DesktopBSD 1.0:デスクトップ向けのFreeBSD

DesktopBSDは、FreeBSDをデスクトップ向けにカスタマイズしたバージョンである。FreeBSD 5.5-PRERELEASEをベースにして構築されたDesktopBSD 1.0には、KDE 3.5.1のほか、FreeBSDのportsシステム用グラフィカル・インタフェースを含むDesktopBSD Toolsがバンドルされている。

お馴染みのKDEデスクトップ環境の下に隠れているとはいえ、DesktopBSDはやはりFreeBSDである。実際、このシステムのいたるところで見かける表記は”DesktopBSD”よりも”FreeBSD”のほうが多い。DesktopBSDのFAQには、その理由が次のように記されている。「DesktopBSDはFreeBSDのフォーク(fork)ではありません。主としてDesktopBSD Toolsとデスクトップ用の設定ファイルおよびソフトウェアの集合で構成される、カスタマイズされたFreeBSDのインストール環境です」。

FreeBSDはすばらしいオペレーティングシステムだが、「新規デスクトップユーザにとっての使いやすさの重視」という点ではLinuxにかなわない。しかし、DesktopBSDは、経験豊富なユーザと新規BSDユーザのどちらにも非常に適している。

DesktopBSDを体験する

DesktopBSDを使って最初に感じるのが、シンプルさと無駄のなさ、そして使いやすさだろう。パーティションの設定も非常に簡単だ。ハードディスクドライブに新しいパーティション(スライスとも呼ばれる)を作るだけでよく、あとはDesktopBSDが自動でこのパーティションを分割して適切な動作に必要なものをすべて用意してくれるので、root、home、swapといったパーティションの作成に自分の手を煩わさずに済む。

DesktopBSDのインストール終了後、初期設定ウィザード(Initial Configuration Wizard)では、ユーザアカウントの作成が行えるほか、DesktopBSDについての紹介とその活用方法が表示される。そしてログイン画面を通過すると、KDE特有のインタフェースが表示される。唯一、壁紙だけが、この環境がLinuxディストリビューションのものではないことを示している。

このDesktopBSD環境で目にするソフトウェア群は、現在の主流になっているKDEベースのディストリビューションにありそうなものとほぼ同じで、Firefox 1.5.0.1、KMail、OpenOffice.org、K3b、amaroK、Gaim、KDevelopなどである。

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DesktopBSDはFreeBSDのportsシステムを利用している。これは、コンパイル前のパッケージもインストール可能なソースベースのパッケージ管理システムである。portsという名前は、このシステムが主にLinuxからFreeBSDに移植(port)されたアプリケーションで構成されていることに由来している。このportsシステムは現存するパッケージ管理システムの中ではおそらく最良のものだが、きわめて強力なツールであるが故に新しいユーザにとっては非常に難解でもある。コマンドラインでの作業はあまり初心者向きではないので、どのコマンドを使えばいいのかわからず途方に暮れることもあるだろう。そんなときには、コマンドラインにおけるすべての処理を使いやすいGUIにまとめたすばらしいツール、DesktopBSDのPackage Manager(DesktopBSD Toolsパッケージの一部)が大いに役立つ。

DesktopBSD Toolsの中には、システムトレイからパーティションのマウントとアンマウントが行えるTray Mounterのようなユーティリティもある。このユーティリティは特にUSBドライブを扱う場合に便利である。というのもFreeBSDにはこの方面の機能が欠けているからだ。また、ハードディスクドライブのパーティションを切り直すためのDisk Partitionerというユーティリティもあり、標準のKDE Control Centerにうまく統合されている。そのほか、ユーザの追加、削除、編集を行うためのUser ManagerもKDE Control Centerモジュールとして用意されている。

FreeBSDを使ったことがある人には、たとえDesktopBSDをインストールしなくても、上記のツール群はインストールすることをお勧めする。これらのツールはsysutils/desktopbsd-toolsポートに置かれている。

FreeBSDをベースにしているということは、Linuxアプリケーションの実行を可能にするLinuxバイナリの互換性レイヤを持つことを意味する。ただし、この互換性レイヤはCedegaのような本当に複雑なアプリケーションではうまく機能しない場合がある。また、Cedegaが動作しないということはDesktopBSD(またはFreeBSD)でWindowsのゲームができないということでもある。

完全なものは存在しない

全体的に、デスクトップシステム上のFreeBSDとして見る限り、DesktopBSDは間違いのない選択肢である。ただし、完璧なものなどあり得ないので、DesktopBSDにも欠点はある。初心者であれば、DesktopBSDのベースが最新バージョンのFreeBSD 6.1ではなくFreeBSD 5.5 PRERELEASEであることに不満を感じるかもしれない。経験のあるユーザならDesktopBSD内部のFreeBSDを最新バージョンにアップグレードできるだろうが、初級ユーザはバンドルされているもので我慢するしかないだろう。

また、カーネルパニックのバグという問題もある。この問題はIntelチップセット搭載のマザーボードで動作するコンピュータでのみ発生する(特に845/865チップセットが影響を受けるようだ)。影響を受けるコンピュータでDesktopBSDを初めてDVDからブートしようとすると、カーネルパニックが起こってクラッシュする。おそらく、DesktopBSDの開発チームが標準のFreeBSDカーネルに加えたパフォーマンスの調整が原因だろう。そうしたコンピュータでもFreeBSDは動作するが、DesktopBSDは動作しない。この問題は私のテストシステムの1つでも発生したが、それが修正されるまでの間は、前述のように、最新のFreeBSDをインストールしてからDesktopBSDのツール群をインストールすることが解決策になる。

完全とは言えないが、DesktopBSDはこれまでで最も優れたデスクトップ向けBSDをユーザに提供している。

PC-BSD

FreeBSDをデスクトップシステムとしてもっと使い勝手の良いものにする取り組みは、DesktopBSDだけではない。PC-BSDもその1つである。DesktopBSDはFreeBSDをベースにしてデスクトップ環境をより良く使うためのツールを追加したものだが、PC-BSDはFreeBSDの優れたportsシステムを取り除いてカスタムのパッケージ管理システムを採用している。

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