クラスタ用のライブCD、ParallelKnoppix入門

ParallelKnoppix(以下PK)は、HPCクラスタの構築用に作られた変更版のKnoppixライブCDである。PKを複数ノードで起動してクラスタを運用することや、PKをカスタマイズしてアプリケーションを追加または削除することができる。

この記事は、最近出版された『Linux Live CDs』 からの抜粋である。

PKを起動するには、CDをドライブに入れた状態でコンピュータを起動する。起動画面で、カーネルの起動オプションを指定する必要がなければ、そのままEnterキーを押す。たとえば、PK(やその他のライブCD)が正常に起動しない場合に、引数acpi=noを指定するとうまくいくことがある。

PKを使ってmemtestを実行し、システム・メモリを検査することもできる。明確な理由もなくプログラムがクラッシュするなど、マシンで原因不明の問題が起きている場合は、この方法を試してみるとよい。

起動したParallelKnoppixの画面には、メニュー・バーが見あたらないことに気付くだろう。実は、ParallelKnoppixにはタスクバーがあるが、隠れた状態になっている。マウスを画面の下端に移動するとタスクバーが現れる。私と同様にこの動作が気に入らない人は、タスクバーを右クリックし、[Configure Panel]を選択しよう。すると[Configure – KDE Panel]ダイアログ・ボックスが開いて、左側に[Hiding]という項目が表示される。それをクリックし、[Hide Mode]の下の[Hide Automatically]の選択を解除すればよい。

ParallelKnoppixは、DHCPを通じてIPアドレスを取得するようになっている。ネットワーク上でDHCPを実行していない場合は、ターミナルを開き、su -コマンドを使ってrootになる。デフォルトでは、rootのパスワードは設定されていない。そして、次のコマンドを実行してIPアドレスを設定する。

# ifconfig eth0 10.0.0.10 netmask 255.0.0.0 gw 10.0.0.1

もちろん、値は各自のネットワーク環境に合わせて変えてほしい。

スワップ領域の設定

PKをLinuxマシンで起動した場合は、そのマシンですでに設定されているスワップ・パーティションが検出され、使用される。しかし、Windowsを使っている場合は、PKで使用できるスワップファイルが存在しないので、作成する必要がある。システムにFATファイルシステムがあれば、そのファイルシステムをマウントし、ddコマンドを使ってスワップファイルを作成できる。たとえば、/media/hda1にあるFATパーティションにswapfile.swpというスワップファイルを追加するには、次のように入力する。

# dd if=/dev/zero of=/media/hda1/swapfile.swp bs=1024 count=1024k

これにより、1GBのスワップファイルが作成される。countの値を調整してスワップファイルのサイズを変更する。スワップファイルのサイズは、システムRAMの2倍にするのがだいたいの目安である — 少なくとも、1GB以上のRAMが一般的になるまではそうだった。もし1GBを超えるスワップが必要となるような使い方をしているのであれば、おそらくスワップファイルを増やすよりRAMを増やす必要があるだろう。スワップへのアクセスは、RAMへのアクセスよりはるかに低速であることを忘れないでほしい。

次に、このファイルをスワップとしてフォーマットし、システムにスワップを認識させる必要がある。

# cd /media/hda1
# mkswap swapfile.swp
# swapon swapfile.swp

これで完了だ。システムをリマスタするときは、/etc/fstabでスワップファイルを永続的に設定するとよいだろう。それには、次のような行を追加する。

/dev/hda1/swapfile.swp  none  swap sw  0 0

また、マシンをクラスタ・ノードとして定期的に使うつもりなら、GParted live CDなどを使用してWindowsパーティションを少し縮小し、スワップ・パーティションを追加するという方法もある。たいていのマシンにはかなり大容量のディスクが搭載されているので、スワップ用に1GBのパーティションを割り当てても惜しくはないだろう。それに、PKがスワップを自動的に検出するので、あなたは面倒な手間から解放される — そもそもコンピュータはそのためにあるはずだ。

PKライブCDからアプリケーションを使う

ParallelKnoppix CDには、必ずしもクラスタ化とは関係のないたくさんのソフトウェアが付属している。いくつものエディタ、マルチメディア・アプリケーション、インターネット・アプリケーション、ゲームをはじめ、数え切れないほどのソフトウェアが揃っている。

あなたが実際に生産的であるなら、ゲームやその他もろもろは、おそらく必要なアプリケーションのうちに入らないだろう。それでも、PKのディスクがたまたま手元にあって暇をつぶしたいときには、いつでも退屈なWindowsマシンを少しの間Knoppixのデスクトップに切り替えることができる。

しかし、PKにはクラスタ化に役立つ数多くのアプリケーションも付属している。KDEメニュー(Kメニュー)には、ParallelKnoppixをリマスタし、クラスタを設定し、PKの設定を保存するための一連のスクリプトが含まれる[ParallelKnoppix]メニューがある。

必要なアプリケーション(Firefoxなど)がPKに含まれていない場合は、PKをリマスタしてシステムにアプリケーションを追加することができる。

設定を保存する

ライブCDディストリビューションの厄介な点の1つは、マシンを再起動すると、苦労して設定した内容がすべて消えてしまうことだ — ただし、設定を保存する方法があれば別である。PKには、これをすばやく簡単に行う方法が用意されている。

[ParallelKnoppix]メニューを開いて[Save PK Configuration]を選択する。このダイアログ・ボックスでは、個人用の設定、ネットワーク設定、およびプリンタ設定を保存するかどうかを選択し、設定情報の保存先を指定することができる。おかしなことに、フロッピー・ドライブは存在するかどうかにかかわらず、保存先の選択肢に表示される。ファイルの保存先を間違えないように指定しよう。

残念ながら、ハードディスクに保存した設定は自動的には検出されないので、起動時に次のように指定して、ディスクから設定を読み込むように具体的に指示する必要がある。

boot: knoppix myconfig=scan 

それでも、再起動するたびにPKを設定し直すよりはましである。

ParallelKnoppixをQemuで実行する

ParallelKnoppixを試してみたいが、2台のコンピュータを用意できないという場合は、PKをQemuで実行することができる。最近のLinuxディストリビューションを使用しているなら、おそらくQemuパッケージが用意されているはずである。たとえばUbuntuユーザであれば、次のコマンドを実行してQemuをインストールできる。

# apt-get update
# apt-get install qemu

これにより、Qemuと、必要な依存パッケージがすべてインストールされる。また、Windowsで利用できるQemuもある。デスクトップにWindowsを使用している場合は、代わりにWindowsインストーラをダウンロードして試すことができる。

ParallelKnoppixをQemuで実行するには、次のコマンドを使用する。

# qemu -m mem -cdrom parallelknoppix-2006-06-19.iso

-mは、仮想マシンに割り当てるRAMの容量を指定するオプションである。マシンに搭載されているRAMの容量に応じて、384MB以上のRAMを割り当てる必要がある (RAMが512MB未満のマシンでは、Qemuで処理を実行するのは無理かもしれない)。-cdromは、起動にISOイメージを使うことを指定するオプションである。

Qemuは、VMware Player、Server、またはWorkstationほど高性能ではない。ParallelKnoppixをしばらく試してみるつもりなら、VMware ServerまたはPlayerをダウンロードすることをおすすめする。

NewsForge.com 原文