Wyneken:強力かつ柔軟なメモ作成プログラム

 WynekenはGNOME用のメモ作成アプリケーションの1つであり、パネルアプリケーションのSticky Notes、Evolution、Tomboyなどこの類のプログラムは増えつつある。学生のニーズに応えるために作られたWynekenは、勉学のあらゆる場面で行われるメモ作成だけでなく、論文、報告書、プレゼンテーション、さらにはmanページの作成にも適している。LaTex上に構築されているため、必要に応じて複雑な書式設定が可能だが、その代わりにWYSIWYG方式の表示機能はない。

 Wynekenの最新のプロダクション版であるバージョン0.4はFedora用のRPMパッケージが入手できるが、他のディストリビューションのユーザはソースからビルドする必要がある。ビルド手順には、pysqlite 2.0.3以降、sqlite 3.x、pygtk-2.6以降、python-2.4、tetexといった依存関係について記した長大なリストが含まれているので、注意して確認すること。出力する文書の形式にもよるが、プレゼンテーションにはlatex-beamer 3.x、RTFへの変換にはlatex2rtf、HTMLやASCIIテキストへの変換にはheveaも必要になる場合がある。また、PDFにはEvince、リッチテキスト形式にはワープロなど、それぞれの出力形式に適したビューアも必要になる。

Wynekenを実行する

 初めてWynekenをメニューから開くと、GNOMEウィザードが現れ、ノートブックファイルの保存場所の設定やさまざまな出力形式の文書を表示するための外部プログラムの指定を手助けしてくれる。こうした選択項目の大半は、プレーンテキストのGedit、HTMLのEpiphanyなど、GNOMEの標準設定がデフォルトになっているが、それらの設定はこのウィザードの中で、あるいは後で「Edit」→「Preference」メニューから自由に変えることができる。

 Wynekenを使うには、作業を行う文書の種類をまず選択する。文書の種類ごとに、作業を始める支援をしてくれるウィザードかテンプレート構造のどちらかが用意されている。このプログラムでは、最も使用頻度が高いのはノートブック(Notebook)形式だと想定されている。これは、学生やIT実務者が使うであろう、日付によって整理された無作為な文書の集まりである。Wynekenには、ノートブックを整理したり、開くごとにその日のエントリを自動追加するツールが備わっている。他の文書タイプとしては、原稿、報告書、論文、プレゼンテーション、manページがある。

 WynekenはLaTexを使用しているが、編集画面の基本的な書式設定では、HTMLに似たBBCode風の表記を使用する。たとえば、文字の太さを指定するには、LaTeXでは\textbf <boldtext>を用いるが、Wynekendでは開く側のタグが[b]、閉じる側が[\b]となる。Wynekenのマニュアルでは、この方式をとった主な理由の1つとしてエスケープ文字(適切な表示のためにその前にバックスラッシュが必要な文字)の数を減らせる点を挙げている。こうした違いはあるが、LaTeXに慣れた人であれば数分でWynekenを使えるようになるはずである。

 Bluefishと同様、Wynekenにもタグ挿入用のツールバーやメニュー項目があり、太字、斜体字、下線、順序付きおよび順序無しの箇条書きといった簡単な書式設定は自動的に行われる。ただ、Bluefishと違うのは、開始タグと終了タグが同時に挿入されるのではなく1つずつ追加される点である。各ファイルに対するLaTeXのプリアンブルなど、もう少し複雑な書式設定も自動で挿入されるが、表やインデックスなどその他の種類のものは、ユーザガイドの付録Bと付録Cを参照しながら手作業で追加する必要がある。

 すぐに追加したくなる高度な機能の1つがフラグ処理である。フラグはブックマークのような役割を果たす。たとえば、[flag:Homework:read page 23]というフラグを作成しておいた場合、F7キーを押してMeta-dataウィンドウを開くと、各メモに記されたすべての宿題(Homework)のリストが表示される。

 文書を作り終えたら、Wyneken固有の形式で保存するか、あるいはPDF、DVI、RTF、HTML、ASCIIなど各種形式で出力することができる。

Wynekenを使いこなす

 機能が豊富な(無駄なものが多いという人もいるが)ワープロが主流の最近では、WYSIWYG方式でないテキストプロセッサを過去の遺物のように思っている人もいる。特に、プレゼンテーション資料の作成にWynekenのようなプログラムを使うことには矛盾を感じるかもしれない。要するに、ビジュアルが主体の文書を、なぜわざわざ仕上がりの状態が見えないエディタで作るのか、というわけだ。

 しかし、WYSIWYG方式でないプログラムを支持する人々は、よりコンパクトで高速なプログラムになるという利点に言及するとともに、レイアウトよりもコンテンツに力を入れるようにユーザたちに勧めている。数日間、Wynekenで作業すれば、彼らの考え方に同調するようになるかもしれない。基本的な書式設定はすでに自動化されているので、残りいくつかのタグさえ覚えてしまえば、効率のよいツールとしてWynekenを使いこなせるようになるはずだ。バージョン1.0のリリース前にその他の自動化機能が開発者によって追加されれば、その効率性はさらに高まるだろう。

 今後の予定として、まずはWynekenのバージョン0.5-aluminiumが登場する。これはプロダクション版と同時に開発が進められている最新のデベロッパー版である。この最新のデベロッパー版には、改良されたインタフェースやPythonの標準ビルドツールだけでなく、バージョン管理や新たな参考文献目録用ツールも含まれる。

 時間をかけてWynekenを習得すれば、半GUIツールに対する偏見はすぐに消えるだろう。あと何回かリリースを重ねることで、Wynekenは間違いなく、最も高度なメモ作成プログラムの1つとなるだけでなく、最も効率的なLaTeXエディタの1つにもなるはずだ。

Bruce Byfieldは、Linux.com、IT Manager’s Journalに定期的に寄稿しているコンピュータジャーナリスト。

Linux.com 原文