独Siemens、2008年までにLinuxがデスクトップ市場の20%を占めると予測
先日、年商60億ドルの世界的なITコンサルティング/アウトソーシング企業であるSiemens Business Systemsが、実社会の非技術スタッフを対象として大規模な調査を実施した。同社はその結果を踏まえ、LinuxはデスクトップOSとして成熟を見せており、近いうちに世界で2番目に多くインストールされているOSの地位に上り詰めるだろうという見解を表明している。
Siemensのベテランプログラムマネージャで、同社が行ったエンタープライズ環境のユーザ/マネージャに対するLinuxデスクトップの調査を監督したDuncan McNuttは、LinuxはデスクトップOSとして急速に成長するだろうと確信している。なぜなら、Linuxを使用すれば、4,000〜40,000台のデスクトップシステムを含むきわめて大規模なエンタープライズ環境でも、Windowsより大幅に安いコストで同等の生産性をあげることができるからだ。
Siemensは44カ国に33,000人の従業員を抱える大企業だが、McNuttによれば、同社が最初にLinuxをデスクトップOSとして評価したときには、技術部門以外ではほとんど有用性を認められなかった。「我々はデスクトップLinuxが大きな市場になるとは考えなかったが、それは間違っていた。」
しかし、フランクフルトから電話インタビューに応じたMcNuttの言葉によると、Siemensは以前から、Linuxサーバの成功に感銘を受けた顧客と、Microsoftの価格/ライセンスポリシーにうんざりした顧客の両方から、デスクトップLinuxの実用可能性を調査するようせっつかれていたということだ。
これは大きな賭けだったとMcNuttは述べている。バージョンのアップグレードのような技術的な問題のせいで生産性が1日落ちただけでも、それに10,000人かそれ以上の従業員の数を掛ければ、その影響はすぐに企業顧客のバランスシートに現れてくる。これは、CIOにとって非常にまずい事態である。つまり、ITコストの削減は多くの顧客にとって「きわめて重要」なことだが、生産性を維持することの方がもっと重要なのだ。
これが、この調査が「ITスタッフではなく秘書とマネージャ」を対象として実施された理由である。たいていの企業はWindows/MS Officeのバージョンアップグレードに2日間の時間を取るが、それと同様に、McNuttは、SuSEまたはRed Hat上で動作するXimianデスクトップ/アプリケーションスイートのトレーニングには2日間が必要と考えている。つまり、1日はデスクトップに慣れる期間で、もう1日はOpenOfficeスイートに慣れる期間である。
Ximianは、GnomeベースのLinuxデスクトップ、Evolutionメール/カレンダーアプリケーション、改良版のOpenOfficeスイート、Red Carpet管理ツールから成る統合環境だが、きわめて大規模な企業でも低コストで導入することができ、Windowsのアップグレードに比べれば混乱も少なく、先々において大幅なコスト削減になる――とMcNuttは述べている。Linuxを使用すれば、管理コストの面で20〜30%、ハードウェアコストの面で50%、ライセンス料の面で80%の節約になるそうだ。
Siemensは、特定のディストリビューションやデスクトップ環境に肩入れしているわけではない。Ximianに落ち着く前は、純粋なGnomeやKDEも評価していた。Siemensは、KDEをGnomeよりも「Windows似」であると考えたが、非技術スタッフがよりWindowsに似たものを期待するという点が問題になった。Gnome(特にXimianのバージョン)は、Windowsにあまり似ていないという印象をユーザに与えるぐらい異なっているので、そちらの方が問題が少ないと判断されたのだ。
McNuttはまた、循環的な発展とでも言うべきものを期待している。つまり、SiemensやNovellのような企業が、Ximianのようなオープンソース指向の企業(最近Novellに買収されたが)と協力してバグ退治や機能開発を行い、それを最終的にオープンソースコミュニティに還元する。その後、この大きなグループが企業の貢献をさらに改良し、デバッグを進めていく。これを繰り返せば、より便利で、洗練され、安定性が高く、企業環境で安心して使用できるコードベースがすぐにできるだろう。
McNuttによれば、Linuxはスクリプト化が容易で、Windowsよりもドキュメントが整備されているので、1,000台以上のデスクトップを抱える大規模なシステムの管理コストを削減できるそうだ。「Windowsには、GUIを使わないと操作できない機能が必ずいくつかある」と彼は述べている。さらに、Linuxではドキュメントが整備されているので、Windowsならばドキュメント不足のために非常に時間のかかるような厄介な問題でも、容易に解決することができると指摘している。McNuttは、Linuxはリモート管理に特に威力を発揮すると考えている。従業員があちこちに分散するようになると、この点が重要な意味を持ってくる。
Linuxはハードウェアコストの削減にもなる。導入時に必要なリソースが少ない上に、アプリケーションのアップグレードによる「機能肥大」が進んでも、2年後に極端にマシンが遅くなることはない。「許容可能なパフォーマンスレベルで2年間ではなく3年間マシンを実行できれば、ハードウェアコストの50%を節約したことになる」とMcNuttは述べている。
Linuxを使用すればMicrosoftに支払うライセンス料金の80%を節約できるが、大口顧客の多く(特にヨーロッパの大きな政府機関)は、ライセンス料の他にも、Microsoftから条件を突きつけられる立場にいることを不満に思っている、とMcNuttは指摘している。彼によれば、米国国防総省や、Microsoftのお膝元であるワシントン州でさえ、代替OSとしてLinuxに注目しているということだ。
「こうした政府機関のシステムは巨大なもので、デスクトップの数はしばしば30,000台ないし40,000台に及ぶ」とMcNuttは述べている。ヨーロッパの政府機関は、Microsoftの新しいライセンス体系ではアップグレードも予算の現状維持もできないということに腹を立てており、何としても、アメリカの独占状態を支持する代わりに国内のIT企業を振興させることに予算を使おうとするだろう。
McNuttによれば、ドイツのいくつかの市役所が既にLinuxデスクトップの導入を開始しており、Siemensも、近いうちにある「非常に大きな金融機関」に7,000台のLinuxデスクトップを配備することになっているそうだ。この計画が成功すれば、残りの27,000席もLinuxに移行するだろうとMcNuttは予測している。
さらにMcNuttは、不況時に経費節減のためにWindowsのアップグレードを先送りにしてきた数多くの企業が、生産性レベルを維持するためにそろそろアップグレードを余儀なくされる時期を迎えつつあると指摘している。こうした企業は、最初にデスクトップLinuxを取り入れた大企業の経験に熱い視線を注ぐことになるだろう。