Pawfaliki――1ファイル形式で運用可能な簡易wikiツール
その理由としては、wiki全体を1枚のPHPファイルに収めることが可能であり、PHP経験の浅いないし全くないユーザであっても使いこなせるという2点を挙げることができる。こうした観点からPawfalikiは、必要最小限の手間で個人用のwikiを運用したいユーザあるいは、簡易的な知識ベースやコラボレーション体制を速やかに構築したい小規模なグループにとって最適なツールだと言っていいだろう。
Pawfalikiを構成するのは1枚のPHPファイルだけであり(ただしwikiの外観を規定するための.cssファイルは別扱い)、そのインストールも非常に簡単に済ますことができる。具体的な操作手順は、pawfaliki.phpファイルをサーバのドキュメントルートにコピーし、その同じ階層にPawfalikiPagesおよびPawfalikiTempというディレクトリを作成して、これらにサーバ上での書き込み許可を与えるだけである。
Pawfaliki本体の設定も、これに負けず劣らず簡単である。設定項目はすべてpawfaliki.phpファイルにまとめられており、設定変更に必要な情報はすべてコメント形式で並記されている。Pawfalikiではこの種の配慮が行き届いているため、PHP初心者であっても簡単に使いこなせるはずだ。
wikiの名称、別ディレクトリへのパス、日付フォーマットなどの設定については特に説明する必要はないだろうが、簡潔性が売り物のPawfalikiといえども、実際に運用するに当たっては、いくつかの設定オプションをカスタマイズしておかなければならない。例えばUSERSセクションを見ると、ユーザ名とパスワード用の設定行が見つかるはずだ。
$config['USERS']['admin'] = "password";
同じくRESTRICTEDセクションには、アクセス制御用の設定行が用意されている。例えば下記の行を用いると、wikiページのリストア権限を特定ユーザのみに制限することができる。
$config['RESTRICTED']['RestoreWiki'] = array("admin");
同様に特定のwikiページに対するアクセス権を制限したければ、下記の形式で必要な設定を施せばいい。
$config['RESTRICTED']['HomePage'] = array("admin");
LOCALEセクションには、Pawfalikiで使用されるすべてのテキストが格納されるので、各自のwikiインストレーションをローカライズしたければ、ここにあるテキスト文字列を翻訳すればいいはずだ。
Pawfalikiでは、設定情報を外部ファイル化することもできる。この機能を使うと、先に説明したpawfaliki.phpファイルを直接編集することなく、別ファイルを介した設定変更をすることが可能となる。この機能が特に有用なのは、既存のPawfalikiインストレーションをアップグレードする場合だ。Pawfalikiにはサンプル用の設定ファイルとしてexampleconfig.phpが付属しているので、初めて使用する場合はこれを雛型にすればいいだろう。なおこの形式の設定ファイルを使用するにあたっては、pawfaliki.phpファイルに下記の形式でパス指定をしておく必要がある。
$config['CONFIGFILE'] = "exampleconfig.php";
以上の設定が終了すれば、Pawfalikiを使用開始する準備はすべて整ったことになる。過去にwikiを運用した経験のある人間であれば、Pawfalikiの操作で特に戸惑うことはないだろう。他のwikiシステムで見られる、太字、斜体、下線、逐語引用(verbatim)、リンク、インラインイメージなどの基本機能はすべて用意されており、フォーマット関連の構文も大きな違いはないはずだ。ただし、一部の機能に関しては若干の制限も存在している。例えばPawfalikiの場合、リストやテーブルに関する構文がサポートされていない。もっともPawfalikiではHTMLコードをそのまま扱うことができるので、この件に関しては特に大きな問題とはならないはずだ。またPawfaliki独自の機能としては、変更箇所に関する指定メールアドレスへのレポート機能、RSSフィードの作成機能、wiki全体のバックアップおよびレストア機能などが用意されている。例えば作成したwikiのバックアップを取りたければ、PageListセクションに移動してBackupリンクをクリックすればいい。これにより.gzファイルが作成されるので、後は各自のハードディスクにダウンロードするだけである。wikiをレストアする場合も同様で、Restoreリンクをクリックしてからバックアップファイルを指定すればいい。
このように様々な特長を有しているPawfalikiではあるが、1つの重要な機能が欠落している。それは変更箇所を追跡して特定ページの別バージョンとの比較をする機能である。この不足分に関しては適当な代替策が存在しないため、wikiの運用上そうした処理が不可欠というのであれば、Pawfalikiの使用を断念しなければならないかもしれない。
Pawfalikiの外観はpawfaliki.cssファイルを介して制御する。wiki上の外観については変更できない部分はないと言い切ってもいいくらいだが、そのためにはCSSの属性を調整する必要がある。CSSに精通している人間であれば、使い慣れたテキストエディタで編集すればいいだろう。そうでなければ、CSS専用のビジュアル系エディタを使うという選択肢も存在する。例えば、操作性に優れたフリー(無料の意味のフリー)のCSSエディタとなると、Simple CSSあたりがお勧めだ。
まとめ
Pawfalikiという名前を聞かされてもピンと来ないかもしれないが、これは充分に実用に耐えうる完成されたwikiシステムである。確かに、TWiki、MoinMoin、DokuWikiのような機能満載型のツールではないが、わずかな手間でインストールと設定が完了する簡易型のwikiツールを探しているのであれば、Pawfalikiこそが最適な選択肢だと言えるだろう。
Dmitri Popovは、フリーランスのライターとして、ロシア、イギリス、アメリカ、ドイツ、デンマークのコンピュータ雑誌に寄稿している。