Bayonneが可能にするオープンソース・テレコム
テレコム市場にはずっと昔からプロプライエタリシステムが浸透しているため、Microsoftもフリーソフトウェア支持者の同胞であるように見える。この現状を壊そうと狙っているのがDavid Sugarである。Sugarは、GPLライセンスに基づくGNU Bayonneというテレコムサーバプロジェクトの開発リーダーである。このプロジェクトを支援するために、Sugarは、GNU Bayonneベースの製品およびサービスを販売するOpen Source Telecom(OST)という営利企業を設立している。
GNU Bayonneは、インタラクティブ音声応答システムや電話システム管理ツールなど、さまざまなテレコムアプリケーションに使用できるカスタマイズ可能な電気通信アプリケーションサーバである。GNU Bayonneでは、Linuxなどのフリーソフトウェアプラットフォームでよく見られる従来のスクリプト言語やツールに直接統合されたテレコムアプリケーションを作成することができる。さらにGNU Bayonneは、プラグインを通じて、広範なテレフォニーハードウェアのサポートとモジュール型のアーキテクチャを提供する。
GNU Bayonneでは、数々のベンダから出されているLinuxとマルチラインテレコムハードウェアを搭載した商用のPCプラットフォームを使用することで、公衆電話網を使う商用音声アプリケーションを作成および配備できる。Sugarは、GNU Bayonneは企業がフリーオペレーティングシステムベースのテレコムサービスを構築するための手段を提供する、と語っている。
通常のシステム管理者やWeb管理者に要求されるスキルと、Perl、ゲートウェイ実行、Bayonneサーバスクリプトといった既存のお馴染みのツールがあれば、GNU Bayonneサーバ(とそれに対応するアナログまたはデジタルのテレフォニーカード)を使って商用アプリケーションサービスを作成することができる。Sugarによれば、このように開発が簡単で、既存のフリーソフトウェアコンポーネントと簡単に統合できることから、特殊なスキルやプロプライエタリAPIを持たないさまざまなユーザや開発者でも、テレコムアプリケーション開発に取り組むことが可能である。これまでに開発されたビジネス電話機能の例としては、インターコムダイヤリング、コール転送、保留再コール、コールパーク、高速ダイヤル、スケジューリング、コールカバレッジなどがある。
「GNU Bayonneの当初の目的は、テレフォニーサービスを今日のWebサーバと同じくらい簡単に開発・配備できるようにすることだった」とSugarは語っている。「我々は、このサーバをサーバスクリプトで簡単にプログラミングできるようにする道を選んだ。さらに、移植性を高め、既存のアプリケーションスクリプトツールと統合できるようにして、このプラットフォーム全体を、テレフォニー機能の提供と他のリソース(データベースなど)との統合に使用できるようにしたいと考えた。」
GNU Bayonneの歴史はまだ5年足らずだが、この技術は既に世界各国で広く利用されている。利用者の範囲も、ロシアの電気通信事業者からアメリカの州/連邦政府機関まで、実にさまざまである。利用者の中には、特殊なテレフォニーベースのWebサービス(Web上での音声商取引など)や、顧客関係管理システムなどのエンタープライズアプリケーション用のプラットフォームを求めている企業も多い。
だが、Sugarが最も気に入っているBayonneの利用例の1つは、商業的なものではまったくない。彼は昨年、フリーソフトウェアの推進のためにマケドニア共和国に旅したときに、「Bayonneを使って実現できる社会的に有益なもの」を探しているという地元のLinux開発者から相談を受けた。そこでSugarは、GNU Alexandriaという、視覚障害者が公衆電話網を使ってWeb上の電子コンテンツにアクセスするためのプラットフォーム作りを目指すGNU Bayonneベースのフリーソフトウェアプロジェクトの誕生を受けて、彼らに視覚障害者のためのアプリケーションを開発するべきだと提案した。
フリーソフトウェアから利益を得るには
Sugarは高邁な理想のために活動しているのかもしれないが、彼はまた、知的所有権が保護されなくても大きな革新を実現でき、なおかつ人並みの暮らしを維持できるということの生き証人でもある。彼はGNU Bayonneの中心的な開発リーダーであると同時に、5年前に設立された、GNU Bayonneおよびその他のオープンソースソフトウェアをベースにしたテレコムハードウェア、ソフトウェア、サービスを販売するOSTという企業の最高技術責任者も務めている。OSTはただの私企業であるが、顧客数は300以上に及び、その範囲は医療口述会社から地方自治体、あるいはSun Microsystemsのような大企業まで、多岐にわたっている。
