Linux周辺の動向を追う――リサーチ結果から

Sunが日に日にその勢いを失っていく一方、Red HatはGartnerやIlluminataから高い評価を受けている。しかしSun叩きの只中でも、Aberdeenのベンチマークでは、Sunは拡張性とTCOの面で、少なくともDellには勝っているという、せめてもの救いとなる結果が報告されている。そんな中Yankee Groupは、NT 4.0システムからの乗り換えに直面する企業それぞれに対して現実的なアドバイスを与えており、Gartnerは、オープンソースが企業の最適なソリューションとして選ばれるのに一役買っているようだ。
Red HatがMidrange Magicで快挙

多くのベンダは、他のどんなアナリストからの評価よりも、 Gartner のMagic Quadrant調査で受ける評価に一喜一憂している。それを考えれば、最近のMidrange Server Magic Quadrantにおいて、x86版のRed Hat ASが名誉ある「Challenger」の評価を受けたというのは、相当の快挙と言えるだろう。

Gartnerの副社長である George WeissAndy Butler は、Midrange Server Magic Quadrantで2年間使われていた、ジェネリックな「Linux」という評価対象を廃止し、3つの特定のLinuxサーバを新しくエントリさせた。さらに2人は、Red Hat ASの高評価に加えて、IBMのzSeriesに搭載されたLinuxと、x86版SuSEに対しても、まずますの評価を与えたのだ。

Magic Quadrantの調査はいずれも、業界ごとの仮定や条件、順位値を使って、プロプライエタリ モデルを基に行われる。 これには、中規模サーバが担う役割(伝統的なものではビジネスアプリケーション用およびデータベース用サーバとしての機能、そして最近のものではEコマースサーバ、Webサーバ、中間層のアプリケーションサーバとしての機能)を実現する上でのサーバ/ベンダの適応性が反映される。世界中の中〜大規模企業のIT部門では、その先半年の購入決定プロセスの一部としてこのレポートを活用している。前述の3つのLinuxサーバは、同じくGartnerのIntel Server Magic Quadrantにおいても評価の対象となっている。

このMidrange Magic Quadrant調査の結果は、 PDF形式HTML形式 で無料で入手することができる。

干された?Sun

Sunは、業界アナリストからもオープンソースコミュニティからも微妙な位置に身を置いている。たとえば、先ほど紹介したGartnerの副社長WeissとButlerは、Sunの行き詰まった、はっきりしないLinux戦略を批判してはばからない。この点は、Midrange Magic Quadrantの結果にも反映された。彼らはSunのx86ベースのサーバ(Linux版とプロプライエタリOS版の両方)に対し、HPのTru64 UNIXと並ぶ、お世辞にも良いとは言えない評価を下した。IBMとHPが順位を上げ、Red Hatが輝かしい初登場を飾った一方で、ひときわ厳しい評価となった。

Sunは、次に発表するLinux戦略で、チャンネル・パートナーや顧客の間に招いた混乱も解決できるはずだと主張しているが、そんなことはどのベンダにもできない離れ業と言わざるを得ない。SunはOrionとN1に市場の注目を集めておいて、そのすきに新しいLinux戦略とやらのプレビューと、おそらくいくつかの業界アナリストとの間でのメッセージ・テストに力を注いでいたのだ。その証拠に、 Aberdeen Group がまとめた、Sunの最近のアナリスト・カンファレンスの 概要 (閲覧には登録が必要)を見てほしい。内容がほとんどないことがわかる。

Sun SPARC/Solarisのアーキテクチャは、Dell/Linuxアーキテクチャに勝る

アナリストによる調査のすべてが、Sunにとって悪いニュースなわけではない。無料で公開されている Aberdeen Group のベンチマーク レポート では、Sunは、TCOの面では、Intel、Dell、Linuxよりも優れた提案を行っていると評価されている。Aberdeenは、Oracle 9i RACを実装したSunのV480 SPARC/Solarisアーキテクチャと、Linuxを搭載し、やはりOracle 9i RACを実装したDellのPowerEdge 6650 XeonというMPベースのサーバと比較した。Aberdeenは、既存のOracleデータベースを利用して、3層アプリケーションを拡張しようと考えている中〜大規模アーキテクチャの典型的な構成としてこれらの実装を選択した。

ベンチマークの結果は次のようになっている。
  • ライセンスの初期コストは、Dell/Linuxの方が安い。
  • アプリケーションの拡張が必要になった場合には、PowerEdge 6650ならば何百台も導入しなければならないところを、4つ以上のプロセッサを搭載したSunのサーバなら数台で済むため、ライセンスのコストにおける優位性は、同じか、むしろSunのほうが上になる。
  • Sunの優れたサポート・サービスと、3つ(Dell、Oracle、Linux)ではなく2つ(SunとOracle)のベンダと契約すれば済むという点を考慮すると、管理コストはすべての場合においてSunのほうが低く済む。
  • Dell/Linuxアーキテクチャは一定の規模までしかスケールアウトできないが、SunのSPARC/Solarisアーキテクチャでは、それ以上の拡張が可能である。
以上の点からAberdeenが出した結論は、アプリケーションの規模が大きくなるほど、コストと拡張性の面でSunがより大きくリードする、というものであった。

