NovellがNetWare 6.5でオープンソースへ──BrainShareレポート

先月、BrainShare会議でNovell社が発したメッセージは、受け取る側での評価が分かれた。同社幹部の発言と、会議でのテクニカルプレゼンテーションに対して、オープンソースアプリケーションの開発者はA評価を与えたが、Linux関係者はNovell社の約束にAを与えたものの、その約束が履行される速度にはCという評価を下した。

まず、よいニュースから紹介しよう。今年の夏に出荷が予定されている改訂版、NetWare 6.5には、次のものが同梱される。

  • Apache 2.0.45
  • MySQL 4.0.12
  • Perl 5.8
  • PHP 4.2.3
  • Tomcat 4.1.18
  • ExteNd Application Server 4.0(Novell社がSilverStream社を買収したことによる)
  • Java Virtual Machine 1.4

開発者は、既存のソースアプリケーションを問題なくNetWare 6.5に移植できるはずである。上記アプリケーションの多くは、NetWare 6で(ものによってはそれ以前のバージョンで)すでに使用されている。たとえば、Apache 1.3.26はNetWare 6に同梱されているし、NetWare 6用MySQLも昨年12月から提供されており、Novell社のWebサイトからダウンロードできる。

次に、悪い(少なくともスピード感に欠ける)ニュース。Novell社は、NetWareサービスのもとでLinuxカーネルを稼動させるというオプションを手土産に、Linuxパーティに参加するつもりでいる。ただし、それはNetWare 7でのことで、最低でも18〜24か月先のことになる。

Novell社の取締役を長く努め、昨年、取締役会副会長になったJack Messmanからは、もう少し一般的な(つまり、あまり技術的でない)発言があった。BrainShareの期間中に『Computerworld』誌の記者に対し、「Linuxは、現段階では未成熟のオペレーティングシステムだ。なにしろ、わがNovell社のようなところが取り組みを開始してまだ間がないわけだから。Novell社ならこれをもっと頑丈で、信頼性の高い、スケーラブルなものにしていける」と語ったらしい。翌日、Messmanから「失言だった」旨の謝罪文が出され、配布された。BrainShare期間中に私が出会ったほかのNovell社幹部は、口をそろえて、「頑丈で、信頼性が高く、スケーラブルなLinuxに向けて、Red Hat、United Linux、IBM、その他が努力していることは、よく理解している」と述べた。元Novell社員で、昨年、取締役会副会長として復帰したChris Stoneは、オープンソースコミュニティとLinuxワールドの内外をよく知っている。NetWareを方向転換させ、オープンソースとLinuxに向かわせようとしているNovell社幹部・開発者・技術者は、その意味するところがよくわかっており、市場についての理解も深いように見える。

Linuxサポートの詳細

失言はあったにせよ、ここ数年、Novell社がLinuxへの接近をつづけていたのは事実である。NetWareをNetWareたらしめているサービスの多く(たとえば、eDirectoryディレクトリサービス)は、Windows、Unix、Solarisのほか、Linux上でも動作する。ZENworksとGoupWiseというクライアントもLinux上ですでに動作しているか、間もなく動作する。LinuxアプリケーションのうちApache、MySQL、Perl、PHPなどはNetWare上で動作し、Novell社はLAMPの同等製品としてNAMP(NetWare Apache MySQL PHP)を売り出している。

Linux上で動作するGroupWiseの初期アルファ版のデモもあった。GroupWiseは、コラボレーションとメッセージングのバックエンドである。市場占有率ではMicrosoft社のExchangeにはるかに及ばないが、それはマーケティングの欠陥のゆえであって、技術的に劣っているからではない。Linuxベースのメッセージングとコラボレーションのシステムとして、GroupWiseは他のどれよりも認知度が高く、インストールベースも広い。

「Linux」と聞くと、ほとんどの人は「どのカーネル? どのディストリビューション?」と考える。ところが意外なことに、Novell社経営陣にはその質問は初耳だったようで、どう答えたものか戸惑っていた。「Novell社がLinuxカーネルを改良する」という趣旨のMessman発言は、Novell社が独自のLinuxカーネルを作るという意味なのかもしれない。私は「NetWare 7はRed HatやSuSE、あるいはその他のディストリビューション上で動作するのか」と尋ねてみた。返されてきた答えはさまざまだったが、よくわからないという1点で共通していた。まだNetWare 6.5の登場を待っている段階で、NetWare 7.0の詳細についてあれこれ臆測するのは時機尚早なのかもしれない。