OSTとBayonneは、Sugarがテレコム分野で生み出した最も新しい成果にすぎない。テレフォニー業界のベテランであるSugarは、ずっと昔からテレフォニーシステムの開発に携わってきた。彼は80年代に、普通の人々はモデムを電話回線に差し込めないということを発見したその日から、テレフォニー業界にかかわることを決心した。90年代半ばまでは米Fujitsuに勤務し、とりわけ米証券取引委員会のためのLinuxベースのPBXと商用音声メールのセットアップに取り組んだ。
Sugarが初めて作成したLinuxソフトウェアの1つはテレフォニーシステム用のものだった。彼はそのソフトウェア(Panasonic Digital Business Systemという電話システムと統合することを目的としたサーバ)を誰でも自由に入手できるようにしたかったので、それをBSDライセンスの下で開発した。
Sugarはこのとき、のちにOSTの共同設立者になるRich Bodo(現OST代表取締役)と出会った。Bodoは当時、プロプライエタリな電気通信ソフトウェアの開発者であるMartin Clintonの下で働いていた。Clintonの投資会社の1つであるIngateが倒産したとき、BodoとSugarは、そのソースコードをGPLにし、他の人々のために新しいビジネスチャンスを作るよう彼を説得した。
当時、フリーソフトウェアがエンタープライズインフラストラクチャのさまざまな空隙を埋めるようになってきていたが、テレコムのニーズにはまだフリーソフトウェアが進出していなかった。彼らは、テレコムあらゆるビジネスのインフラストラクチャの一部であるだけでなく、デスクトップユーザの作業の中でしばしば見過ごされている部分でもあると考えていた。
企業内にテレコムシステムが存在する場合、それは必ずプロプライエタリなシステムだったし、存在しない場合、そのシステムを社内で開発するのは難しく、購入するにしてもたいていは非常に高価なものだった。当時の電気通信業界のプロプライエタリなシステムでは、ごく基本的なサービスを追加するだけでもたいへんな時間がかかった。Ma Bell独占体制の分割という判決をGreene裁判官が下した後ですら、この状況は変わらなかった。通信事業者がプロプライエタリな技術を抱え込み、標準をめぐってしのぎを削っていたため、キャッチホンやコール転送のようなサービスを実装するにも何年という月日がかかった。
Bodoによれば、彼とSugarは、今日のテレコム環境ではこのような無意味な争いをしている暇はないということで意気投合した。そこで彼らは、テレフォニーアプリケーションのためのフリーコードを記述するAdjunct Communication Server(ACS)というプロジェクトを開始した。その数年後、1999年の終わりごろに、このアーキテクチャがBayonneの開発土台として提供された。
「ACSのアーキテクチャには限界があった」とSugarは述べている。「このアーキテクチャは、テレフォニーカードに直接バインドされるサーバを構築するという発想に基づくものだった。これはつまり、個々のカードファミリーに別々のサーバをコンパイルしなければならないということであり、大量のコードが無駄に重複することになってしまった。」
そこでSugarは路線を転換し、GNU Bayonneが誕生したというわけだ(Bayonneという名前は、ニュージャージー州の橋に由来する)。
柔軟性とオープン性が成功の鍵
Sugarは、Bayonneの成功の鍵はその柔軟性にあると確信している。Sun Microsystemsは、社内のエンタープライズサポートコールセンターを設置するときに、AsteriskやCisco後援のVOCALシステムのような他のLinuxベースのプラットフォームでも、IntelのDialogicのようなプロプライエタリシステムでもなく、OSTのBayonneに基づくアーキテクチャを採用した。
Sunが目指していたのは、データベースアクセスとテキスト読み上げ(Text-to-Speech)を多用する大規模なメニューシステムだった。Sunの同プロジェクトのプログラムマネージャであるAlex Goffは、「我々はきわめて柔軟なスクリプト言語を必要としており、それをBayonneが提供してくれた」と語っている。さらにGoffは、OST/Bayonneのその他のコンポーネント(たとえばインタフェース、データベースアクセスとの強力な統合、テキスト読み上げエンジンなど)にも感銘を受け、特にBayonneの拡張性とメディア非依存という性質が気に入ったと述べている。Sugarによれば、AsteriskやVOCALといった他のLinuxベースのシステムにはこれらの特徴が1つもないそうだ。
