強まるFUD活動

SCOのナンセンスな行動に伴い、アンチLinuxのFUD活動が増加している。これは、あの半独占的なプロプライエタリオペレーティングシステムのプロデューサーによって画策されたキャンペーンなのだろうか? それとも、ただのFUD好きがSCOの情勢をこれ幸いとして、日頃の恨みを晴らしているだけなのだろうか? どちらの答えを採用するにしても、その見解をNewsForgeのような公のフォーラムに投稿するときには、きわめて上品に振る舞う必要があるだろう。そうしないと、少なくともある1人の業界アナリストが、その発言を根拠に「Linuxはエンタープライズ用途にふさわしくない」と主張するおそれがあるからだ。

ある意味においては、Windowsやプロプライエタリソフトウェア陣営の人々がLinuxを目の敵にするのはやむを得ないと言える。彼らの仕事は危機に瀕しており、現在、Linuxは世界で最も勢いよく成長しているオペレーティングシステムなのである。

現在、NewsForgeは「X社がLinuxに乗り換え」といった記事をほとんど掲載していない。なぜなら、今日のITシーンでは企業がLinuxを採用することは当たり前の光景になっており、Linuxがまだほとんど普及していない業界の話でなければ、ほとんど注目に値しないからだ。

オープンソースとフリーソフトウェア全般に関して言えば、ほんのわずかでもそれをどこかに採用していない企業や政府機関はそう多くないと思われる(もっとも、ワークステーション上でviやemacsやGCCコンパイラを実行しているのは数人のコーダーだけだろうが)。

Linuxについての主な論調

「政府はLinuxがお好き(The Feds Love Linux)」は、『Forbes』のような主流のビジネス誌でよく見られるLinux支持の記事である。『Forbes』誌はその数日前に、「なぜLinux PCを使用しないか(Why You Won’t Be Getting A Linux PC)」というタイトルのガチガチのアンチLinux記事も掲載している。『Forbes』はこのところLinux関係の記事を多数掲載しているが、どちらかと言えばLinuxに対して好意的である。

最近の、SCOやMicrosoftの経営陣(あるいはその弁護士)の口から直接出たものではないアンチLinuxのFUDの中で、最も悪意に満ちていたのは、Forrester ResearchのアナリストであるRob Enderleが執筆したInternetWeek.comの6月18日付の記事、「Linuxはエンタープライズ用途に適さない(Linux Is Not Ready For the Enterprise)」である。

EnderleはLinuxの大きな問題点の1つとして、一部のLinux支援者はたびたび暴言を吐き、しばしば事実よりも「信念による」という宗教的なスタイルを取る、という点を挙げている。彼は明らかに、一部のMicrosoft擁護派がNewsForgeやSlashdotに投稿したアンチLinuxのコメントを読んだことがないのだろう。

支援者の言論の盛り上がりがオペレーティングシステムのエンタープライズ用途への適合性を判断する有効な基準になるならば、Windowsは明らかにLinux(あるいはMac OS X)よりもエンタープライズ用途に適さない。なぜなら、NewsForgeやLinux.comを読んでいる親Linux、反Microsoft派読者の総数に匹敵するぐらいのアンチLinux批評を書いているのは、Steve Ballmerただ1人だからである。

Enderleは、近日中にMicrosoftについての記事をInternetWeek.comに執筆することを約束しており、それはLinuxについての見解と同じくらい厳しいものになるだろうと述べている。おそらく彼は、あらゆるオペレーティングシステムの口うるさい支援者からの、良識的とは言いがたい声高な主張に飽き飽きしているのだろう(だから私は彼を非難しない)。

ここまでに挙げたいくつかの例の他にも、数多くのFUDが行われている。その多くはSCOと法的な問題を取り巻くもので、大部分はここ数年間ずっと言われてきた雑音と同じだが、SCOの馬鹿げた行動のせいでこのところ急に注目を集めるようになった。

しかし、1つのFUDに対して、少なくとも半ダースほどのLinux擁護記事や「○○社がオープンソースを導入/推進」といった記事が技術系雑誌、ビジネス誌、大衆誌などに掲載されている。

