操作性に優れたムービーコレクションマネージャ:Griffithとその対抗馬となるGCstar

 かつて私はムービーコレクションのバックアップ群に関する全リストを、長きにわたって紙製のノートブックにて管理してきたが、程なくこうした紙の束に頼った管理法に行き詰まりを感じることとなり、結局は全データをコンピュータ上のスプレッドシートに移植するという労苦にいそしむことになったものの、スプレッドシートを用いた管理法についても不満を抱き続けてきた。そして発見したのが Griffith というムービーコレクションマネージャであり、その多機能性によい意味で驚かされることになったのである。

 私がGriffithをインストールして最初に確認したのは、リスト中のDVDを番号ベースでカテゴリ分けする機能および、可読性の高いフォーマットにてエクスポートする機能の有無であった。そしてGriffithは、これら2つの機能をデフォルトで装備していたのである。

 Griffithのメインウィンドウは2つのペインに分かれている。このうち左側のペインはムービーのリストとなっており、ここに表示されるのは動画タイトルやカバージャケット画像のサムネイルなどの各種データだが、実際にどのデータを表示させるかはPreferencesダイアログにてユーザ設定が可能だ。またアイテム群のソートやフィルタリングについては、Griffithの各種操作を実行するオプション類がまとめられたウィンドウ上部のツールバーにて行えばいい。一方の右側のペインには、リスト上で選択したムービーの拡大版ジャケット画像を始めとする各種の情報が表示されるが、詳細情報については複数のタブに分割した形で収録するようになっている。この方式は、限られたスペースにて多量の情報を可読性の高い形式で提示できる、優れたデザインだと言えるだろう。

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Griffithのメインウィンドウ

 コレクションに新規のムービーを追加登録するには、まずAdd new movieボタンをクリックして新規のウィンドウを表示させ、次に検索ボックスにムービーの名前を入力して、Get from Webボタンをクリックする。これによりGriffithはInternet Movie Database(IMDB)にアクセスし、該当するタイトルの候補を一覧してくれるので、その中から該当するものを選択すればいい。この場合、登録すべき残りの項目はGriffithが自動で入力してくれるし、その際にはカバージャケットの画像もダウンロードされるのだ。なお利用可能なムービーデータベースはIMDBだけに限定されている訳ではなく、必要であれば同ウィンドウにあるドロップダウン形式のメニューから好みのサイトを選択できるようになっている。Griffithの操作性は非常に高いため、これだけ知っておけば最初に使用する上で特に困ることはないだろう。

対抗馬となる競合ツールとの比較

 その他のオープンソース系ムービーコレクションマネージャとしては Moviefly および CeeMedia などが存在するが、Griffithに対抗しうる完成度のアプリケーションとなると、Linux.comでも以前に取り上げ GCstar くらいしかないだろう。どちらのアプリケーションも細部に至るまで簡単化が施されているが、操作性に関しては、新規ウィンドウを別途開くことなくメインウィンドウだけで大半の作業ができるGCstarの方に軍配が上がると言わざるを得ない。また私が個人的に割り当てたDVD番号を使ってムービー群のカテゴリ分けをする際にも、GCstarの場合はDetailsタブにてメディア番号を入力するだけで済むのに対して、Griffithの場合は個々のDVDごとにVolumesやCollections(Griffith内部で用いる情報のコンテナとカテゴリ)を手作業で作成しなくてはならないのだ。こうした相違点は、長大なリストを入力する際に顕著な違いとなって現れてくる。

 一方でGriffithが優っているのは、より効率的な形式にて情報表示ができる点だろう。こちらは左側ペインにてジャケット画像付きでムービー群を管理番号順に一覧できるのに対して、GCstarの左側ペインでできるのは画像一覧か簡易テキストでの表示だけであり、両者の中間にあたるモードは用意されていないのだ。確かにGCstarの画像ビュー(“shelf view”)もそれ単体で見れば美しい表示がされ、私のようにビジュアル主体で管理をするタイプのユーザに向いてはいるのだが、問題はムービー群の表示が秩序だっていないため、管理対象のムービーが数百から数千単位になると操作性を著しく損なってしまうのである。またGriffithに装備されているAmazon.comからより大型のジャケット画像をダウンロードするオプション(最終的に印刷する場合に便利)も、GCstarでは利用できない。もっともGriffithについても、私個人の好みとして、左側ペインにて一覧するミニ画像を若干大きめにするオプションも装備して欲しいところだ。

 またGriffithがIMDBから詳細なストーリ概要を取得するのに対して、GCstarの場合はわずか2行の簡易情報しか表示されない(IMDBページにある当該ムービーへの直接リンクと併用)。逆にフィルタリング機能についてはGCstarの方がGriffithより強力であるが、Griffithの場合は高速かつ操作性に優れた検索処理が行え、特に複数項目がヒットする検索が扱いやすくなっている。

 GCstarがGriffithよりも特に秀でているのは、サポートするインポートおよびエクスポート用のフォーマットが充実している点だ。私個人としては、HTML形式のリストとしてエクスポートするオプションとそのテンプレート群が気に入っている。またハードドライブにムービーを保存するユーザの場合、リスト上でムービーのタイトルと動画ファイルとを関連付けてGCstarから直接アクセスする機能を利用すると、動画再生の手間を大幅に削減できるはずだ。更にGCstarは、こうしたファイル側からビデオ情報を取得してリストに追加するという機能も有している。

 GCstarの実態が汎用型のコレクションマネージャであるのに対して、Griffithで扱えるのはムービー(動画)だけである。よってムービー以外のコレクションも管理するのであれば、GCstarを最善の選択肢としていいだろう。どちらもWindowsおよびLinuxの双方で実行可能なクロスプラットフォーム対応のアプリケーションとして作られている点は共通している。ただし、これら両ソフトは機能的に完全に同等という訳ではなく、相手側に装備されている機能が他方に付いていればと思う点がどちらにも存在しており、現状で比較する限りはGCstarの方がGriffithより完成度が高いように感じられるが、これは非常な僅差でしかなく、将来リリースにおいて容易に逆転しうる程度に過ぎないのだ。

Rui Lopesはポルトガル人Webデザイナであり、映画製作も手がけると同時に、様々な分野の最新テクノロジを常に追いかけ続けている。

Linux.com 原文(2008年12月12日)