OSTのSun向けプロジェクトでは、GNU Bayonneにいくつかの追加変更を加える必要があったが、もちろんこの変更はいずれもGPLの下で行われた。
Sugarは、フリーソフトウェアを無条件で配布することには落とし穴もあるという点に数年前に気づいて以来、GPLを採用するようになったと語っている。もしもユーザに完全な自由を認めた場合、彼らはそれを複製許可なくプロプライエタリパッケージとして販売できることになり、フリーソフトウェアの主眼の1つが損なわれてしまう。もちろん、Richard Stallmanはそうした状況を防ぐためにGPLを作成したのである。
オープンソースはたとえばインターネット用アプリケーションの提供者の範囲を広げるのに一役買ったが、フリーソフトウェアはテレコム分野でも同じ役割を果たすだろうとSugarは予想している。彼はGPLの熱心な支持者であり、GPLは、アプリケーションの最も優れたバージョンが常にフリーバージョンであることを保証するものだと信じている。さらに、直観的ではないかもしれないが、コードを公開することはビジネスモデルの面でも理にかなっていると述べている。Sugarの言葉を引用する。「主要な製品をGPLにした場合、ほぼ平等の競争条件になるということはわかっている。しかし、まったく平等ではあり得ない。なぜならそれはもともとあなたが作成したもので、あなたがメンテナンス担当者であり開発担当者であり、エキスパートであるからだ。また、たとえばコンサルティングモデルについて言えば、これは非常に単純な方程式である。これはあなたの製品とあなたの顧客の双方にとってメリットになるのだ。」
テレフォニーアプリケーションにLinuxを使うことには、明らかなメリットがある。具体的に言えば、Linuxはカスタマイズされたアプリケーションをサポートでき、クラッシュに耐性があり、他の多くのオペレーティングシステムよりもハードウェア要件が低い。ただし、参入費用が安いのは確かだが、総所有コスト(TCO)はアプリケーションに応じて異なるということをSugarも認めている。Bayonneを使用する場合でも、社内のデータ中心のVoIPシステムと旧式の音声中心の公衆交換電話網とのギャップを埋めるために、高価なハードウェアを購入する必要があるかもしれない。このハードルを越えることが、目下のBayonneの最大の課題になるだろう。
Anne Donker─―サンフランシスコを拠点として活動するコンサルタント。
GNU Bayonneは、インタラクティブ音声応答システムや電話システム管理ツールなど、さまざまなテレコムアプリケーションに使用できるカスタマイズ可能な電気通信アプリケーションサーバである。GNU Bayonneでは、Linuxなどのフリーソフトウェアプラットフォームでよく見られる従来のスクリプト言語やツールに直接統合されたテレコムアプリケーションを作成することができる。さらにGNU Bayonneは、プラグインを通じて、広範なテレフォニーハードウェアのサポートとモジュール型のアーキテクチャを提供する。
GNU Bayonneでは、数々のベンダから出されているLinuxとマルチラインテレコムハードウェアを搭載した商用のPCプラットフォームを使用することで、公衆電話網を使う商用音声アプリケーションを作成および配備できる。Sugarは、GNU Bayonneは企業がフリーオペレーティングシステムベースのテレコムサービスを構築するための手段を提供する、と語っている。
通常のシステム管理者やWeb管理者に要求されるスキルと、Perl、ゲートウェイ実行、Bayonneサーバスクリプトといった既存のお馴染みのツールがあれば、GNU Bayonneサーバ(とそれに対応するアナログまたはデジタルのテレフォニーカード)を使って商用アプリケーションサービスを作成することができる。Sugarによれば、このように開発が簡単で、既存のフリーソフトウェアコンポーネントと簡単に統合できることから、特殊なスキルやプロプライエタリAPIを持たないさまざまなユーザや開発者でも、テレコムアプリケーション開発に取り組むことが可能である。これまでに開発されたビジネス電話機能の例としては、インターコムダイヤリング、コール転送、保留再コール、コールパーク、高速ダイヤル、スケジューリング、コールカバレッジなどがある。
