IBM、任天堂「Wii」向け「Broadway」チップの量産出荷を開始

 米IBMは9月8日、任天堂の新型ゲーム機「Wii」向けマイクロプロセッサの出荷を第3四半期から開始しており、量産体制に入っていることを明らかにした。任天堂は計画どおり11月にもWiiを発売する見通しだ。

 9月6日には任天堂のライバルのソニー・コンピュータエンタテインメントが、新型ゲーム機「プレイステーション3」の年末商戦での出荷数量が当初予定の半分にとどまると発表している。

 IBMが出荷を開始したWii用の「Broadway」チップは、任天堂が2001年から「ゲームキューブ」で採用している180(ナノ・メートル)nmアーキテクチャをベースにした「Gekko」チップの90nmプロセス・バージョンIBMは、Broadwayの詳細について、Wii用に変更されたPower Architectureコアを基に、Gekkoよりも消費電力が20%低く、性能も向上しているとだけ説明している。

 だが、1つ確実なことは、Wii用のBroadwayチップでIBMが多くの収入を得ることだ。IBMのテクノロジー・コラボレーション・ソリューション部門のディレクター、ロン・マーティノ氏によると、任天堂はゲームキューブを累計で2,000万台出荷しており、IBMは次世代のWiiプラットフォームも同様に大量出荷されると見込まれるという。

 実際、今後7年間のゲーム機の出荷台数は1億3,500万台に上る見通しであり、それらのほとんどにIBMのマイクロプロセッサが搭載されることになる。IBMは任天堂と競合するソニーのプレイステーション3やマイクロソフトのXbox 360用のチップも製造しているからだ。

 「われわれは3大ゲーム機すべてのマイクロプロセッサの供給メーカーであり、このチップ市場セグメントを事実上支配している」とマーティノ氏は述べている。

 任天堂はWiiの発売日を発表していないが、アナリストは、年末商戦に間に合うタイミングで発売されると予想している。

 IDCのシニア・リサーチ・アナリスト、イダローズ・シルベスター氏は、「11月中旬まで店頭に並ばなかったとしても、年末商戦で任天堂が一気に大量販売することは可能だ。また、プレイステーション3の供給量が予定を下回ることがわかったため、任天堂はさらに少し余裕ができた」と述べている。

 マイクロソフトのXbox 360は2005年の年末商戦から販売されているが、IBMはゲーム機大手3社向けのチップ製造契約を獲得することで、市場変動の影響を巧みに回避している。

 「今年、プレイステーション3の販売数量が当初予定より少なくても、Wiiがヒットすれば、IBMにとってそれほど打撃はないだろう。どの製品が成功してもIBMは恩恵を受ける」(シルベスター氏)

 また、IBMはゲーム機向けチップの研究を生かして新たな収入源を生み出している。ゲーム機で高精細のブルーレイやHD DVDディスクが採用されるのに伴い、大容量データ・ストリーミングにに対応するチップが必要になってきているからだ。

 3種類のゲーム機向けチップはいずれもプロプライエタリな設計であるが、IBMはその関連バージョンをゲーム以外の業界に販売することに成功しつつある。IBMがソニー向けに製造するCell Broadband Engineチップは、航空宇宙、防衛、製薬業界のエンジニアの間で人気を博している。

(ベン・エームズ/IDG News Service ボストン支局)

提供:Computerworld.jp