Elggで専用のソーシャル・ネットワークを作ろう

個人向けのプラットフォームだったブログは、今では、組織のためのツールになっている。次は、ソーシャル・ネットワークが組織内で活用される番だ。ソーシャル・ネットワークを構築するオープンソース・アプリケーションElggはテーマに応じたカスタマイズが可能で、プラグインを導入すれば他のソーシャル・ネットワークあるいは社内にある既存のwikiやフォーラムボードに接続することもできる。企業では社内プロジェクトのコラボレーションに、大学では意見交換に使われている。

Elggは、MediaWikiMoodleDrupalなどといったコラボレーション用アプリケーションと共に使えるほか、BlackboardとWebCTというよく知られたVirtual Learning Environments (VLE)2種とも連携可能だ。

2004年から開発が始まったElggは一般的なLinux、Apache、MySQL、PHP(LAMP)環境で動作し、インストールも容易。開発に携わっていたBen WerdmullerとDavid Toshが設立した企業Curveriderが、サポートとホスティング・サービスを提供している。

Werdmullerに言わせると、FriendsterやMyspaceやFacebookなどの既存ソーシャル・ネットワークはElggの実証実験的存在だそうだ。「(既存のソーシャル・ネットワークは)社会的アプリケーションが大きな力を持ちうることを実証しました。しかし、それで終わりというわけではありません。次に、企業や学校といった特定の環境にこの概念を適用する段階が待っています。この意味で、ウェブ・サービスに見られるデータ・サイロ的発想はうまくいっていません」。そこで、Elggでは、限定した話題を限定した範囲で扱うネットワークを構築できるようにした。「大規模な社内ネットワークでは利用者は技術に手が出せませんし、さらに問題なのはデータにアクセスできない点です。そこで、それに代わるものを提供しようと考えたのです」。利用者が20,000人の明確な目標を持った専門的ネットワークは利用者が1,000,000人の総合的ネットワークに勝るとToshも言う。「要するに文脈ですね」

Elggが提案するカスタマイズされたソーシャル・ネットワークを構築するという発想は教育機関に歓迎され、大学を含む世界の教育機関で使われており、今では38言語に翻訳されている。

英国の大学での事例

「Elggはカスタマイズするのもプラグインを書くのも極めて容易ですし、他の技術に組み込むのも通常非常に簡単です」。こう述べるのは、University of Brighton(英国)の学習技術グループの責任者Stan Stanierだ。同大学ではElggを使ってCommunity@Brightonというシステムを導入している。利用者は36,000人以上、それぞれ自分用のブログとファイル・ストレージ領域を持ち、コミュニティーやその他のリソースを利用している。

「今では、ほとんどの大学が何らかのVLEを導入しています。実際に使っている製品はいろいろでしょうが、どのVLEモデルも非常によく似ています。教員主導であり、学生は教材をダウンロードするために使うだけで、学生が関わる余地はほとんどありません。これに対して、Elggでは、スタッフと学生間や学界と社会との間にある多くの障害を取り除くことができます。今では、学生は教員と同じ立場にいて、教員と同じように学習に関わることができます。教員と全く同じように、バーチャルな授業や議論にリソースやアイディアや教材を提供できるのです。ですから、MoodleやBlackboardのような従来型VLEに比べ、実世界のセミナーに遥かによく似た環境を実現することができます。同時に、RSSフィードを取り込んで共有できますし外部の専門家の参加も容易ですから、学習者とリソースのコミュニティーが大学の垣根を越えて大きく広がります。Elggでは、従来型VLEよりも遥かに広い知識と見解に誰でもアクセスできるのです」

グループを作ることで、学生同士の助け合いが促されてもいる。「実例を挙げれば切りがありません。誰かが孤独を感じたり、勉強でストレスを感じたり、騒音や郷愁から学生寮での生活が苦になったりしてブログに何か書くと、Elggを介して相互扶助が受けられます。他の学生から多くの支援や励ましが寄せられるのです。もちろん、適切な支援サービスに直接相談することもできますけどね。そうした問題を抱えた学生にとって、Elggは問題の解決に使える価値あるツールになっています」

教育機関で多く導入されているElggだが、開発者は、どのような団体でも使えると言う。必要なのは人々がいて、共通の話題があることだけだ。Werdmullerは次のように述べている。「Elggはあらゆることに使われています。たとえば、多くの慈善団体がボランティアの相互連絡用に使っていますし、犬の育種から投資銀行まで、あらゆることがテーマになっています」

Elggのサポートを提供する企業Curveriderは、今、開発コミュニティーを育てることに主眼を置いている。

Curveriderグループは、最近、Explodeという新しいサービスを立ち上げた。これは異なるネットワークの利用者をつなぐサービスで、Toshは次のように説明している。「Explodeを介して、異なるネットワーク上の人々が相互につながりあうことができます。それでも、プロフィールは自分が選んだネットワーク上で管理するだけです」。間もなく、OpenIDをサポートしSMSを介してやりとりできるようになる。他のサービスに対する協力要請も始めるという。

NewsForge.com 原文