Linuxは閉鎖的になり、発展を阻害しつつあるか
ベンチャービジネス投資会社Kleiner, Perkins, Caufield and Byersの無限責任社員Khosla は先週、ビジネスマン/投資家向けのWeblogであり、『Red Herring』の前集長Tony Perkinsが始めたユーザーコミュニティAlwaysOn を特集したQ&A インタビューに登場した。
このインタービューにこの方面に強い技術評論家として登場した Khoslaは、次のように述べている。「1つのディストリビューション、 たとえばRed Hatディストリビューションが事実上の標準ディストリ ビューションになると、最終的に閉鎖的なシステムになるおそれがある。 「オープン」ではあっても、記事などに取り上げられるのがRed Hatだけに なれば(ある意味でそれに近い状態になりつつある)、発展が止まり、 批判が始まる恐れがある。これらはどれも過去に実際に起こったことだ。 その結果、Linuxは人々の重大な関心事ではなくなる」
Sun Microsystemsの創立者の1人であるKhoslaは、それに続けて、 この状況をUnixやSolarisと比較した。「Solarisが登場するまで Unixはオープンだった。ところが、その後、実質的にSolarisのいくつかの 重要バージョンだけが残り、Unix自体の重要性が下がってしまった」
では、オープンソースの前線で頑張っているLinux開発業者は どのように考えているのだろうか。
任意に選んだ中小のオープンソース開発業者に聞いてみた。 どこも、Linuxの発展の中核を担っているところばかりである。 回答を寄せてくれたどの開発業者も、Linuxが閉鎖的になって 関心を引かなくなっているなら、とっくに気づいているはずだ という意見であった。
ディストリビューションベンダーLycoris でマーケティング担当副社長を務めるJason Spisakは、「そのような 状況に向かいつつあるとは思わない。Linuxはまだ比較的新しい テクノロジだ。特にデスクトップでは。 GNU/Linuxなど、オープンスタンダードであるGPLベースのOSが 最も優れている点は、 ある企業が市場の大半を押さえたとしても、 気に入ったものを使えなくなるわけではないし、これまでどおりに、 ファイルを共有したり、共同作業をしたり、共存したりすることが できることだ」と語る。
最近、Novellに買収された企業向けデスクトップ/アプリケーション のメーカーXimian のマーケティング担当副社長John Perrの意見は、次のとおりである。 「Red Hatが事実上の標準ディストリビューションになり、最終的に Linuxの「閉鎖化」を招き、発展が阻害されてしまうというシナリオは ありそうもない。理由は次のとおりだ」
– ビジネスユーザーが使用するディストリビューションの 多様性は減りつつあるが、市場シェアにはまだ大きな地域的 差異があること(欧州ではSuSE、中国ではRed Flag、ブラジルでは Connectivaなど)。
– (a)ハードウェアOEM/企業(IBM、Dell、HP)、(b)ソフトウェア ベンダー(RHやSuSEだけではなく、Oracle、PeopleSoft、 最近のNovell/Ximianなど)、(c)企業IT/開発業者のLinux専門技術 (d)オープンソースコミュニティ、のLinuxやオープンソース関連分野が 勢いを維持し、成長を続けていること。どれも、発展、カスタマイズ、 オープン性にとって促進力になる。
– OSレベルでの固定化に対する顧客企業やコミュニティの反応。 顧客企業は、基幹業務用のアプリケーションやデータベースに関する RH Enterprise Linuxのサービス契約には喜んでサインする かもしれないが、Web、印刷、ファイルなどの必須サービスや デスクトップなどの機能については抵抗するだろう。 「Red Hat Linux Project」は、ある意味でこの事実を認識した結果かもしれない。
PowerPC用LinuxディストリビューションメーカーであるTerra Soft SolutionsのCEO、Kai Staatsは次のように語る。 「インターネット自体がオンラインコミュニティであることを考えれば、 オープンソースはこれからもオープンのままだろう。Linuxディストリ ビューションが淘汰され、少数だけが生き残ったら発展が少し鈍化する という見方にはある程度の信憑性はある。しかし、発展の鈍化分は 効率や専門性の向上が埋め合わせるだろう」
CD起動可能なLinuxディストリビューションKnoppix の開発者Klaus Knopperは言う。「1つの企業がGNU/Linuxを支配する 恐れはないと思う。GNU GENERAL PUBLIC LICENSEのしくみから言って、 そういうことはあり得ないからね。フリーソフトウェアを受け取った人は、 そのソフトウェアをコピーし、修正し、(再)配布する権利を必ず 持つことになる。また、その人は自分の権利を告知しなければ ならないとGPLに明記されている。それに、フリーソフトウェアを 支持しているディストリビューションや企業もたくさんある」
これらの意見をまとめると次のようになりそうである。 GNU/GPLに基づいて開発されたものが必ず、利用も修正も 自由なコミュニティに還元される限り(および、顧客の囲い込みを 狙ったベンダー独自のアドオンをユーザーが拒否する限り)、 オープンソースの発展は止まらない。開発業者に言わせれば、 Linuxは閉鎖的とはほど遠く、少なくとも自分たちに関する限り、 そのような兆候は感じていない。
Chris Gulker──シリコンバレーを拠点とするフリーの 技術ライターで、1998年以来、130本を超える記事やコラムを執筆 している。事務所には、ほぼ動きっぱなしの7台のコンピュータ、 オーストラリアン・シェパード、気取り屋のグレーの小さな猫が同居している。