ペンギン同士の対決

Illuminata は、「洗練されたITインフラへの要求と、それにLinuxがいかにして応えられるかに容赦なく焦点を当て」て、最も広く採用されているエンタープライズ向けLinuxディストリビューションとしてRed HatとSuSEを選出した。シニア・アナリスト Gordon Haff による最近の 報告 では、Red HatとSuSEは「オープンソースと商用UNIX両方の長所を顧客に提供することに成功している。また、この二社間に競争が存在することが、両者とも公正であることにつながっている」という評価を受けている。

Linuxの進む道

1月以来 IDC は、日本におけるサーバの採用率やSCO裁判の波紋など、Linux市場の動向に関する10以上のレポートを発表した。中でもおもしろい レポート は、ISVのアプリケーションがLinuxに対応することの影響に関するものだ。Linuxの短い歴史の中で、2002年は重要な年となったようだ。

「Linuxサーバは企業コンピューティングの中で新しい役目を担いつつある。すでに確立されたWeb中心のワークロードから離れ、アプリケーションおよびデータベースの提供というワークロードへ移行している」と指摘するのは、IDCのGlobal Enterprise Server Solutionsグループのリサーチ担当副社長 Jean S. Bozmanである。 「この動きは、ISVが、以前はUNIXサーバかWindowsサーバでしか動作しなかったアプリケーションのLinuxへの対応を進めていることによって起きている。Linuxサーバは、技術・商業コンピューティング向けクラスタ構成の「スケールアウト」と、より大規模なシングル・システム・イメージのデータベース向け構成の「スケールアップ」の両面で今後も進化し続けるとIDCは予想している。」

Yankeeによるユーザの区分

MicrosoftがNT 4.0のサポートを2004年まで延長すると発表したことを受けて、 Yankee Group は、無料で閲覧できる 勧告書 を通じて、Linuxのベンダとユーザに冷静なアドバイスを与えている。 Yankeeは、まだNT 4.0を販売しているコンピュータ店に、この猶予を逃さずに売り切るよう勧めている。Yankeeの予測では、これはWindows Server 2003のライセンス契約や価格の改善への圧力となり、代替となるLinuxやUNIX、Novell NetWareなどのサーバOSとの価格競争も生むことになるのだ。

一方、Linuxベンダに対しては、NT 4.0からの乗り換え時期が延びたことを利用して、企業の意思決定を担当している人々が、Microsoft製品とLinuxを簡単に比較できるようにすることを勧めている。たとえば、現在の顧客と、将来的に顧客となる可能性のある企業や個人に対し、サービスやサポートの詳細を伝えたり、Windowsとの明確な比較結果を提示したりすることだ。Yankeeはさらに、クロスプラットフォームな技術サポートと、統合ガイドラインも提供するよう提案している。

ITベスト・プラクティスの最新情報

Gartnerは、オープンソースを実装しているIT企業向けの最適なフレームワークを2種類提供している。1つはオープンソースアプリケーションを対象にしたもので、もう1つはOSを対象にしたものだ。これらは PDF形式または HTML形式 で、無料で入手できる。考え方は簡単だ。伝統的な選択基準と実装を微調整して、Linuxとオープンソースの統合によって得られるメリットを浮き彫りにするのだ。この単純なフレームワークは、本質的にFUD(不安、不確実、嘘)に基づいた「プロプライエタリ対オープン」の論争から中立化するのに役立つ。

データベースの意識調査

Martin N. Bramptonの “Devil’s Advocate” の読者に対して著者自身が行った、オープンソースのデータベースに対する考えを問う非公式アンケートでは、期待どおりの結果が出た。現在までのアンケート結果について、Bramptonは電子メールでこのようにコメントしている。「オープンソースのDBソフトウェアを使うユーザは、Web指向が非常に強いユーザだ。おそらく、Linuxがその一般的な使用において最も得意としているのがWebの領域だからだろう。Webの領域では、他のオープンソースソフトウェアを使用したり、少なくとも興味を持っていたりする確率が非常に高い。」さらに、「興味があるという回答のほとんどは、具体的にはMySQLを指していると考えられる。さらには、PHP、MySQL、Linuxという一般的な組み合わせが一番多いだろう。」と述べている。

このアンケートに投票したい、または結果を見たいという場合には、Bramptonの Black Sheep Research サイトを訪れてほしい。また、SourceForgeにおけるオープンソース・データベースのプロジェクトについては Database Foundry を参照してほしい。