有効性と安全性の高いsiRNA設計ソフトウェア「siDirectPlus」提供開始

株式会社レトリバ(本社:東京都新宿区、代表取締役 田口琢也)は、かねてよりAI技術をバイオ領域で活用してきました。高速塩基配列検索ソフトウェア 「GGGenome(ゲゲゲノム)※1パッケージ版」 は核酸医薬品の安全性評価において信頼と実績もっています。 この度、これまで培った基礎技術を生かして、核酸医薬品として有効性の高いsiRNA設計と安全性評価を一気通貫でできるツール「siDirectPlus」(siDirectパッケージ版)の提供を開始いたします。

(※1)GGGenomeは大学共同利用機関法人情報・システム研究機構の登録商標です。

背景

核酸医薬品は、これまで治療法のなかった難病やがんのようなアンメットメディカルニーズに対応できる医薬品として期待されています。核酸医薬品の1つであるsiRNA医薬品は、標的遺伝子の発現を抑制することにより、薬効を発揮する医薬品です。既に承認されたsiRNA医薬品は、これまで、患者様が選択できる根本的な治療がなかった、遺伝子の変異が原因である「トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー」や「急性肝性ポルフィリン症」などの治療に用いられています。今後はがんの治療にも積極的に用いられ、siRNA医薬品が増えてていくことが予想されています。

<siRNA医薬品の効果が期待される分野>
遺伝性の指定難病、希少疾患
がん
ウィルス性疾患
生活習慣病など

siRNA医薬品を開発する上での課題の1つとして、有効性と安全性を両立するsiRNAの設計があります。「siDirectPlus」(siDirectパッケージ版)はこの課題の解決に貢献するツールとなります。

siRNAとは

siRNA(short interfering RNA)は、標的遺伝子のmRNAを分解に導き、発現を抑制します。このプロセスにより、そのmRNAから作られるはずのタンパク質が生成されなくなります。この現象はウイルス感染などに対する生体防御機構の一環として進化してきたと考えられています。

その機能は、特定の遺伝子の機能の研究や、病気の治療において非常に重要な役割を持っています。例えば、癌のような病気で悪影響を及ぼす特定の遺伝子の発現を抑制することにより、その病気の進行を遅らせたり治療することができます。また、科学者はsiRNAを使って、特定の遺伝子の機能を研究し、その遺伝子が体内でどのような役割を果たしているかを理解することができます。

siDirect:有効性と安全性の高いsiRNA設計ツール

siDirect※2は2004年に発表された、無償で使用できるWebアプリケーションです。東京大学程准教授らの提唱したアルゴリズムを用いており、それまでは安定して効果を出すことが難しかったsiRNAの設計を、誰もが簡単に行うことができます。siDirectを用いて設計したsiRNAのうち98%が、標的遺伝子のmRNA量を33%以下に抑制することができます。

設計したsiRNAが標的遺伝子以外の遺伝子の発現を抑制してしまい、意図しない副作用が発現してしまうことを「オフターゲット効果」と呼びます。オフターゲット効果を低くする方法として、程准教授らは、siRNAのシード領域における融解温度が高いと、オフターゲット効果が強くなることを確認しています。「siDirect」ではシード領域の融解温度を考慮したsiRNAを設計することができます。さらに、標的となる配列と類似した配列をもつ遺伝子を、ライフサイエンス統合データベースセンター内藤特任助教らが開発したGGGenomeをバックエンドに用いて抽出し、特異的な配列を標的として選択することができます。

siDirectはこれらの機能により、遺伝子の機能解析といった基礎研究や、核酸医薬品開発のスクリーニングから安全性評価まで広く用いられ、20年という長い期間にわたって信頼と実績を得ています。

(※2)siDirectは株式会社RNAiの登録商標です。siDirect 2.1:siDirect (rnai.jp)

siDirectパッケージ版「siDirectPlus」の特徴

■ siDirectPlus LP:https://sidirectplus.retrieva.jp/

今回弊社よりリリースしたのは、無償で利用できるウェブ版siDirectを、オフラインで使用できるようにしたパッケージ版製品「siDirectPlus」になります。 核酸医薬品を開発する製薬企業などでは、標的遺伝子の情報や設計したsiRNAの情報について、インターネット上に情報が流れることは避けたいという課題がありました。パッケージ版はUSB(SSD)で提供され、オフラインでsiDirectを使用することが可能なため、それらの情報を秘匿化することができます。さらに、核酸医薬品の開発の上で利点となる、下記の機能を実装しています。

1.オフターゲット候補遺伝子の検索条件を広げるため、GGGenomeパッケージ版と連携させました。ウェブ版では3塩基までのミスマッチ(不一致)をもつ遺伝子をオフターゲット候補遺伝子として確認することができますが、対象となるデータベースが限定されており、ヒト、マウス、ラット以外の生物種のオフターゲット候補遺伝子を検索することができません。また、ミスマッチの数をもっと多くしたいなどのニーズにもこたえられません。設計したsiRNAの評価をするためにはこれらの課題を解決する必要があったため、パッケージ版ではGGGenomeパッケージ版での検索結果と連携することにより、これらのニーズに応えています。
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2.設計したsiRNAやオフターゲット候補遺伝子の一覧をEXCELのような普段利用するソフトでも扱いやすくするため、tsv形式でファイルに出力できるようにしています。
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3.オフターゲット候補遺伝子とヒットポジション(オフターゲット候補遺伝子上のsiRNAと一致する配列の位置)を表示することにより、遺伝子のどのような領域に作用する可能性があるのかを推察することができます。
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ウェブ版とパッケージ版の違いをまとめると下記の通りになります。
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・Accession Noからの配列入力の際の外部接続警告:オンラインに情報が流れるタイミングで警告を出し、ユーザーが認識することができます。
・siRNAリストの出力:2.を参照。
・類似配列検索エンジンのローカル化:GGGenomeパッケージ版を用いたオフラインでの検索ができます。
・特異性確認の検索対象:GGGenomeパッケージ版に同梱されるデータベースに限定されます。
・オフターゲット候補遺伝子検索条件:1.を参照
・オフターゲット候補遺伝子検索対象:1.を参照。
・オフターゲット候補遺伝子リストの情報:3.を参照
・オフターゲット候補遺伝子リストの出力:2.を参照

さいごに

核酸医薬品の研究開発には膨大な期間とコストが必要とされます。その要因の一つとして、ソフトウェアを用いて設計した医薬品が、のちの動物実験や臨床試験において有効性や安全性が確認できず、再び医薬品の設計プロセスに戻ってしまうことが挙げられます。「siDirectPlus」は有効性と安全性の高いsiRNA設計を効率的に行うことができるため、このような課題の解決に寄与し、製薬企業が医薬品の研究開発にかける期間とコストの削減が期待できます。
医薬品の研究開発にかける期間とコストの削減により、動物実験の回数を減らせるため実験動物の犠牲が少なくなり、さらに現在治療法のない患者様が一日も早く新しい治療を受けられるようになります。レトリバは「siDirectPlus」の販売を通じて、このような課題の解決に寄与できることを願っております。

株式会社レトリバについて

私たちは「ことばを、知識に。」をビジョンに、自然言語処理、機械学習、深層学習をコアテクノロジーとした検索・分類・抽出を行うソリューションを提供しております。
所在地:東京都新宿区西新宿2-1-1 新宿三井ビル32階 代表者:代表取締役CEO 田口琢也 事業内容:自然言語処理及び機械学習を用いたソフトウェアの研究・開発・販売・導入およびサポート コーポレートサイトURL:https://retrieva.jp

リリース詳細
提供元: PR TIMES