JAPで匿名Webアクセス

 ウェブに匿名でアクセスするための手段はTorだけではない。ウェブを匿名で閲覧できるようにするための軽量でユーザフレンドリなユーティリティを探しているのなら、JAPを試してみると良い。

 Torと同様にJAPも、ウェブページに対するユーザのリクエストを複数の中間サーバ(JAPではこれを「ミックス」と呼ぶ)経由で送信する。しかしTorとは違ってJAPは、「ミックス・カスケード」と呼ばれる、所定の複数のミックスを使用する。JAPの文書によると、どのミックス・カスケードにおいても複数の接続が扱われるため、接続を追跡することは事実上不可能なのだという。JAPの内部的な仕組みについてより詳しく知りたい場合は、JAPのウェブサイトにある「Architecture of the Anonymization Service(匿名化サービスのアーキテクチャ)」という記事を見ると良いだろう。

 JAPを使用する際には、JAPだけでは100%の匿名性を保証することはできないということに留意しておこう。その理由は単に、ユーザのIPアドレスを獲得する方法が、クッキーやJavaScriptスクリプト経由など他にもあるためだ。そのため最大限の匿名性を実現したければ、他の「穴」も埋めておく必要がある。とは言え嬉しいことに、JAPではこのことを行なう方法(後述)について詳しい情報が提供されている。

 JAPアプリケーションは全体が単一の .jarファイルになっているため、インストールする必要のあるものは特にない。JAPのウェブサイトから最新版のパッケージをダウンロードすれば準備完了だ。とは言えJAPはJavaで書かれているので、JAPを実行する前にJava Runtime Environmentをマシンにインストールしておく必要はある。

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JAP

 JAPを起動するには、端末ウィンドウで「java -jar JAP.jar」というコマンドを実行する。最初の実行時にJAPは、設定を一つ一つ進めるウィザードを起動する。なお最も重要な設定は、接続を匿名化するためにブラウザが直接ウェブにアクセスするのではなくJAPを経由するように設定するということだが、これはJAPの外部で行なうことになる。つまりJAPのウィザードが直接この設定を行なうことはできないので手動で設定する必要がある。ただし、Firefox、Opera、Konquerorといった最も人気のあるブラウザ用のハウツーを詳しく図解した説明が提供されている。ウェブブラウザの設定は非常に簡単(プロキシサーバをlocalhost:4001に設定するだけ)だが、丁寧な説明が用意されているため、技術者でなくても最小限の手間で匿名接続を設定することができるだろう。JAPでは、説明通りに設定を完了した後に設定をテストするための方法もいくつか説明されている。また問題が起こった場合のために、解決方法についてのアドバイスも用意されている。

 最後の準備は、他の経路によって匿名性が失われることがないことを確認することだ。この作業もやはり手動で行なう必要があるが、必要なことやハウツーなどの情報は、JAPによって提供されている。またJAPでは、クッキーの設定方法や、JavaとJavaScriptを無効にする方法の他にも、いくつかの便利な拡張やツールの紹介や、フィルタプロキシの設定に関する情報なども提供されている。ただ残念な点としてフィルタプロキシについては、Privoxyなどのような新しいものではなくProxomitronMuffinというどちらも旧式のツールが紹介されている。

 JAPを有効にしておけばウェブを匿名で閲覧することができる。また、JAPのユーザフレンドリなインターフェースには匿名性のレベルをグラフィカルに示す計器などがあって、このインターフェースを使用することでJAPの状態を常に監視することができる。さらにこのインターフェースを使って、異なるサービスプロバイダを選択することもできる。ただしプロバイダは、サービスを無料で提供しているものに限られる。Torとは違ってJAPには商用サービスもある。JAPは当初は大学の研究プロジェクトの一部として作成されたが、需要に応えるためと商業化して存続させるために、JonDonymというサービスの一部になった。このサービスを利用するとより多くのミックス・カスケードにアクセスすることができるので、JAPを日常的に使用する場合には便利だろう。このサービスにはいくつかのレベルがあり、最も安価なものは2ヶ月間で1ユーロ(約1.36ドル)で、データ転送量の上限は120MBだ。一方、最も高額なサービスは5ヶ月間で25ユーロ(約34ドル)で、データ転送量の上限は5GBとなっている。当然ながら、時折JAPを使うだけなのであれば無料のサービスプロバイダを使用し続けて問題ないだろう。ただし無料のプロバイダは一つのミックス・カスケードしか提供していないため、JAPの文書によるとセキュリティ的に劣ることになるとのことだ。また当然ながら、サービスの品質について、プロバイダの善意に依存することになる。

 最後に、JAPやその他の匿名化ツールを使用する際に留意しておくべき重要な点が一つある。すなわち匿名化ツールを使用した場合には送受信のデータが複数のサーバを経由することになるため、接続速度がかなり遅くなるという点だ。このことはウェブページを閲覧している際にはそれほど問題ではないが、ビデオをスムーズに見たり、容量の大きなファイルを短時間でダウンロードしたいときには問題となるだろう。

 JAPとTorのどちらの方がより高い匿名性を実現しているのかを述べることは難しい。しかし、設定のプロセス全体に渡って親切な解説をしてくれて、ブラウザを「匿名化」する方法に関する分かりやすい説明を提供してくれる、ユーザフレンドリなツールを求めているなら、JAPを試してみる価値があるだろう。

Dmitri Popovは、ロシア、イギリス、アメリカ、ドイツ、デンマークのコンピュータ雑誌で活躍するフリーランスのライター。

Linux.com 原文