摩訶不思議なターボリナックスのMSCB

先週、唐突に発表された ターボリナックスのMSCB発行。発表された時も頭をひねったが、今でも実によく分からないことばかりである。

ライブドアショック以来、ニッポン放送買収騒動時に発行したMSCBについてはいろいろ言われてきたわけだが、それを踏まえてか、日本証券業協会からそのターボのMSCB発行のIR発表と同日にMSCBに関する証券会社の自主ルールを策定するということがあった。MSCBに関しては転換価額の修正を狙った 空売りで既存株主を食い物にする傾向が目立っていたわけで、業界自主ルールをそれを押さえる役割を果たすものと思われる。で、今回のMSCBの流れ的には、この自主ルールの規制が開始される前の駆け込みのような形となっている。しかも、割当予定先は日興シティグループ証券。

ということで時期的にも実に微妙なタイミングでMSCBを発表したものだが、資金調達方法としてMSCBという方法が全くダメというわけではない。ということで、内容を見ていくと、社債総額は10億円、1口5000万円ということで20口の新株予約権になる。MSCBなので当然利子はないので、転換するのが前提。 当初の転換価額は、3月1日の株価終値に1.05を掛けたものとされているが、144,500円という下限があり、今のところMSCB発表を受けて既に 13万円台にまで下落しているので、144,500円に設定される可能性が高い。

で、お行儀が悪いMSCBの一般的な条件は転換価額修正の頻度が高く、下限が低く設定され、転換価額の算定に用いる期間が短いというものであるが、第一回目の修正は3月30日に行われ、それ以降は毎月第三金曜日となる。 つまり一ヶ月に一度の修正である。算定期間については、その修正日の直前5連続取引日となり、この5日間の終値の平均値の92%の価格に転換価格が修正される。転換価額の下限については、当初設定価格の50%である。これだけの条件をみると、なかなかスリリングな3点の条件が揃っており、信用取引が可能なターボ株なら空売り爆弾を受けそうに感じてしまう。仮に今の価格をもとに 144,500円で当初の転換価格が設定されたとすれば、下限は72,250円となり、この条件下で転換されたとすれば、発行株式に対して15%ほどの比率になり、なかなか大きなインパクトとなる。 一応、pdfの最後にこのMSCBには譲渡制限がある旨と日興シティが借株をしないという旨が書かれているが、はてさて、今後どうなることだろう。

それにしてもよく分からないのが、何でわざわざこの微妙な時期にMSCBなのだろうか?wizpy事業のためとか書いてあるが、そもそもあれにそんなに多額の在庫、部材がかかるとは思えないし、手持ちのキャッシュで何とかなりそうな ものである。キャッシュが必要にしても、単なる社債もあるし、今なら低金利で融資を受けても別に構わないだろう(というか普通は融資じゃないだろうか)。何故、株主から吸い上げるような手法を取るのか、いまいち理由がつかめない。

つい先日の2月8日にはターボの売却プロセス開始という、買い手がまだいないのに発表された謎のIRがあったが、発表のタイミング的にはこれとの関連性も気になってしまう。売却を考えるなら、やはりターボの高い株価はネックになるわけで、今の経営陣はわざわざ株価を下げたいのかなとか勘ぐるところもある。買収先からすれば、大きな損失を出している会社なのに純資産額と比べて異常に高い株価の企業を買うのはリスクがありすぎるが、手持ちのキャッシュと株価抑制ということで買い手を探したいのだろうかとか思ってしまうのである。まあ、それは勘ぐりすぎだろうか。あるいは、MBOのための布石?それならもっと大きくないといけない気がするのだが…。さすがに素人にはよく分からない。

(注意:ここに書いている内容は個人的な見解であって、しかも私は株式の世界では単なる素人さんです。)