大幅な機能向上が果たされたDrupal 5のリリース
Drupal 5を利用するために必要な要件は、WebサーバとPHP(4.3.3以上)および、MySQLないしはPostgreSQLデータベースだけである。その他、JabberなどのXMLサービスを利用する場合はPHPのXML機能拡張をオンにする必要があり、また大方のユーザが選択するであろう“クリーンURL”を使いたければApacheのmod_rewrite
が必要となる。
インストール作業は短時間で終了するので、通常の環境であればDrupalを立ち上げるまでには5分もかからないはずだ。具体的な手順としては、まず使用するサイトにSQLデータベースを新規に設定してから、wget
とtar
を用いてDrupal 5のソースファイルを各自のWebディレクトリに保存する。次にブラウザのウィンドウでサイトのルートページを開き、Drupalでデータベースを使用するために必要な情報を設定フォームに入力する。データベースが別のサーバでホストされている場合は、Advanced optionsをクリックして、hostnameを入力すればいい。Drupalのインストール時につまずいた箇所をあえて挙げるとすれば、/sites/default/settings.phpファイルの書き込み許可が必要とされたため、chmod
による設定変更が必要であったことくらいだ(セキュリティ上の観点からは、インストール終了後に再度chmod
を用いて書き込み禁止状態に戻しておくべきである)。
今回は新たなWebベース式インストーラが実装されたが、その操作性は非常に優れている。Welcomeページが開くと、サイトを立ち上げるまでの手順を5段階に分けたメニューおよび各ステップの詳細な説明が表示されるが、最初に行うステップはメインの管理アカウントの作成である。このアカウント作成時にはランダムなパスワードが自動的に割り当てられるので、必要であれば後から変更すればいい。
残りの設定作業では、システム設定用のリンクに従って使用する外部モジュールの指定およびテーマ設定の変更をすればよく、その後で具体的なコンテンツをサイトに追加する。なお設定用リンクについては、個々のステップを完了するごとに直接メニューに戻れるよう、新規ウィンドウ上に開いておくと便利なはずである。
外見的な大幅な変更
Drupalのインストール用Webインタフェース(クリックで拡大) |
Garlandの設定はWebインタフェースを用いた各種の方式で行えるようになっているが、それらの中でも最も印象的なのはすべてのカラースキームをカラー選択ツールだけで指定できるようにされている点だ。従来型のCMS形式によるテーマ設定ではWebフォーム上に配置されたボタン群のクリック操作によるカラー設定が関の山であったことに比べると、こうしたインタフェースの実装は偉大な前進だと言えるだろう。このカラー選択ツールの操作性はスタンドアローン型アプリケーションのものと遜色ないレベルに仕上がっており、今後追加されるテーマでもこの方式が踏襲されることを希望する次第である。
Drupal 5にはその他にも多数のテーマが同梱されているが、こうした新機軸に対応しているのは今のところGarlandだけである。またこれらのテーマを旧バージョンで使う場合は、互換性に関する問題が発生するであろう。バージョン5.0用のテーマは、DrupalのThemesページおよびThemebotのDrupalページで紹介されているが、Drupal Theme Gardenについては既に閉鎖が決定されている。
新規にテーマをDrupal 5にインストールするには、当該テーマのtarボールをダウンロードして各自のテーマ用ディレクトリで展開するだけである。後は追加したテーマが自動的に管理用Webインタフェース上に表示されるが、欲を言うならばWebインタフェースからテーマのインストールとアンインストールが直接行えるようになると操作性が一段と高まるのではなかろうか。
操作性とインタフェース
Garlandのカラー選択ツール(クリックで拡大) |
Drupalの用途としてはユーザ登録用のサイトで使われることも多いだろうが(コメント、フォーラム、グループコラボレーション用の機能がサポートされているため)、Drupal 5にはその種のサイト管理で利用できる詳細なユーザアクセス制御機能が用意されており、どのユーザがどのモジュールにアクセスできるかを、ユーザの“ロール”(role)を設定することで制限できるようになっている(デフォルトで設定されるオプションは匿名ないし認証ユーザ)。またTaxonomy Access Controlモジュールを用いると、ユーザに許可するアクセス範囲をサイトの全ノードとするか、特定の用語でタグ付けしたコンテンツのみとするかを制御することもできる。この機能は、購読式のサイトやコンテンツ販売を目的としたサイトを運営する場合に特に有用なはずだ。