我々にとって重要なのは、批判的な意見の方が目立ち、関心を呼ぶということだ。我々はこうした意見について、これまでのコンピュータ人生でWindowsとプロプライエタリソフトウェアしか使ったことがない人々とは違う見方をしている。現在では、次のような考え方が出てきている。「Microsoftや他の金持ちソフトウェア企業がそんなにオープンソースとかいうものを怖がっているなら、ちょっと調べてみる必要があるな。最近、うちの会社のソフトウェア保守コストが急に膨れてきたし、アップグレードのたびに前より高くなるし、新しい高価なハードウェアが必要になってくる。オープンソースがこのいまいましいITコスト地獄を解消してくれるなら、先週の○○誌でMicrosoftのスポークスマンが何を言っていたとしても、そっちを取るところなんだが。」

昨年、「Microsoft文書: Linux批判が逆効果に(Microsoft Memo: Some Anti-Linux Messages Backfire)」のようなタイトルの記事が数多く発表されたことを思い出してほしい。

この記事から一部を引用する。

その文書は、「OSS、Linux、GPLを批判するメッセージは効果的ではない」と述べている。「Linuxの特許侵害の可能性を指摘したり、OSSの開発プロセスにおけるアカウンタビリティの欠如を非難したり、GPLの『ウィルス性』について注意を喚起したりするメッセージは、OSSやLinux、GPLに対する批判的な意見を誘導するという点ではあまり効果がなく、場合によっては逆効果になる。」

批判的なメッセージが逆効果になる具体的な例としては、TCOが挙げられる。文書によれば、「OSSとプロプライエタリソフトウェアのTCOはほとんど同じである、というOSSに対して否定的なはずのメッセージを提示されると、全回答者の約半分(49%)が、このメッセージを聞いて以前よりもOSSに好感を抱いた」ということだ。

(ここで引用されているMicrosoftの「ハロウィン」文書の全文は、ここで見ることができる。)

この「Linuxの特許侵害の可能性を指摘したり、OSSの開発プロセスにおけるアカウンタビリティの欠如を非難したり、GPLの『ウィルス性』について注意を喚起したりするメッセージ」は逆効果であるというMicrosoftの見解が、SCOの騒動よりもずっと前に書かれていたことに注目してほしい。

それでも私はLinuxを使い続ける

当初はこの記事のタイトルを、CBSの長寿ソープオペラ「As the World Turns」をもじって「As the FUD Turns」にしようと思っていた。なぜなら、FUDはLinuxが最初に人気を集め始めた頃から続いており、今後Linuxがさらに普及するにつれて、ますます激しくなると予想されるからだ。

Microsoft、ならびにSQL Server呼び出しやActive-Xコンポーネントの開発で(あるいはその他のMicrosoft固有のプログラミングツールやサーバツールを使用して)生計を立てている人々が、Linuxやその他のフリー/オープンソースソフトウェアに戦いを挑むのは当然のことだろう。それは、競争に対する自然な反応である。彼らがこの新しいスタイルのソフトウェア開発を使用するよう政府に働きかけ、彼らの契約を保持しようと努めるだろうことも予想の範囲内である。

もしも、自動車に搭載できるくらい小さくて実用的な常温核融合動力炉が明日にでも市場に投入されたとして、石油業界や、内燃エンジンメーカー、ガソリンスタンド経営者が何も言わずひっそり退場するなどということがあるだろうか?

歴史を振り返ってみると、自動車の黎明期には、自動車を規制する法律が数多くあったことがわかる。その中には、「自動車の前には必ず危険を知らせるための赤旗を持った人間を歩かせること」というものまであった(これは私のでっちあげではない)。

自動車の生産が始まった当時は、馬業界と馬車業界が強い力を持ち、お偉方とも強いつながりを持っていた。そこで、この臭くて騒々しくて馬を怖がらせる機械に対して、ロビー活動や選挙献金、そして我々が現在呼ぶところのFUDを盛んに行うことで対抗したのである。

ご存知のように、今日のアメリカの各都市で、馬が日常の交通機関として使われているケースはほとんどない。また、FUDにもかかわらず、毎月ますます多くの企業、政府機関、個人がLinuxを使用するようになっており、今日ではかつてないほどLinuxへのメディアの関心が高まっているということを指摘しておく。

Linuxは永遠。FUDなんかで駄目になったりしない。

(この一節を次のLUGミーティングのときに何度か唱えてみよう。)