オフラインでWikipediaを読める電子コンテンツリーダー「Kiwix」――SourceForgeが選ぶ今月のプロジェクト

 米SourceForgeでは毎月1つのプロジェクトを投票で選び、「Project of the Month(今月のプロジェクト)」の栄冠を与えている。2013年2月に選ばれたプロジェクトは、独自形式のアーカイブとして保存したWikipediaなどのオンラインコンテンツをオフラインで閲覧できるツール「Kiwix」だ。以下では、Kiwix開発者に対するインタビューの模様をお伝えする。

 ――2013年2月の「今月のプロジェクト」に輝いたのは、オフラインで読めるWikipediaリーダーKiwixだ。今回はKiwixの開発者である、Emmanuel Engelhart氏にインタビューすることができた。

 ――「今月のプロジェクト」の受賞、おめでとう。

 Emannuel:ありがとう。Kiwix開発ツールのホスティングや、フリーソフトウェアのプロモーションをしてくれていることについても感謝しているよ。

Emmanuel_Engelhart

 ――まず最初に、Kiwixの紹介をしてくれるかい。

 Emmanuel:Kiwixは、Wikipediaをオフラインで読めるようにするツールだ。それだけじゃなく、効率的にデータを保存するZIM系ファイルフォーマットを使っていて、Wikipediaに限らずHTMLコンテンツでもオフラインで読める。オフラインでWikipediaを楽しみたいなら、KiwixとWikipediaのZIMファイル(KiwixのWebサイトから入手できる)をダウンロードすればいい。

 そうすればオフラインでも、Wikipediaを閲覧できるようになる。Kiwixには(オフラインでコンテンツを閲覧するのに)必要な、次のようなものがほとんどそろっているんだ。

  • 大文字小文字の区別をせず、発音記号からも検索できる全文検索エンジン
  • ブックマークやノート機能
  • ZIMベースのHTTPサーバ
  • PDF/HTMLエクスポート
  • 80以上の言語に対応
  • 検索時のサジェスチョン機能
  • タブナビゲーション
  • 統合されたコンテンツマネージャー/ダウンローダー

 ――このプロジェクトを始めたきっかけは?

 Emmanuel: どうしてWikipediaをWikipedia.orgに閉じ込めておかなければならないんだ? Wikipediaのコンテンツは誰もが使えなければならない。インターネットへのアクセスがなくてもだ。これが、Kiwixプロジェクトを立ち上げた理由さ。

 ――このプロジェクトは実際、どういった環境で使われているの?

 Emmanuel:ユーザーは世界中にいるよ。航海中の船乗り、知識に飢えた貧しい学生、世界を股にかけ常に飛行機で移動している人、検閲のある国に住む人。そういった人達のために、Kiwixはシンプルで実用的な解決方法を提供しているんだ。

 Kiwixは例えば、Wikimedia France AfripediaプロジェクトやWikimedia Kenyaでも使われている。それから、インドでもね。

 プロジェクトの拡大は、Wikimediaの人たちや、NGOのような外部組織によって行われている。多くの人はオフライン版のWikipediaを一度ダウンロードすると、友達や親戚らと共有するんだ。1月は、ダウンロード回数がおよそ10万回だったよ。

Kiwix_Downloads,_2010-2012

 最新のコンテンツを次々にリリースすることが僕らの最優先事項となっているんだ。ZIMファイルの生成ツール群を改良することで、ZIMファイルを生成するスループットを向上させ続けている。また、オフライン版のほかのWikimediaプロジェクトも間もなくリリースするつもりなんだ。

 優先順位として2番目にあるが、Kiwixをスマートフォンでも利用できるようにすることだ。4月には初のAndoroid対応版Kiwixをリリースしたいと思っている。

 先のことについては、ベストなオープンソースの電子ブックリーダーになることを目指している。僕らはEPUBを完全に補完できるZIMという、先進的なファイルフォーマットを持っていると思うんだ。双方において、将来的に最高のユーザー・エクスペリエンスを提供できるよう最善を尽くすつもりさ。

――コミュニティーに参加したい人は、どうすればいい? 現在、デベロッパーの募集はしていないの? 翻訳者やユーザー、テスターの募集は?

 Emmanuel: 実は一番重要なタスクは皆に任せられる部分で、Kiwixを使えばオフラインでWikipediaを閲覧できるということを宣伝してほしいんだ。先ほども言ったとおり、大概の人は持ち歩けるWikipediaが必要だったとしても、Wikipediaを丸ごと画像付きでUSBスティック上に納めるのは無理だと考えている。だから私達は、プロジェクトを立ち上げてkiwixを広めてくれる人を必要としているんだ。

Clé_Wikipédia_-_Framakey_-_Kiwix

 でも、そのほかにも仕事は山のようにある。

  • Monocleを使ったEPUBサポートを盛り込むことのできる新JavaScriptデベロッパーの参加を待ち望んでいる
  • 常時、UIを翻訳してくれる人を探している
  • ちょうど現在、kiwix-plugというKiwixをインストールしたUSBメモリやライブDVDに取り組んでいるところなんだ。GNU/Linuxの管理者としてのスキルを持っている人ならやれることがたくさんある
  • ZIMファイルを使ったツールを改良できるC++エキスパートを必要としているんだが、特に求められているのは、頻繁にZIMアップデートを行うためのソリューションだ
  • 当然ながら、テスターも必要だ。参加するにはこちらから
  • bug tracker上の全チケットを管理するバグマスターも必要だ

 もし興味があれば、Freenode IRC #kiwixチャンネルにぜひ参加してほしい。