ORCAを褒めた褒めないとばかり言われているので、少しまとめておこう。日本政府、というか経済産業省のオープンソースに対するスタンスは、「オープンソースを使うことは良いことである。ソフトウェアには選択肢がなければいけない。」というぐらいだと思う。(表向きには)オープンソースを優遇することはしないが、競争原理が働くような状態でなければいけない。そのためにはオープンソース促進はよいことであり、その環境整備を進める、ということだろう。で、このスタンスに関しては、私はこれでよいと思う。過度な支援を受けてゲタをはいたとしてもそれは真の発展ではないだろう。
各論的なことに目を移せば、最近では日中韓連携というものもあるが、これも大枠では良いことだと思う。こまかなところで気になる部分はけっこうあるのだが、一般への影響を考えればこのレベルでオープンソースと言ってくれることは非常にありがたい。また、オープンソースというよりもLinuxで国家基幹産業を支える企業を作り上げるということや、ナショナルセキュリティ上の問題に行きたがる中国をグローバルな舞台に乗せるという意味もある。
で、他の施策といえば、IPAを通じた事業になるのだが、これらに関しては全くダメということではないが、個人的にはこれで本当にいいのだろうか?という疑問符がつくことは確かだ。そもそも経済産業省の自由競争促進というスタンス的には、直接プロジェクトに金を投下するやり方は一見不自然に思えるし、民間企業の開発プロジェクトは市場原理の中で行われるのが普通だろう。また、国の支援を受けるということが常態化することで、将来的に企業基盤が弱体化するのでは?という漠然とした不安が個人的にはある。
もちろん、民間企業向けの開発事業一つ一つは審査をくぐり抜けて採択されたものであり、結果も出しているのだろう。個々のプロジェクトは審査に通ってその通りに開発しているだけなので全く悪いところはないわけだが、評価の仕組みが十分ではないという問題もある。プロジェクトが終了後に残った開発コードはどうなってしまったのかということは、どうもイマイチ分からない。オープンソースにするのなら金の投下が終わった後のコードの保守の問題もあるのだが、これは現在の仕組みではカバーされることはない。基本的には、開発プロジェクトの初期段階のコストの一部を支援するという発想なのでこのような問題はしょうがないのだが、オープンソースを前提とするプロジェクトには少々無理があるように思える。
まあ、オープンソースソフトウェアを開発することでお金をもらえるということは有難いわけであり、また発展にマイナスになっているわけではないのであまり強くは不満ではないわけだが、何となく上記のようなことを考えつつ他のやり方はないのだろうかということをたまに考える。それがMatz氏へのメールでも書いた「開発ではなくクローズドな仕組みなりシステムなりの仕様、規格を公開して、OSSでもクローズドでも実装を自由に作れるような環境を推進する方が経産には期待する」ということだ。何らかのベンダーもしくはシステムにロックインされている仕組みの仕様を公開することで、新しい実装の開発を誘発し競争を促進することは、オープンソースの振興にも繋がると思う。趣味的開発者がこのような形態のプロジェクトに積極的に関わることは少ないと思われるので企業連合に近いかもしれないが、これはバザール的開発の促進にもなるのではないだろうか?
このような話は経済産業省の久米さんにも話したし、幾つかの場所でも話しているのだが、私にはここから先の具体論がどうもない。具体的に「何を」というのが見つかればいいのだが、そもそも発想が既存の仕組みへの漠然とした不安からきているのでなかなか考えつかない。まあ、これは今後の宿題ということにしよう。
ちなみに、未踏プロジェクトについては、開発者個人に金をつける画期的な仕組みだと思う。注文があるとすれば、OSSの割合がもっと高くていいんじゃないか?というぐらいなものだ。
まとめる、と言ったわりにはダラダラと書いてしまった。睡眠をとって頭をすっきりしたほうがよさそうだ。