Fedora、ライブCDをリリース

Fedoraコミュニティは、先月、同コミュニティ初となる公式ライブCDをリリースした。Fedora Core 6を基礎にしたもので、Fedoraの名に恥じない仕上がりになっている。しかも、このCDの製作に用いたツール群により、カスタムRed Hat――FedoraベースのライブCD――の製作や保守が容易になった。

提供されるライブCDは684MBのISOで、i386アーキテクチャー専用。含まれているファイル・システムは圧縮されており、展開すれば2.3GBのアプリケーション――Fedora Core 6(FC6)を構成するCD 5枚組に含まれるアプリケーションとユーティリティの一部――が現れる。起動すると、Linuxカーネル2.6.18、GNOME最新安定版2.16、X.org 7.1が動作する。リリース時期を示す壁紙を除いて、見た目はFC6と変わらない。

GNOMEパネル上にはNetworkManagerユーティリティがあり、何もしなくても動作状態になる。これを使うと固定ネットワークとワイヤレス・ネットワークの間を容易に移動できる。さらに、現場を移動しながらの使用を想定してVPN接続ソフトウェアも用意されている。これは、NetworkManagerユーティリティに組み込まれているプラグインから構成する。ライブCDの開発リーダーDavid Zeuthenによると、(彼の)「マネージャーが、空港でノート・パソコンのハードディスクが壊れたときに使っていた」そうだ。

このCDには読み書き可能なファイル・システムもあり、Fedora風に、Pirut(ソフトウェアの追加と削除)とPup(ソフトウェアの更新)を使ってソフトウェアとアップデートが可能。ただし、新規ソフトウェアはRAMに保存されるため、コンピュータを再起動すると失われる。

アプリケーションでは、OpenOffice.orgの代わりに、AbiWord(ワードプロセッサー)とGnumeric(表計算)が同梱されている。OpenOffice.orgはベータ版リリースには含まれていたが、入力メソッドSmart Common Input Method(SCIM)およびFC6に含まれているアプリケーションとユーザー・インタフェースの翻訳をすべて含めるために割愛された。その代わり、非英語圏のユーザーにも使えるライブCDとなった。

Ubuntu 6.10ライブCDと比較してみよう。UbuntuライブCDではライブ環境からハード・ディスクにインストールできるが、FedoraライブCDには同様のインストール機能はなく、グラフィカル・インストーラーは開発中だ。しかし、現状でも、GPartedでディスクのパーティション管理、Baobabでマウントしたディスクの分析は可能。ただし、デフォルト状態では、パーティションはマウントされず、いずれかをマウントしなければ、GPartedは起動時にクラッシュする。

イメージを扱うアプリケーションでは、どちらにも、FSpot、GThumb、GIMPが含まれ、FedoraライブCDには、さらに、Inkscape(ベクター・グラフィックスの編集)と数十種のフォントが同梱されている。音楽ファイルとビデオ・ファイルを再生するアプリケーションでは、FedoraライブCDにはRhythmbox(CDの再生)とTotem(動画の再生)が、UbuntuライブCDにはSerpentine(オーディオCDの製作)、Sound Juicer(CDからのサウンドの抽出)とサウンド・レコーダーが同梱されている。

ブラウザーや電子メール・クライアントでは、どちらにも、Firefox(Webブラウザー)、Evolution(電子メール・クライアント)、Gaim(インスタント・メッセンジャー)が添付されている。FedoraライブCDには、XChat(IRC クライアント)も同梱され、さらに、Beagle(デスクトップ検索)、AIGLXとCompiz(3Dデスクトップ効果)も含まれており、対応するハードウェアがあれば利用できる。

FedoraライブCDはSELinuxのtargetedモードで動作し、FC6で初めて搭載された有用なSELinuxトラブルシューター・アプリケーションが付いている。しかし、デスクトップ・バージョンにあるXen仮想化サポートはない。また、サウンド・カードの検出、ネットワーク・カードの構成、ファイアウォールの設定のための管理ツールもない。

