データベースを使用した新しいビジネスインテリジェンス
専門家の意見は、「拡張可能」でほぼ一致している。そう言えば確かに、データベースの機能拡張に着手したという話をよく耳にするようになった。
データベースの拡張とは具体的に何かと言うと、重要なビジネスインテリジェンスを収集し、ユーザの要望に応じてスライスアンドダイスすることである。目的は、経営陣に幅広い情報を提供して重要な戦略決定に役立ててもらうことだ。
Software Development Forumのパネル討論会が水曜日にパロアルト研究センターで開かれた。テーマは、「データベースの今後」。パネリストには、MySQLの共同創業者David Axmark氏、IBMのJon Rubin氏、Inovant(Visa Internationalの子会社)のチーフデータ設計者Kevin Perry氏、雑誌編集者David Stodder氏が顔を揃えた。モデレータはSoftware Development ForumのSteven McHenry氏。
「企業にとってデータベースはどれほど大切なのでしょうか。Visaを例に取ると、顧客の動向を把握するために、Webクローラを使ってインターネットを巡回し、Visaカード決済に関する意見をブログやチャットルームなどから収集し、そうした大量のデータを情報共有のためにデータベースに格納する、といったことをしています」と切り出したのはRubin氏。氏は、ソリューション開発のDB2シニアスペシャリストであり、IBMの前はGartner Groupでデータベース業界のアナリストを務めていた。「集めた情報は非常に役立つものでしょう。大量の情報を一元管理するのは確かに大変な仕事ですが、今はその方向に進んでいます」
データベースシステムが大規模かつ多機能になるにつれて、顧客関係管理情報やサプライチェーン情報を集計するという仕事がデータベース管理者にとってますます重要な仕事になるという。「データベースを正しく構築すれば、大量の新規ビジネスインテリジェンスが利用可能になり、その使い方を習得すれば、競争に有利になります」(Rubin氏)
データベースは今後も単体として捉えるのが妥当か
データベースは大規模企業システムの一機能ではあるがこのまま単独で使用するのが妥当かどうかという質問に、Axmark氏が答えた。「私は自分の知らないフォームでデータを格納するつもりはありません。今はJavaや.NETなどの言語が使用できますが、これまでにもたくさんの言語が開発されましたし、今後もたくさんの言語が登場するでしょう。私はデータベースを汎用品として捉えるつもりはありません。データベースには独特の注意が必要です。少なくとも今の使い方をしている限りは」
Rubin氏によると、経営陣はエンタープライズプラットフォームを購入するとき、システム全体を見て会社の業務に見合っているかどうかを判断するという。Rubin氏は、「しかし、ITスタッフなら同意してもらえると思いますが、データベースは汎用品ではありませんし、交換可能な商品でもありません」と発言し、個々のデータベースには管理性、回復性、サービスレベル問題といった特性があると指摘した。
一方、InovantのPerry氏の見解は異なる。「私はデータベースは汎用品だと考えています。当社では、Oracleの(プロシージャ)コールも、Universal Databaseのコールも、他のどのコールもあまり深く掘り下げて使ってはいません。また、特定のデータベースの特定の機能に依存しないように心がけています。独自の拡張を施さなければならない場合もありますが、基本的にシステムはできる限りシンプルにしておきたいと考えています。データこそが当社の価値ですから」。
Perry氏は、ドライバが交換可能なように、DB2 Universal Databaseを他のデータベースに代えて使用していると指摘した。ただし、特定のデータベースの特定の機能が望ましい場合もあるという。「ある大手顧客のために、Informixの高速SQLローダーを組み込んだことがあります。そのときにはどうしても必要な機能だったからです。しかし当社にとってはきわめてまれなことです」
オープンソースのデータベース対プロプライエタリのデータベース
Perry氏は、膨大な量のデータが発生する業務でなぜオープンソースのデータベースを使用するのか理解できないという。「肩に親しく手を回して『これは宣伝どおりに動作しないじゃないか』と言える存在がほしいのです。大手企業のほとんどが商用ベンダを求めるのもそのためだと思います。商用ベンダの方がサービス品質が良くなっていくと感じています」
Perry氏の発言に対して、Axmark氏はすぐに反論した。「当社がMySQLのサービスとサポートを毎日24時間提供していることはご存知ですよね。うちのサポート担当者の肩に手を回してもかまいませんよ。サービスとサポートには自信を持っていますから」
Axmark氏は、MySQLがDB2の機能の豊富さにはとても及ばないことは認めたが、「これまで大勢の人に満足していただいています。DB2やOracleに見られる大きな機能ではなく、ユーザが毎日使用する細かい機能にこだわるのが当社の特徴です」と発言した。
MySQLはオープンソースのデータベースである。しかし、「当社は設立当初から営利会社です。当社にお金を払っていただければ、すばらしいサービスを提供します。払っていただけない場合は、そうですねえ…」とAxmark氏は付け加えた。
XMLは十代のセックスか
データ形式の1つであるXMLもテーマに挙げられていた。XMLはまだビジネスで使用できる状態になっていないと、Rubin氏は見る。
「XMLは十代のセックスのようなものです。だれもが話題に取り上げるので、みんなもうセックスしていると思うのですが、本当はまだだれもセックスなどしていません。XMLの拡張性というのはつまり、新しい機能が豊富にあるという意味なのです。オブジェクトや関係をXMLフォーマットで表現する方法があり、どんなデータでも共通のプラットフォームで入手でき、大きなコンテキストでデータをまとめることができたら、その価値は非常に大きなものになります。でも現状はそうなっていないと思います」
現在の姿のデータベースが近い将来消えてなくなることはないと、パネリスト全員が同意した。
「これからもしばらくデータベースは存在し続けると思います。人や企業が新しい技術に移行するまでには時間がかかりますから。今ある機能のほとんどは標準規格に盛り込まれていません。今後も必要になったときに必要な機能が追加されていくでしょう。COBOLだっていまだに使い続けられているのですから」(Axmark氏)
「事態はゆっくり変化します。新しい機能を開発することよりも、顧客の期待を変える方がはるかに時間がかかります」(Rubin氏)
パネル討論会の主催者であるSoftware Development Forumは、起業家、開発者、投資家、業界専門家、主要技術会社と深いかかわりを持つ非営利団体である。2,000人の個人会員で構成され、毎月20〜30回の講演会、講習会、セミナーを開催している。