NovellとBanyan――歴史は繰り返す

Novellの BrainShareカンファレンスに関するニュースを読んだとき、 私は10年前にタイムスリップしたような感覚を覚えた。ただし、10年前はマサチューセッツ州ウェストボロー(かつての Banyan Systemsの本拠地)が舞台だったが、今回の舞台はそこから2000マイル離れたソルトレークシティだ。 というのも、Novellは今、BanyanのネットワークOS VINESがたどったのとまったく同じ道のりを、NetWareに歩ませようとしているのだ。 NovellはBanyanの二の舞を演じずに済むだろうか。

今からさかのぼること10年前、VINESは大企業向けネットワークソフトウェアの最高峰であった(念のため言っておくが、私はABUI(Association of Banyan Users International、Banyanとは独立した団体)のNetwork Newsの編集に携わっていたことはあるが、Banyanに雇われていたことは一度もない)。VINESは多数のサーバの中央管理を可能にし、中でもセキュリティ、メッセージング、バックアップに関しては特に強力なサービスを提供していた。さらに重要な点としては、高い拡張性を備えた、比類ない ディレクトリサービスであったStreetTalkの存在が挙げられる。

残念ながら、Novellとの一騎打ちという状況では、Banyanに勝ち目はなかった。そこでBanyanのマーケティングエリートたちは、Novellへの対抗策を考え出した。Business Week誌やFortune誌に戦略的な広告を掲載することで、ITマネージャではなく、購入意思の決定権を握る人物に直接訴えかけるという作戦だ。さらに、VINESの多くのサービスをOSから独立させ、他のプラットフォームでも利用できるようにした。これがEnterprise Network Servicesと呼ばれる製品だ。幸運なことに、私はRob Sparreによる、ENSのSCO Unixへの実装を解説したすばらしい書籍を編集する機会に恵まれた。

しかし、Banyanがこれらの作戦に望みをかけたときには、時すでに遅し、であった。1993年3月に発表されたNetWare 4.0には、StreetTalkと完全に競合する Novell Directory Services が含まれていた。最初の製品には多少の欠陥が見られたものの、ディレクトリサービスを求めていた企業にとっては文句ない代替案となった。この時点では、Microsoftの Active Directory はまだ準備段階であったが、Microsoftの製品予告があると、各企業は、ソフトウェア界の最有力企業が切ってくるカードを確認するまでは、既存の製品の導入を見送るのが常であった。Banyanはその卓越したテクノロジと、低オペレーティングコストのOSにもかかわらず、ついにこれらの競合企業に勝つことはできなかったのである。1999年、Banyanは各製品の製造を打ち切り、残されたNovellとMicrosoftが、金になるローエンド〜ミドルエンドのネットワーキング市場における覇権争いを繰り広げることになった。

NDSによって、NovellはMicrosoftに一歩リードしたかと思われた。しかし、1994年に同じユタ州のWordPerfect社を買収して、アプリケーション分野への事業拡大を図ったのが裏目に出て、自分の首を絞めることになった。NovellがサーバOSに力を注げないでいる間に、Microsoftはデスクトップで培ったOSの技術をサーバにも応用して見事成功し、Novellは現在のような危うい立場に立たされることになった。

これで、現在までの流れをざっと見てきたことになる。Novellは今後、どうやってその地位を回復していくのだろうか。そう、Business Week誌やFortune誌などの刊行物に広告を載せ、ITマネージャではなく企業の意思決定者に訴えかける。そして、他のプラットフォーム(具体的にはLinux)でも利用できるよう、サービスを切り離すのだ。

どこかで聞いた話だ。

ただし、Novellが取った対策はこれだけではないのが救いだ。2年前には、 Cambridge Technology Partnersを買収 して、強力なサービス部門をそのビジネスに加えた。うまくやれば、サービスは確実に金になる。サービスの提供で利益をあげようと考える再販業者を通じて製品を販売していたBanyanは、サービス面では力がなかった。

現在の状況が1993年当時と異なるのは、オープンソース・コミュニティが登場していることだ。Novellは、自分たちのソフトウェアをオープンにする代わりに、給与を払うことなく、プログラムを書いてもらうことができる。これは大きなメリットだ。しかし、オープンソース・コミュニティがNovell製品に魅力を感じるかどうかは、まだこれからの話だ。

Novellは生き残れるだろうか。そう願いたい気持ちはあるが、冷静に考えてみるとなんとも言えない。NovellはTCOの面で他社よりも優れていることを証明できなくてはならないし、現在のMicrosoftユーザたちが、感情面でMicrosoftへの反発を起こしてくれることも必要だ。これがない限り、顧客となる企業は、たとえ他によりよい選択肢があろうとも、わざわざ乗り換えたりせず、単にアップグレードする方を選ぶだろうからだ。