単なるライブCDを超えて

リリースの際、ZeuthenはライブCDの製作に用いたツールに言及し、それらのツールがExtraリポジトリーに公開されていることを明らかにした。Zeuthenは、かつて、One Laptop Per Childプロジェクト向けにPilgrim(USBフラッシュ・ドライブに置けるシステム・イメージを作るツール)を開発した。FedoraライブCDの最終リリース製作に用いられたツールは、そのPilgrimをPythonで書き直したものだ。Red Hat Enterprise LinuxやCentOSなど、Fedora系ディストリビューションからライブCDを作ることができる。

このツールには、ライブCDの作り方を説明した優れた解説書がある。必要なものは、ライブCDに同梱するRPMとライブ環境が立ち上がったときのシステム構成の種類を指定するパッケージだけだ。現在、フレーバーの異なる3種類のパッケージが提供されている。fedora-livecdはUIのない最小版、fedora-livecd-gnomeはGNOMEデスクトップ付き、fedora-livecd-desktopはGNOMEデスクトップと多くのアプリケーションが同梱される。

しかも、これらは継承的な関係になっている。つまり、fedora-livecd-desktopはfedora-livecd-gnomeの上に構築され、fedora-livecd-gnomeはfedora-livecdの上に構築されている。したがって、たとえば、EclipseライブCDがほしい場合は、fedora-livecd-gnomeの上に製作可能だ。fedora-livecd-desktopをそのままコピーし、デスクトップ用のパッケージを除き、Eclipse用のパッケージを含むように構成ファイルを変更すればよい。

そのようにして製作したfedora-livecd-eclipse RPMはそれ自体バージョン対応のパッケージになり、Fedora 7になればそのときのEclipseに応じて所用のパッケージが取り込まれ、Fedora 9でも同様となる。したがって、Fedora Eclipseコミュニティはfedora-livecd-eclipse RPMの管理において、ライブCD開発者と協調する必要はない。

Zeuthenは「FedoraのさまざまなSIGが独自にライブCDを製作して、自分たちの仕事を示すショーウィンドウとすることができます。たとえば、Fedora Musicコミュニティが独自のライブCDを作るということも十分考えられます」と述べている。

もう一つ驚くことがある。このライブCDツールは、パッケージの管理者にとっても有用なものになりそうなのだ。ライブCDのロードマップには、Fedora開発ツリーのライブCDビルドを毎日送り出すという、rawhideと名付けられた計画が記載されている。rawhideのパッケージに依存性問題があればライブCDは製作されず、問題は直ちに明らかになる。そのため、問題のパッケージの担当者は速やかな改修を促されるだろうという。

開発は続く

現状でも十分有用だが、さらなる強化が進行中だ。現在開発中のライブCD用グラフィカル・インストーラーはFedoraのAnacondaインストーラーのコードを採用しており、複数のアーキテクチャーで動作するはずだ。

ライブCD環境の変更を保存するための永続的なストレージは今のところ予定されていないが、Zeuthenによると、変更をUSBディスクに保存する機能は検討されているという。また、FedoraライブCDメーリングリスト上では、ライブDVDやペン・ドライブに置けるバージョンがいつかリリースされるのではないかといった話も出ている。

とはいえ、FedoraライブCDは現状でも極めて有用だ。選定されているパッケージは新しいLinuxユーザーにとって理想的なスタートラインとなろうし、OpenOffice.orgを外して容量を増やすことでSCIMおよび各国語への翻訳の同梱を可能とし、より多くのユーザーが使えるものにしたのは賢い選択と言うべきだ。一部のGUI構成ツール(ネットワークとファイアウォール)がないが、これは欠点とはならないだろう。

ライブCD製作ツールを巡っては、さまざまな活動が現れ始めている。このツールにより、Fedoraから切り離された小さな構成パッケージで保守することが可能になり、ライブCD製作の手順がより論理的・より秩序だったものになった。たとえば、Vietnamese Open Source Software Communityは、このツールを用いて、OpenOffice.orgとXfceデスクトップ環境を含み「フリーでない」パッケージとコードを若干同梱したFConeという名のカスタム・ライブCDを製作している。ツールの成熟・普及につれ、幾つかのリスピンが登場するだろう。

NewsForge.com 原文