「GNU Bayonneの当初の目的は、テレフォニーサービスを今日のWebサーバと同じくらい簡単に開発・配備できるようにすることだった」とSugarは語っている。「我々は、このサーバをサーバスクリプトで簡単にプログラミングできるようにする道を選んだ。さらに、移植性を高め、既存のアプリケーションスクリプトツールと統合できるようにして、このプラットフォーム全体を、テレフォニー機能の提供と他のリソース(データベースなど)との統合に使用できるようにしたいと考えた。」
GNU Bayonneの歴史はまだ5年足らずだが、この技術は既に世界各国で広く利用されている。利用者の範囲も、ロシアの電気通信事業者からアメリカの州/連邦政府機関まで、実にさまざまである。利用者の中には、特殊なテレフォニーベースのWebサービス(Web上での音声商取引など)や、顧客関係管理システムなどのエンタープライズアプリケーション用のプラットフォームを求めている企業も多い。
だが、Sugarが最も気に入っているBayonneの利用例の1つは、商業的なものではまったくない。彼は昨年、フリーソフトウェアの推進のためにマケドニア共和国に旅したときに、「Bayonneを使って実現できる社会的に有益なもの」を探しているという地元のLinux開発者から相談を受けた。そこでSugarは、GNU Alexandriaという、視覚障害者が公衆電話網を使ってWeb上の電子コンテンツにアクセスするためのプラットフォーム作りを目指すGNU Bayonneベースのフリーソフトウェアプロジェクトの誕生を受けて、彼らに視覚障害者のためのアプリケーションを開発するべきだと提案した。
フリーソフトウェアから利益を得るには
Sugarは高邁な理想のために活動しているのかもしれないが、彼はまた、知的所有権が保護されなくても大きな革新を実現でき、なおかつ人並みの暮らしを維持できるということの生き証人でもある。彼はGNU Bayonneの中心的な開発リーダーであると同時に、5年前に設立された、GNU Bayonneおよびその他のオープンソースソフトウェアをベースにしたテレコムハードウェア、ソフトウェア、サービスを販売するOSTという企業の最高技術責任者も務めている。OSTはただの私企業であるが、顧客数は300以上に及び、その範囲は医療口述会社から地方自治体、あるいはSun Microsystemsのような大企業まで、多岐にわたっている。
OSTとBayonneは、Sugarがテレコム分野で生み出した最も新しい成果にすぎない。テレフォニー業界のベテランであるSugarは、ずっと昔からテレフォニーシステムの開発に携わってきた。彼は80年代に、普通の人々はモデムを電話回線に差し込めないということを発見したその日から、テレフォニー業界にかかわることを決心した。90年代半ばまでは米Fujitsuに勤務し、とりわけ米証券取引委員会のためのLinuxベースのPBXと商用音声メールのセットアップに取り組んだ。
Sugarが初めて作成したLinuxソフトウェアの1つはテレフォニーシステム用のものだった。彼はそのソフトウェア(Panasonic Digital Business Systemという電話システムと統合することを目的としたサーバ)を誰でも自由に入手できるようにしたかったので、それをBSDライセンスの下で開発した。
Sugarはこのとき、のちにOSTの共同設立者になるRich Bodo(現OST代表取締役)と出会った。Bodoは当時、プロプライエタリな電気通信ソフトウェアの開発者であるMartin Clintonの下で働いていた。Clintonの投資会社の1つであるIngateが倒産したとき、BodoとSugarは、そのソースコードをGPLにし、他の人々のために新しいビジネスチャンスを作るよう彼を説得した。
当時、フリーソフトウェアがエンタープライズインフラストラクチャのさまざまな空隙を埋めるようになってきていたが、テレコムのニーズにはまだフリーソフトウェアが進出していなかった。彼らは、テレコムあらゆるビジネスのインフラストラクチャの一部であるだけでなく、デスクトップユーザの作業の中でしばしば見過ごされている部分でもあると考えていた。
企業内にテレコムシステムが存在する場合、それは必ずプロプライエタリなシステムだったし、存在しない場合、そのシステムを社内で開発するのは難しく、購入するにしてもたいていは非常に高価なものだった。当時の電気通信業界のプロプライエタリなシステムでは、ごく基本的なサービスを追加するだけでもたいへんな時間がかかった。Ma Bell独占体制の分割という判決をGreene裁判官が下した後ですら、この状況は変わらなかった。通信事業者がプロプライエタリな技術を抱え込み、標準をめぐってしのぎを削っていたため、キャッチホンやコール転送のようなサービスを実装するにも何年という月日がかかった。
