LinuxをWindowsよりWindowsらしく

NovellのCTO、Alan Nugent氏はLinuxのデスクトップへの普及を推進する術を知っている。

その方法は?

Linuxをデスクトップにすればよいのだ。そうすることで、ユーザに違和感を持たせなくて済む。また、管理者も数多くのLinuxデスクトップをWindows同様に手軽に管理できるようになる。

バイヤーは大勢いて彼らはいつでも資金を投入できる状態にある。その代表が行政機関と教育機関の2大市場だ。しかし、本当に有望なのは大企業向けの市場だ。NovellはLinuxデスクトップが不可欠の存在であると確信していたからこそ、ユーザー向け、管理者向けのLinuxインターフェイスの開発で定評のあるXimianを買収したのだ。

NovellはLinuxデスクトップでもひとかどの実績があるとNugent氏は語る。技術部門ではLinuxデスクトップが標準になっている顧客(Ciscoなど)もあるとのことだ。主業務にはUnixワークステーションを使用し、社員の人事や経理にWindowsマシンを使用していた人々も、今や「Linux搭載のIntelデスクトップ」を持つようになっている。

Linuxデスクトップを試験導入していると誇らしげに語るLinux指向の企業は多いが、その実態は、テクノロジに精通した一部のユーザがテストに参加しているだけということがある。しかし、Nugent氏は、現在のビジネス状況であればLinuxデスクトップをもっと大々的に試すことができる、そして、Novellならそのような企業のLinux導入レベルを1つ上に引き上げる手伝いができると考えている。

氏の語るところによれば、NovellにはエンタープライズITに関する膨大な知識の蓄積がある。しかも、それはユーザと管理者の両方の視点からとらえたものだという。最近になってオープンソースコミュニティを取り込み、Ximianを買収するなどの動きを見せているNovellは、大企業のユーザや管理者にLinuxデスクトップを啓蒙するのに絶好のポジションにいると氏は見ているようだ。さらに、Novellの顧客は既に、少なくとも一部の部署ではWindowsと縁を切る準備ができているとのことだ。

大切なのは、テクノロジだけでなく顧客の立場から見た要件(「パーソナリティマイグレーション」など)をも考慮に入れることだ。Nugent氏はこう語る。「デスクトップマシンのカスタマイズは、一般ユーザにとってはただの四角い箱に目鼻を付けるようなものだ」と。NovellにはWindowsアップグレードの際に、この「パーソナリティ」を保存することに成功してきた実績がある。移行完了後にWindows環境から別の環境に変わったということを平均的ユーザーがすぐに気づかないようであれば、成功だと言えるだろう。

Novellがこのニーズを満たすために使用しているのが、メーラとスケジューラを兼ねたXimian Evolution、Microsoft Exchangeに対するXimian Connector、すこしばかり手を加えたOpenOfficeスイート、そして、Windowsエクスプローラに似ているファイルブラウザだ。

Nugent氏の説く仮想コンポーネントのもう1つが「管理」だ。Linux デスクトップを企業、行政機関、教育機関のそれぞれ環境に対応させ、管理と運用の便宜を図るためには、XimianのEvolutionと並んでRed Carpetが不可欠だ。これを氏は「holistic approach(全体論的アプローチ)」と呼んでいる。Novellが今後も10億ドル前後の歳入を上げることができるとするなら、Novellがユーザと管理者のニーズに関する知識に基づいて育て上げた「holism(全体論)」ブランドは、かつて悪くとらえられていた言葉の意味を考え直させることになるかもしれない。

Nugent氏は、メールとスケジューリングの機能を備えたアプリケーションの開発では、業務用アプリケーションの場合と同様、実務担当者に快適な操作環境を提供することが不可欠だと考えている。そのため、カットアンドペーストをどこでも実行できるようにすることと、ファイルシステムの一部を隠蔽することは、都合よく ハッカーに任されることとなった。さらに氏は、ベースとなるファイルがSamba、NFS、ネットワーク共有のどこに置かれているかにかかわらず「ユーザが期待したとおりに動作する」ファイルシステムブラウザが「絶対的に不可欠」であると見ている。

多少の問題はあってもLinuxへの移行の第一号になる可能性が高いのは、複数のユーザーが同じアプリケーションを使うコールセンターなどの部署だ。さらにNugent氏は、Microsoftへの不信感が根強いヨーロッパが北米より一足先にLinuxに飛びつくのではと考えている。すでにNovellは「巨大企業」におけるLinux試験導入に関与している。

Linuxデスクトップの需要が爆発間近だと見ているのはNugent氏だけではない。大企業の重役連も同じ見方をしている。Sunのソフトウェア部門副社長Jonathan Schwartz氏は、LinuxWorldでの基調講演のほとんどをMad Hatterの宣伝に費やしている。Mad Hatterとは、操作の簡単なEvolution搭載型デスクトップ(9月早々に発売予定)を提供しようというSunのプロジェクトのことだ。

デスクトップ市場での先行きがLinuxWorldで有望視されているのは、Red Hat, SuSE、Xandrosの3つだ。HPやIBMの経営陣が、デスクトップマシンへのLinuxの進出を「間近」あるいは「既に始まった」と語っているのも漏れ聞こえている。あるコメンテータによれば、Linuxデスクトップの強力な応援団は「背広族」であって「おたく」ではない。

Steve Ballmerの安眠を妨げる唯一の存在はLinuxらしい。これは本人が言っていることであり、繰り返し引用されているのでご存じの読者も多いだろう。つい最近まで、この言及はサーバーとしてのLinuxに関するものであると考えられてきたが、今では、デスクトップ(Microsoft最大の収入源にして脆弱性大)に関するものであるとの説が有力視されている。こう考えるのは(Linuxはデスクトップに使えるという)福音を説くLinux信者だけでない。

強力な資金力を備えた大企業の戦略立案者たちは、つまるところ、Linuxデスクトップがまさに望んでいたものであるかもしれないと考えているのだ。