氏は次のように述べた。「ユーザを机に拘束して動けないようにするために、ソフトウェア・ベンダが持ち出してくるよこしまなたくらみです。 おたずねしますが、Red Hatが顧客にまた製品を買ってもらうことに興味がないと少しでもお考えでしょうか。 ベンダは常に、顧客のソフトウェア・セットに対する価値を高めようとしています。 オープンソースは柔軟性をもたらします。これは大きな強みです。 しかし、顧客は投資するときに、会社との付き合いを続けたいとも考えています。会社が消滅するのを見たいとは思っていません。」

結局、これらはすべて透明性の概念に集約されるとMatusow氏は言う。 「我々は開発者に対するアンケートを実施しました。 60パーセントは、ソース・コードを見ることが絶対に不可欠だと回答しました。 なるほど、けっこう。 次に、彼らがソース・コードを改変するかどうかをたずねました。 改変すると回答した人は5パーセント未満でした。 彼らはおもちゃを見て遊びたいが、必ずしも改変したいわけではないのです。 これは株式市場の様子に似ています。ほとんどの人々は、購入に先立って目論見書を隅々まで読むことはありません。彼らはブローカーの言うことを信じて、そのアドバイスに従います。」

Microsoftがオープンソースではなくシェアードソースを選択したのは、開発者に新しいアプリケーションの作成を奨励しつつ、作成されたすべての知的財産を自ら統轄し続けるための合法的な手段だからだろうか。 「必ずしもそうではありません」Matusow氏は述べた。 「我々のプログラムには、パートナーがWindowsのコードにアクセスし、好みに合わせて改変し、改変部分に対する著作権を取得できるものもあります … これをデュアルライセンスしてLinux機器などに組み込みたければ、彼らにはその権利があります。」

Matusow氏は、「参照許可(reference grant)」と呼ばれるMicrosoftのシェアードソース・ライセンスが、顧客に具合のいい形で彼らをサポートすると述べた。 「何を公開するかが要因になります」Matusow氏は言う。 「あなた(会社)は、どの製品が中核となる資産で、どの製品が補完的な資産かを判断する必要があります。 これらすべてを明確に見極めることがきわめて重要です。」

Microsoftはコードをどのように公開しているのだろうか。 「我々は顧客の意見を聞いて、彼らがソース・コードをどのように入手したいかを見極めます。 あるベンダは、すべてを8枚のCDに収めていました。そこに100万行ほどのコードが収録されていました。 これはあまり効率のよい配布方式ではありませんでした。 我々は、彼らがそれをオンラインでホストする手助けをし、C++の関数定義に基づいてソース・ベースをインデックス化しました。それにより、配布がうまくいくようになりました。」

コードが多くの人々の目にさらされるオープンソース・アプリケーションの方が、一般に安全性が高いのではないかという質問に対して、Matusow氏は次のように答えた。 「プロジェクトがオープンソースだからという理由だけで、本質的に安全性が高いという考え方には異議を唱えます。 一般に、訓練を受けたセキュリティの専門家がコードを見ているかどうかはわかりません。 企業と結び付けて考える必要がある信用の要素がかかわっています。 」

「たとえば、Novellでは次期リリースのために5,000のコンポーネントを取りまとめています。 その高レベルのセキュリティ作業に取り組んでいる人々――彼らの作業は無償ではありません。 全員が高給を受け取っているのです。」