Bodoによれば、彼とSugarは、今日のテレコム環境ではこのような無意味な争いをしている暇はないということで意気投合した。そこで彼らは、テレフォニーアプリケーションのためのフリーコードを記述するAdjunct Communication Server(ACS)というプロジェクトを開始した。その数年後、1999年の終わりごろに、このアーキテクチャがBayonneの開発土台として提供された。
「ACSのアーキテクチャには限界があった」とSugarは述べている。「このアーキテクチャは、テレフォニーカードに直接バインドされるサーバを構築するという発想に基づくものだった。これはつまり、個々のカードファミリーに別々のサーバをコンパイルしなければならないということであり、大量のコードが無駄に重複することになってしまった。」
そこでSugarは路線を転換し、GNU Bayonneが誕生したというわけだ(Bayonneという名前は、ニュージャージー州の橋に由来する)。
柔軟性とオープン性が成功の鍵
Sugarは、Bayonneの成功の鍵はその柔軟性にあると確信している。Sun Microsystemsは、社内のエンタープライズサポートコールセンターを設置するときに、AsteriskやCisco後援のVOCALシステムのような他のLinuxベースのプラットフォームでも、IntelのDialogicのようなプロプライエタリシステムでもなく、OSTのBayonneに基づくアーキテクチャを採用した。
Sunが目指していたのは、データベースアクセスとテキスト読み上げ(Text-to-Speech)を多用する大規模なメニューシステムだった。Sunの同プロジェクトのプログラムマネージャであるAlex Goffは、「我々はきわめて柔軟なスクリプト言語を必要としており、それをBayonneが提供してくれた」と語っている。さらにGoffは、OST/Bayonneのその他のコンポーネント(たとえばインタフェース、データベースアクセスとの強力な統合、テキスト読み上げエンジンなど)にも感銘を受け、特にBayonneの拡張性とメディア非依存という性質が気に入ったと述べている。Sugarによれば、AsteriskやVOCALといった他のLinuxベースのシステムにはこれらの特徴が1つもないそうだ。
OSTのSun向けプロジェクトでは、GNU Bayonneにいくつかの追加変更を加える必要があったが、もちろんこの変更はいずれもGPLの下で行われた。
Sugarは、フリーソフトウェアを無条件で配布することには落とし穴もあるという点に数年前に気づいて以来、GPLを採用するようになったと語っている。もしもユーザに完全な自由を認めた場合、彼らはそれを複製許可なくプロプライエタリパッケージとして販売できることになり、フリーソフトウェアの主眼の1つが損なわれてしまう。もちろん、Richard Stallmanはそうした状況を防ぐためにGPLを作成したのである。
オープンソースはたとえばインターネット用アプリケーションの提供者の範囲を広げるのに一役買ったが、フリーソフトウェアはテレコム分野でも同じ役割を果たすだろうとSugarは予想している。彼はGPLの熱心な支持者であり、GPLは、アプリケーションの最も優れたバージョンが常にフリーバージョンであることを保証するものだと信じている。さらに、直観的ではないかもしれないが、コードを公開することはビジネスモデルの面でも理にかなっていると述べている。Sugarの言葉を引用する。「主要な製品をGPLにした場合、ほぼ平等の競争条件になるということはわかっている。しかし、まったく平等ではあり得ない。なぜならそれはもともとあなたが作成したもので、あなたがメンテナンス担当者であり開発担当者であり、エキスパートであるからだ。また、たとえばコンサルティングモデルについて言えば、これは非常に単純な方程式である。これはあなたの製品とあなたの顧客の双方にとってメリットになるのだ。」
テレフォニーアプリケーションにLinuxを使うことには、明らかなメリットがある。具体的に言えば、Linuxはカスタマイズされたアプリケーションをサポートでき、クラッシュに耐性があり、他の多くのオペレーティングシステムよりもハードウェア要件が低い。ただし、参入費用が安いのは確かだが、総所有コスト(TCO)はアプリケーションに応じて異なるということをSugarも認めている。Bayonneを使用する場合でも、社内のデータ中心のVoIPシステムと旧式の音声中心の公衆交換電話網とのギャップを埋めるために、高価なハードウェアを購入する必要があるかもしれない。このハードルを越えることが、目下のBayonneの最大の課題になるだろう。
Anne Donker─―サンフランシスコを拠点として活動するコンサルタント。