IEEEネットワークカンファレンスがネットワークOSとしてLinuxを採用

フロリダ州オーランドの米I.D.E.A.L. Technologyの発表で始まるこの記事は、一見”プレスリリースをネタにした”記事のように見えるかもしれない。しかし、I.D.E.A.L.のAnthony Awtrey氏とJordan Jacobs氏の両副社長が、IEEEのProject 802 Standards CommitteeおよびWireless Working Groupsにワイヤレス(および有線)ネットワークサービスを提供する契約に至った経緯は、世界中のLinuxソリューションプロバイダにとって実際的な教訓になる。

特筆すべきは、IEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)はMicrosoftベースの無料のワイヤレス(および有線)ネットワーク製品を採用しようとしていたにもかかわらず、Linuxベースのネットワークの方が優れているという理由で”有料”でもLinuxネットワークを採用すると決定したことだ。

まず初めに注目したいのは、IEEEのProject 802 Standards Committeeは毎年世界各地でカンファレンスを多数主催し、毎回100人から1500人以上が出席するということで、このことからも、この契約が小さなものなどではないことが分かる。2番目に、IEEEのStandardsカンファレンスのコンピュータネットワーク、特にワイヤレスネットワークは、ComdexやLinuxWorldのように単に便宜性から使うものではない。各カンファレンスの目的の技術論文や規格制定ドキュメントを合同で執筆、編集するために必要不可欠なものなのである。 3番目に、IEEEは、ネットワーク標準の制定を担うだけに、コンピュータネットワークサービス会社の顧客と同じくらい注文が厳しいということだ。

その場で簡単に決まった契約ではなかった

この話は、I.D.E.A.L.の担当者が部屋に入ってきて見事なプレゼンテーションを行い契約を手にして立ち去った、というような簡単なことではなかった。Jacobs氏はこのように語った。「IEEEのある人がイベントのひとつでプレゼンテーションをするように勧めてくれたのです。私たちは、イベントのうちのひとつでまず試しにサポートさせてもらうように提案し、受け入れてもらいました。」

「イベントのうちのひとつ」ということに注意してほしい。ただひとつだけである。

「しかし」とJacobs氏は述懐する。「そのイベントはI.D.E.A.L.の力量を見せる非常にいい機会になりました。頼んでいたネットワーク設備のうち半分は用意されなかったのですが、Anthony(Awtrey氏。Jacobs氏と同様I.D.E.A.L.の副社長)は自分の(Linux)ラップトップをその場で設定して、ネットワークゲートウェイとして使ったのです。必要な人にはVPNまでセットアップしてあげました。」

この巧みなネットワークの即興実演のおかげで、とJacobs氏は話す。「私たちが何をどうしたらいいかわかっていることを確信してもらえました。」


I.D.E.A.L.副社長Anthony Awtrey氏
Anthony Awtrey氏
そこでI.D.E.A.L.はまた別のイベントでもネットワークを担当した。その次も、そしてまた次も。IEEE 802 Standardsカンファレンスのこれまでの典型的なパターンは、ネットワークが使えるようになるまでにイベントの最初の数日が過ぎてしまう、というものだったが、Jacobs氏によると、I.D.E.A.L.が担当したときはいつも数時間でネットワークを動作させることができたという。

ある別のイベントでは、I.D.E.A.L.はまた「スター」を演じる機会を得た。ネットワークが突然ワームに感染したのだ。「(そのイベントの)1500人近い出席者の中の誰かが感染していたのでしょう。」とJacobs氏は話す。しかし、Linuxサーバで動いていたその環境では、すべてはそのまま動作した。ネットワークへの影響は、ワームが膨大な容量を消費したためにスピードが著しく落ちたことだけだった。

しかも、この問題自体も長い時間続いたわけではなかった。Jacobs氏は話す。「Anthonyはネットワーク上で何人かの人が持っていたワームを発見し、すぐにMACアドレスで容疑者を突きとめて、その人たちをシャットダウンしました。」

(現在、I.D.E.A.L.はあるユーティリティに取りかかっている。そのユーティリティは、感染しているマシンをネットワークから自動的に排除し、そしてここが画期的なところなのだが、感染したマシンの画面にメッセージを表示する、というものだ。マシンの所有者に、ネットワーク管理者に連絡して、ワームまたはウイルスの除去とサービスのリストアを行うよう、そのメッセージで指示するのである。このユーティリティは、一般向けWiFiプロバイダにとって「必須」のソフトウェアになる可能性を秘めており、I.D.E.A.L.の収益増加に寄与するものになるだろう。)

一仕事ずつ確立した顧客との関係

その後、I.D.E.A.L.は、IEEE network standardsの人々からカンファレンスの仕事を次々と得たが、どれもまだその場限りの仕事だった。「次々にたくさんのイベントを一つずつ担当しました。」Jacobs氏は話す。

Jacobs氏によれば、イベントでのネットワークの仕事の多くは間際になって依頼されるという。I.D.E.A.L.にはストレスの多いことだったが、中小のソフトウェアサービス企業にとってはそれが現実だ。特に、将来の大口顧客候補に自分たちのいいところを見せようという場合はやむを得ない。

もちろん、IEEE 802 Standardsのイベントでネットワークサービスを提供するという複数年契約(噂では70万ドルは下らないという)を結ぶ今となっては、当日間際の呼び出しはもう過去のことだ。

ただし、忘れてならないのは、これほどの高額の契約がサインされるまでには、何ヶ月もの真摯なサービスの連続を要したということである。

I.D.E.A.L.は小さな会社で、今回の確固たる契約を獲得するまでは、IEEE’s 802 Standards Groupにこれだけのレベルのサービスを提供するために、スタッフは大きな個人的犠牲を払った。「昨年は皆いつも疲れていました。」Jacobs氏はいう。「ときには週末返上で毎日長時間働いていました。」

Windowsが無料でLinuxが有料

Linux賛同者のJacobs氏にとって、他のLinux/オープンソースプロバイダに伝えたい重要なポイントがある。それは、米MicrosoftはProject 802 Standards Committeeの主要メンバーの一員であり、I.D.E.A.Lが参入するまではMicrosoftがネットワークサーバを無料で提供するとしていたにもかかわらず、IEEEは、より信頼性の高いサービスを提供するLinuxの会社にすべてのイベントのネットワーク管理を任せることを選んだ、ということである。

おそらく、IEEEが惹かれたのはLinuxということだけではなかっただろう。他にも可能性のあるプロバイダが多くある中、なぜI.D.E.A.L.がこの契約に選ばれたのか。I.D.E.A.L.は特に有名でもなく、国防省の研究を中心とした非常に小さなすき間仕事を得ている程度で、それがこれまでは同社の主な収入源だった。この疑問について、Jacobs氏は冗談半分にこう答えた。「私たちは種馬なのです!」

それはさておき。Linuxと、適切に設定されたオープンソースソフトウェアと、知識豊かなLinux推進者のたゆまぬ努力。この連動が、厳しい競争の勝者であることがまたもや証明された。契約交渉のどの段階でも「Linuxは無料でWindowsは有料です」というセリフはまったくなかったにもかかわらず。