デスクトップでLinuxは使えない?

「Linuxはまだ、デスクトップで利用できる状態にはない」――このような内容の 記事 を、ほとんど毎月のように目にするのにはうんざりする。まったくナンセンスだ。LinuxはデスクトップでもWindowsと同じくらい問題なく利用できる。Linuxがデスクトップ市場で日の目を見ないのは、単に企業やユーザが変化を望まないからである。

デスクトップLinuxの市場は2つに分類することができる。1つは個人ユーザ向けだ(本稿では個人ではなく、企業での利用に絞って話を進める)。Linuxを個人で使う場合も、OSの選択の基準は企業で利用する場合とほとんど同じだ。ただし、個人ユーザの場合、それらはすべて自分で判断することができる(あるいは判断しなければならない)。したがって、LinuxやWindows、あるいはMacOSなど、自分のニーズに最も合うものを選択すればよい。

もう1つは企業向けである。こちらの場合、選択の基準には名の知れたOSであること、つまり信頼性と安全性に優れ、既存データ/デバイスとの互換性を維持し、業務に必要なアプリケーションを幅広く利用できるかどうかが判断される。

Linuxがデスクトップ市場で優位に立つためには、これらの基準で他のOSに並ぶか、もしくはそれ以上でなければならない。実際、Linuxはそれをクリアしている。まず、Linuxなら、Windows XP程度の信頼性や安全性は最低でも持ち合わせているはずだ。互換性はどうだろうか。MicrosoftのOSどうしで移行するなら、既存データや周辺装置をそのまま利用できるかもしれない。だが、既存のクライアントマシンをそのまま利用してOSを移行するとなるとLinuxがやや優勢だ。Windows 98や2000 ProfessionalからXPへとアップグレードするために、PCをまるごと1台買い換えなければならないこともあるからだ。

決め手となるのは、最後の「利用できるアプリケーションの種類」だ。オープンソース・アプリケーションの種類は次第に増えてきてはいるものの、その数はまだWindowsに及ばない。しかし、特定の目的のために作成するプログラムについて考えれば、より重要なことが見えてくる。Visual Basic for Applicationsの豊富な機能を利用してマクロを作成したとしよう。簡単なものならOpenOfficeでも利用できるだろうが、業務で幅広く使うために作り込んでしまうと、おそらくWindowsでしか利用できないだろう。高水準言語で開発したアプリケーションも同じことだ。これらのプログラムをWindows以外のOSで実行しようにも、ソースコードをコンパイルし直しただけではまず不可能である。

あるいは、サーバベースのネットワーク管理フレームワークのクライアントに、デスクトップLinux用の優れた製品がないことが、大企業でLinuxが一斉に導入されるケースが少ない主な理由かもしれない。大企業ではかなりの数のクライアントを管理しなければならず、運用コストも継続的に管理される。これにはLANDesk SoftwareのLANDesk Management Suite、VeritasのDesktop Management Suite、NovellのZENworks for Desktops、Computer AssociatesのUnicenter、Tivoli、NovadigmのRadia Management Suiteなどのアプリケーションが不可欠だ。これらの製品では、ハードウェア/ソフトウェア一覧の参照、ソフトウェア配布、リモート操作、デスクトップ・ポリシーの管理といった機能を必ず利用することができる。

だが、これが間違いであることはすぐにわかった。『Network World Fusion』で紹介されている Buyer’s Guide によれば、Unicenter、LANDesk、Radiaなどの主要な製品では、Linuxがクライアントで既にサポートされていたのだ。ということはおそらく、他の製品でも近くサポートされるはずだ。

企業がOSを切り替える際、ユーザやシステム管理者のトレーニングなど、多くの準備や手間が必要であることは間違いない。これらのコストも必ず選択の基準に加える必要がある。しかし、だからと言ってLinuxがデスクトップOSに適さない理由にはならないはずだ。

もちろん、デスクトップでLinuxが利用できることと、ユーザがLinuxを利用できることとは別の話である。使い慣れたコンピュータのOSを変えるというのだから、抵抗があって当たり前だ。しかし、ビジネス要件の変化に伴い、新しいシステムが次々と市場に送り出されている。やがてニーズに合った新しいOSがクライアントに必要になれば、社員もそれに従わざるを得ないはずだ。移行をスムーズに行うには、部署ごとに段階的に切り替えていくのが一番だ。コンピュータの知識が豊富な部署からスタートし、そこでの経験を参考にしながら次の部署に進めばよい。また、すべてのWindows PCを一度に取り払ってしまうのは危険だ。各部署で1台か2台くらいは残しておくべきだろう。たとえもう公式にはサポートしないにせよ、Windowsが本当に必要となることもあるだろう。

ネットワーク管理者がデスクトップOSの変更を検討するなら、その選択肢には当然Linuxが含まれるはずだ。実際に統計を見たわけではないが(見かけたらお知らせいただきたい)、Windows 98のクライアントからWindows XPへのアップグレードが、Linuxへの移行と変わらないくらい大変だと聞いても決して驚かないだろう。Linuxは導入費用が安く、維持コストも低く抑えることができる。これを避ける理由がどこにあるだろうか。