日立、渡邊フォント無断複製問題に対して無償利用も可能な対応を表明
日立とタイプバンクは9月29日の声明にて、 この件における32ドット明朝体フォントの権利が両者に帰属するものを 明確に主張し、両者に無断で公開、配布、派生フォントの制作を行うことは できないとしている。さらに、該当フォントの主にLinux上での流用に 関しては、両社に無断で使用されているとしつつも、 Linuxシステムの振興活動を考慮し、限定した範囲での使用を 認めるとしている。声明としては非常に曖昧な表現であるが、 日立製作所と無償のライセンスを結べば、派生フォント制作、公開、配布を 認めるということであり、実質的に東風フォントの存在は 認めるということになる。
日立側のこの判断は、原則としてこの問題は、俗に渡邊フォントと呼ばれている 32ドットのビットマップフォントがタイプバンクと日立製作所 デザイン研究所により開発された商用フォントをほぼそのまま複製した ものだったことに起因するため、無断使用は当然不可であるというスタンス に立ちながらも、渡邊フォントから派生した東風明朝フォント等がLinux ディストリビューションのほぼすべてに含まれてしまっているほど一般に 広まっていることを考慮した判断だと推測される。
これにより、最悪のケースとして想定されていた過去に配布された ディストリビューションに含まれていたフォントに対する権利侵害の追求 等は避けられると見られ、今後の配布についても目処が立ったと思われる。 ただし、現状で明らかになっているライセンス条件は非常に曖昧であり、 完全にフリーなフォントの作成を進める動きが活発化するものと思われる。 東風明朝フォントの作者である古川泰之氏については、 自身のwebにて、今後の対応に ついては検討中としている。古川氏に通告された条件は、新たな契約のもと で、日立−タイプバンクの権利使用を明記し、非営利使用に限定というもの。
なお、渡邊フォントと呼ばれている問題の派生元フォントは元々、 京都大学教育ソフト研究開発クラブが開発した数式ワープロ 「LABO System 123」に含まれていた32ドットのフォントに由来するもの であることが明らかになっているが、そもそもこのLABO System 123に 何故日立製作所とタイプバンクが開発した32ドット明朝体フォントが流用 されたのかという経緯については、まだ明らかにはなっていない。 LABO System 123は当時、数万本が出荷された数式ワープロであるが、 既に販売元は倒産している。