私が知りえたかぎりでは、Linuxサポートの拡大とNetWareとの結びつき強化という方向を、顧客は歓迎している。従来のNetWareカーネルとともにLinuxカーネルがオプションとして提供されることに、Linuxファンは興奮し、NetWareファンは好感をもっている。

もちろん、NetWareカーネルを使ったほうが、Linuxカーネルを使うよりNetWare 7のパフォーマンスはよい、とNovell社幹部は言うはずである。しかし、何をどう実装するかの決定は、単に技術的メリットだけに基づくのではない。Linux陣営に深くコミットしている会社はLinuxカーネルを要求するし、NetWare陣営に深くコミットしている会社はNetWareカーネルを要求する。意思決定が宣伝で左右される会社なら、Microsoft Windows Server 2003を買うだろう。

Forge.Novell.comとNovell社のオープンソース指向

Novell社は、オープンソースの強力サポートを打ち出し、開発者を従来のNLM(NetWare Loadable Module)開発の泥沼から遠ざけることで、世界で最も非友好的な開発環境という悪評を払拭しようとしている。月曜日朝の基調講演で、新しくForge.Novell.comという開発者用サイトを開設することが発表された。開発者が集うこの新しいNovellサイトの名前は、オープンソース開発サイトSourceForge(本サイトの姉妹サイト)を思い起こさせる。もちろん、それを意図した命名だろう。

Novell社のオープンソース検討委員会議長Kris Magnussonによると、Novell社の開発者はすでに3年前からオープンソースコミュニティに接近していて、Novell社として何か寄与できることがあるか、と尋ねているそうである。Novell社としては「すぐれたNetWareアプリケーション例とすぐれたコードを提供することで、真の価値というものをオープンソースコミュニティに広めたい」と考えている。

ForgeはBrainShareの2週間前に立ち上がったが、月曜日の基調講演まで公表されなかった。私がMagnussonとChris Cooper(開発者サービスの責任者)に会ったのは水曜日である。2人とも、Forgeへの反応の大きさに興奮していた。公表後1日で、投稿されたプロジェクトは70件にのぼり、多くの人がNovell社の最初の寄与製品であるUDDI(Universal Discovery, Description, and Integration)サーバーをダウンロードした。もちろん、Novell Nsure UDDIサーバーはeDirectoryにフックするので、必ずしも額面どおりには受け取れない点もあるが、すでに10億を超えるeDirectoryシートが展開されているとの報告もあり、製品には大きな価値が認められているようである。

オープンソースNovell開発者向けのサードパーティサイトとして、3月に立ち上がったOsnamp.comがある。NetWareをオープンソース開発者コミュニティに浸透させるには、あらゆるレベルでのサードパーティサポートが必要である。

BrainShareには開発者向けの情報があふれていた。開発者向けプレゼンテーションが35、開発者向けハンズオンセッションが29もあった(これらについては、PowerPointプレゼンテーションが入手できる)。とりわけ興味深かったのは、Novell社のDeveloperNetシステムオペレータUlrich Neumannの仕事である。PostgreSQLとBashシェルをNetWare 6.5に移植した。viも現在移植中とのことである。

Novell社の社員にもオープンソースの支持者が少なくない。ApacheとPHPコードベースへのコミット権限をもっている社員も何人かいる。新しく入ってくる社員は、オープンソースや各種Linuxディストリビューションを経験していることが珍しくない。こうして、オープンソース製品を使おうという圧力は――とくに、MySQLとの商業ライセンス契約に関連して――Novell社内で日々強まっている。

Novell社は、比較的新しい経営陣に率いられた比較的小さな企業であり、顧客中心主義を約束している。そのNovell社が、4月半ばのBrainShare会議で実にさまざまなメッセージを発信した。顧客は、Linuxに対する同社の方向性が明確になったことを喜び、MySQLなど、新しいオープンソースパートナーから寄せられる熱意の大きさにも快い興奮を覚えている。

James E. Gaskinは技術と人生について本を書き、記事を書き、ジョークを書く。オープンソースの世界でのコンサルティングと執筆には、14年前、『Unix Today!』(のちの『Open Systems Today』)のコラムニストとして第1歩を踏み出した。