DrupalのコアにはjQuery JavaScriptライブラリが取り込まれている。またモジュール操作に関する変更の1つにinstall profilesの作成機能があるが、これは事前選択した特定のモジュール群に必要な設定を施しておくことでDrupalのカスタムインストレーションを作成する機能であり、開発段階ではmodule mashupsと呼ばれていたものだ。
先に言及したテーマ用ページと同様、Drupalのモジュール用ページもデザインが刷新されている。なおDrupal 5で従来のモジュールを使用するには変換ないし書き換えが必要であるが、公式モジュールの多くは未だ変換されていないのが現状である。例えばDrupal用のショッピングカートソリューションや電子商取引モジュールなどはかなりの需要があるはずなのに、Drupal 5では今のところ利用することはできない。
パフォーマンス面での改善
トラフィックの高いサイトの場合、DrupalのCSSページについてはパフォーマンス的な不満を感じざるを得ないこともあったが、Drupal 5ではこうした部分の改善も多数行われている。その1つはキャッシュオプションの追加で、これをオンにすると匿名ユーザに対してはキャッシュされたページが送信されるようになる。またCSSファイルを統合して圧縮するためのCSSプリプロセッサも組み込まれている。Drupalでは独自のCSSファイルを利用する頻度が高く、個々のユーザリクエストごとに異なるCSSファイルが用いられるため、この機能は特に有効に機能するはずだ。例えば、運営するサイトへのアクセスが集中してサーバの負荷が極端に高くなったような場合は、このオプションを用いてCSSとHTMLを単一のリクエストに統合させることにより、読み込み時間が大幅に短縮されるはずである。
その他の改善点としては、404や403エラーなどをレポートするページにも変更が加えられた。例えば、Drupalの独自レイアウトをすべて排した簡潔なエラーページを強制的に表示させる、あるいはサイト停止後のオフラインモードで表示させるメッセージをカスタマイズしておくなどの処理が行えるようになっている。
ドキュメントおよびコミュニティの整備状態
ドキュメント類についてはオンラインでアクセス可能なシステムが用意されており、ドキュメントの掲載ページであるDrupal handbooksの構成も主要なタスク別に整理されてはいるものの、総合的なドキュメントの完成度という点では色々な不備が感じられる。例えば先のページでは、バージョンごとに内容の異なるドキュメントが渾然一体と陳列されており、既に廃止されたバージョンと最新のバージョン5.0の解説が同レベルの扱いを受けているという有様である。その他にも各種のドキュメントを見て回ると、肝心の部分の説明が欠落しているというケースに多々遭遇するし、またDrupalの関連用語の説明は、その定義が自己言及的に行われているか不正確なものが多く、新規ユーザが簡単に理解できるレベルに仕上がってはいない。
Drupalのインストールおよび実行に関する手順は大幅な簡単化が施されているが、込み入ったサイトを構築したい場合はそれなりの手間を要するし、最終的にはプログラマに依頼しなくてはならない部分がでてくるかもしれない。PHPおよびCSSに関する知識やこれらがDrupal内でどう処理されるかを理解するには結構な時間がかかるはずであり、それらを独習しようと思えば否が応でもDrupal Groups(先日購読者数が10,000を越えたそうである)やDrupalのメインフォーラムなど様々な関連コミュニティサイトを頼りにすることになるであろう。またPlanet DrupalにはDrupalの関連サイトに寄せられた主要なトピックがまとめられている。
更なる機能向上を目指して
コンテンツ管理フレームワークとしてのDrupalは、従来より装備されていたコンテンツ分類用の動的なtaxonomyシステムによって頭一つ抜きんでた存在と見なされていたが、今回リリースされたDrupal 5においては旧バージョンに対してよりいっそうの機能向上が果たされている。
そして現在開発が進められているDrupal 6では、今回のDrupal 5に匹敵する大幅な改善が施されるはずである。そこでは興味深い各種の機能追加や拡張(インターナショナル化など)が構想されているようではあるのだが、実用レベルに達する以前に公開ないし正式なサポートがされることはなさそうであり、プロジェクト側からリリース予定日なども発表されていないため、具体的にいつ頃のリリースになるかは不明なままだ。