MIAU(Movements for Internet Active Users)と言う組織を立ち上げることになった。広い意味でのネットユーザの意見を、フォーマルな場で代弁することを目指す、言ってみれば「圧力団体」である。音を優先したやや無理のあるアクロニムだが見逃して欲しい。それはともかく、明日の11時から、新宿の映画専門大学院大学の一室を借りて記者会見を行う(詳細はこちら)。立ち上げたはいいが初手から閑散としていると寂しいので、急な話でしかも平日の朝という厳しい時間帯ではあるが、ご都合が許すならばメールでお申し込みの上お越し頂けるとありがたい。私の珍しいスーツ姿も見られます。ズボン入るかしら。
昔から個人的にこういう組織があったらいいのになあとは思っていたのだが、どうも同じように感じていた人は多かったようで、一度はずみがついたらあれよあれよという間に話が進んでいって少々びっくりしている。立ち上げの背景については、発起人の一人でもある津田大介氏のインタビューや、普段は(MSの手先の一味なので)会えば殴り合いの喧嘩になる(嘘)Atsushi Eno氏の日記エントリ等も読んでみてほしい。
肝心の活動内容だが、当面は著作権法等の改正をにらんで各省庁が出す意見募集をこまめにフォローし、パブリックコメントを書いて提出、公表するのが中心となるだろう。また、こうした問題を考える上で有益な情報を蓄積、公開し、議論や判断の糧として皆さんに供したいとも考えている。最終的には、政府の審議会等の公式な場において、私たちにもきちんと言うべきことを言う機会が与えられるようになることを目指す。方向性や主たる関心事は若干違うが、EFFやCPSRを一つのモデルとしている。もし趣旨に賛同して下さるならば、どんな形でも良いのでぜひ皆さんのお力添えをお願いしたい。よろしくお願いします。
さて、私も一応発起人ではあるが、以下はMIAUではなく私の個人的な意見として読んで頂きたい。
最近の動向を鑑みるに、ダウンロード違法化や著作権の保護期間延長など、個々の問題の是非もさることながら、そもそも法律やルールの策定過程において、私たちユーザの意見があまりにも軽視されているように思われてならない。確かに、利害関係者全員の意に沿う結論を導くのは困難、あるいは不可能だ。しかし現状は、私たちユーザが意見を述べる場が(往々にして形式的にすら)無いのに、当事者の一方に過ぎない権利団体の声ばかり大きく、私たちの利便性を犠牲に彼らの利害のみを優先した意見がゴリ押しされつつあるように思われる。しかも彼らの主張の多くは、本来彼らが代弁すべき人々、すなわち本当にコンテンツを生み出しているクリエイター(私はあえてハッカーと呼びたい)の利益に必ずしも叶うものではない、というのが私の理解だ。こうした一方的な状況を打破し、双方できちんとした論戦が成立するようなバランスを回復したい、というのが、私がこの団体にコミットする主な動機である。
「圧力団体」というとなんだか物騒に聞こえると思う(ちなみに圧力団体だと思っているのは私だけで、MIAUの総意ではない)。しかし私は、自分が大切にしているものに関しては言うべきことをきちんと言うべきだと考える。また、あえて言えば、ブログや2ちゃんねるやスラッシュドットに書くだけでは、局地戦には勝てても大きな流れを変えることはできない、とも思っている。何かを実現するためには、遠くから一人で叫んでいるだけではダメだ。ある程度まとまって、極力相手の土俵に乗った上で戦わなければならない。自分が言いたいことを言う。相手も言いたいことを言う。フェアな場で実質的な議論のキャッチボールを積み重ね、できるだけ双方の利益が大きくなるところで折り合えるようにしたい、というのが私の希望だ。私がGPLv3の改訂に関わって学んだのは、フェアに議論が交わせる場を用意し、皆が言いたいことを自由に言い、そして他人の言うことにきちんと耳を傾ければ、最終的には事前に思ったよりもはるかに良いものができるということである。それを、例えば著作権法の改正で再現したいのだ。
「インターネット先進ユーザーの会」とはずいぶん大きく出やがったなと思う方も多いだろう。お前らなんかに代弁されたくないという方もいて当然だ。例えば、私はデジタル音楽についてはそれなりに熱心なユーザだが、Winnyやニコニコ動画についてはほとんど知るところが無い。だから、そういうものを日常的に楽しみ、大事に思う人がいれば、そういう人にこそ声を上げてもらいたい。個人的には、私たちの動きが呼び水となり、皆さんが、自分が享受し楽しんでいるもの、そうした価値を守るべく、自分からどんどん声を上げてくれるようになるだけでも、設立した甲斐は充分にあると思っている。私たちへの批判も大歓迎だし、別の団体を作って活動しても良い。便利で楽しくてクールなものを、自由に享受して、何が悪いのだ? その一点で、できるだけ多くの皆さんと協力していければと願っている。