UML開発者Jeff Dike氏、仮想化技術の今後を語る

現在オーストラリアのシドニーで Linux.conf.auが開催中だ。 このLinux.conf.auの素晴らしい点の一つは、 オープンソースコミュニティのそうそうたる面々が一堂に会するということだ。 そしてその例にもれずUser-Mode Linuxの作者でありメンテナーであるJeff Dike氏も、 UML とKVM(Kernel-based Virtual Machine)についての講演を行なうため 今週Linux.conf.auに参加していた。 私は月曜の講演の合間の休憩時間にDike氏と同席し、 UMLの近い将来についてや他の仮想化技術について 彼の考えを聞くことができた。

月曜日のDike氏の講演の中では、UMLの最近の開発成果として、 Intel社とAMD社のx86プロセッサに追加された ハードウェアによる仮想化支援機構を UMLが使用できるようになったことについての報告があった。 Dike氏によると、 ハードウェアの仮想化支援機構の大部分は IntelのCPUとAMDのCPUとの間で互換性があるという。 また、ハードウェア仮想化支援機能が利用可能になったことで、 UMLはptraceを使用せずに直接的にシステムコールを インターセプト(横取り)することができるようになったとのことだ。

そしてDike氏によれば、 UMLがシステムコールを直接的に扱うことができるようになったことにより 性能の向上が見込まれるとのことだ。 なおUMLが「すべて」のシステムコールを 直接的に取り扱えるようになるまでにはまだ少し時間がかかるものの、 Dike氏は「ptraceを使用する必要のあるシステムコールの数がどんどん減って、 フルスピードで実行できるようになるシステムコールの数がどんどん増えていく」 と見込んでいるのだという。

月曜日のDike氏の講演ではまた、 UML以外の仮想化ソフトウェアも含め 仮想マシンの管理ツールの話題も取り上げられていた。 参加者の中には、UML用のより高度な管理ツールの開発計画があるかどうかを 熱心に知りたがっている参加者が何人かいた。

これについてDike氏は 「自分が取り組まなければならない作業はカーネル内にまだたくさんありますから」とし、 彼自身は管理ツールや市場で求められていること などについて考えることはあまりしていないと述べた。 けれどもその代わりとして libvertプロジェクトを挙げ、 「libvertプロジェクトは、今、 Xenだけでなく主な仮想化ソフトウェアのすべてに関して、 libvertを対応可能にできそうなものはすべて対応させようと考えています。 つまり既存のあらゆる仮想化ソフトウェアに対応しようとしているのですから、 もちろんUMLもその中に入っています」と述べた。 Libvertは 当初Xenを対象に開発が開始されたC言語のツールキットだが、 現在はXen以外のLinux上の仮想化テクノロジへの対応もプロジェクトの目標となっている。

仮想化技術についての見通し

私はDike氏に仮想マシンのイメージとしてソフトウェアを配布することについて質問してみた。 Dike氏は仮想マシンのイメージとしてソフトウェアを配布することに関しては、 LAMPスタックやSnortなどのプレインストールシステムなどの配布には 今後も有効な手段であり続けると思われるが、 ハードウェアを正常に動かすことの難しさを考えると、 MythTVやゲームをプレインストールしたシステムの配布 といった用途には向かないだろうとの認識を示した。

ところで現在、 SWsoft社がOpenVZの、そしてXenSource社がXenテクノロジの メインラインカーネルへの統合を目指しているが、 Dike氏によるとどちらも実現する可能性は低いとのことだ。 Dike氏はXenは「Linuxの世界には合わない」とし、 Xenのことを「将来性のないテクノロジ」と表現した。 一方Dike氏はメインラインカーネルでは KVM関連の仮想化技術が発達し主流になると予想し、 メインラインカーネルで主流になった技術こそが ディストリビューションでも主流になるはずだと見ている。

またOpenVZについても、少なくとも今の状態では メインラインカーネルツリーに統合される可能性は低いとDike氏は考えている。 Dike氏によるとOpenVZを動かすためには 「コードをカーネル内のあちらこちらにまき散らす」必要があり、 また、カーネルの習慣/コーディング規約などに従ってない部分が多いとのことだ。

とは言え、これらはカーネル開発コミュニティや Linuxディストリビューションに直接的に採用されるテクノロジに関しての話であって、 市場で多く採用されるテクノロジが何になるのかという議論に関しては、また別の話だ。 というのも市場ではテクノロジが様々な基準に基づいて選択されるからだ。 Dike氏もカーネル開発コミュニティ以外の場所では 仮想化市場は依然としてVMwareの独壇場であると認め、 LinuxのKVM技術と言えども近いうちにVMwareの座を奪うとは想像できないという認識だ。 と言っても、Dike氏がそのようなことを気にかけているというわけではない。 「そういうことについては私自身はあまり気にしていませんし、 カーネル(開発コミュニティ)のほとんどの人たちも気にしていないと思います」。

「私はただ自分のコードをきれいに保ち続け、 やるべきことを書いたリストにある仕事を一つ一つ片付けていくだけです」。

NewsForge.com 原文