IBM、プリンタ部門をリコーに売却

 米国IBMは1月25日、企業向けプリンティング・システム部門を日本のプリンタ/コピー機ベンダーのリコーに売却すると発表した。両社は、IBMの事業部門を母体とした合弁会社を設立し、段階的にリコーの子会社へと移行させる。

 合弁会社の名称は、「インフォプリント・ソリューションズ」になる予定で、当初はリコーが株式の51%を保有する。同社は、今後3年間で残り49%の株式を段階的に取得し、最終的に完全子会社化する予定だ。

 合弁会社の設立は、法令に基づいて、今年第2四半期中に行う。リコーは、それまでにIBMに対して7億2,500万ドルを現金で支払うことになっている。この金額には、合弁会社の株式51%分の代金と、残りの株式購入の前払い金が含まれる。IBMの最終的な支払額は、3年間の移行期間が終了した時点における合弁会社の収益に基づいて決められるという。

 IBMによると、2006年に同社のプリンティング・システム部門が計上した売上高はおよそ10億ドルだったという。この部門は、ワークグループ用のレーザー・プリンタやスキャナ、コピー、ファクス機能を搭載した多機能プリンタ、産業用のサーマル・プリンタ、連続用紙作成プリンタなどを抱えている。また、IBMはInfoprint Expressのブランド名でSMB(中小規模企業)向けのプリンタも出荷している。

 IBMのサム・パルミサーノ会長は、声明の中で、プリンティング・システム部門をリコーに譲り渡すことにより、中核的なビジネスと顧客に注力することができるようになると説明している。同氏は、今回の取り引きについて、IBMとリコーとの20年にわたる協力関係を拡大したものであり、リコーにとっても、プリンタ事業を成長させるために必要な投資になると強調している。

 一方、リコーは、プリンタ事業を拡大し、インフォプリント・ソリューションズを中核的な事業に育てたい考えだ。

 リコーのCEO兼社長である桜井正光氏は、1月25日の電話会議の中で、「世界規模の成長を目指すという当社の戦略の新たな段階が始まったことを示すシグナルだ」と強調すると同時に、産業用プリンタ市場への参入によって事業を拡大したいと付け加えた。「2004年には、最初の大きな一歩として、日立のプリンタ部門を買収した」(同氏)

 過去3年間、IBMのプリンタ事業は伸び悩んでおり、何らかの対応が必要になることが明白になっていた。

 IBM の技術革新/テクノロジー担当バイスプレジデントを務めるニック・ドノフリオ氏は、「変化に対応するスピードが遅くなり、プリンタ事業の自力での拡大が困難であることが明らかになっていた。今回の判断は、苦渋に満ちたものだが、旧来の事業を切り離し、新たな場で存在価値を見いだせるようにする好機と考えた」と語る。

 なお同氏は、売却候補となっている事業部門がほかにもあるのかどうかについてはコメントしなかった。

 合弁会社は、およそ1,200人の従業員でスタートし、その後、IBMでプリンタのメンテナンス業務を担当する1,000人以上の専門スタッフが合流することになっている。

 IBMは、業務開始後1年間、合弁会社の顧客にメンテナンス・サービスを提供するほか、最長5年間、合弁会社にITサービスを提供する予定だ。新会社にサービスを提供することで、今後5年間に毎年1億5,000万ドルの収入が得られると見込んでいる。

 インフォプリント・ソリューションズは、IBMのプリンティング・システム部門と同じコロラド州ボールダーに本社を置く予定で、代表者にはプリンティング・システム部門のゼネラル・マネジャーを務めていたトニー・ロメロ氏が就任する。また、少なくとも5年間はIBMのInfoPrintブランドと同社のロゴを使用できる。なお、新会社はプリンタ分野のグローバルIBMパートナーになる予定だ。

 IBMは、2002年以来、160億ドルを投じて60社を超える企業を買収する一方で、ハードディスクやディスプレイなど非中核事業を次々に売却している。2005年には、PC事業を17億5,000万ドルで中国のレノボ・グループに売却した。

 なお、ローエンドのプリンタ事業部門は、レックスマークの資金拠出を得て1991年に分社化し、1995年にIBMから別会社として独立している。

(チャイナ・マーテンス/IDG News Service ボストン支局)

IBM(米国) http://www.ibm.com/

リコー(日本) http://www.ricoh.co.jp/

提供:Computerworld.jp