FUDCon、そしてFedora Foundationの終焉

マサチューセッツ州ボストン ─ 先週の金曜日、LinuxWorld Conference & Expoの終了後、ボストン大学(Boston University School of Management)で開催された第5回Fedora User and Developer Conference(FUDCon)に出席した。Fedora Foundationの終了(時間の問題だったが)に関するRed Hatの発表についてホールでは噂話が飛び交っていたが、おもしろい講演も聴けた。

Fedoraの創立者Warren Togamiによる「Welcome to Fedora(ようこそFedoraへ)」と題された講演では、Fedoraのこれまでの歩みと運営が語られた。Togamiはかなりの時間を割いてFedoraがRed Hatのビジネスにとっていかに重要かを説き、FedoraはRed Hatのエンタープライズ向け製品の”永遠のベータ版”に過ぎないとする見解を打ち消そうと努めた。これは苦しい説明だった。FedoraがRed Hatのエンタープライズ向け製品のベータ版であることは、動かぬ事実だからだ。それでも、TogamiはRed HatのビジネスにおけるFedoraの重要性を努めて強調し、Fedoraが単なるベータ版を超えた広がりを持つことにも言及した。また、Fedora Coreのコミュニティを拡大し、Fedoraへの直接の寄与を受け入れることにRed Hatは前向きであるとも述べた。コミュニティの関与を増やすことは、Red Hatがかなり前から約束していたことなので、Red Hatが実際にどのようなものを提示するのか、それがいつになるのか興味惹かれるところである。

Fedoraの将来

Jeremy Katzは、もともとXenについて話す予定で壇上に立ったが、テーマを変えることにしてFedora Core 6で予定されている機能について説明した。私に関する限り、この変更は歓迎だった。Fedora関係者が次のリリースで何を計画しているのか、興味があったからだ。

あいにく、話の大半はFedoraのリリース・スケジュールに関するものであり、次期リリースで追加や変更される機能の具体的な説明ではなかった。参加者からは、リリースサイクルを6ヶ月から9ヶ月に伸ばすか変更してはどうかと何度か提案されたが、聴衆の総意は6ヶ月のスケジュールを維持して、GNOMEやX.orgなど、6ヶ月サイクルでリリースされることの多い他のプロジェクトに歩調を合わせることだった。

この試用スケジュールが守られた場合、FC6 test 1は7月7日前後にリリースされ、FC6の最終リリースは9月20日前後になると予想される。もっとも、この日付には何の保証もない。

スケジュールに関する討論が一段落してから、Katzと参加者はFC6でどんな機能を実現できるかブレーンストーミングを始めた。FC live CD、AppleのIntel Macのサポート、設定ツールの強化、Fedora CoreまたはExtrasリポジトリへのFedora Directory Serverの追加など、多くの新機能や強化がここで挙げられた。

数人の参加者が、シングル・インストーラCDを提供するかパーティションサイズ変更機能をインストーラに含めることはできないかと要望した。どちらの要望もこのミーティングで論破されたようだ。Katzは、パーティションサイズ変更機能をインストーラに追加するには、あまりに多くの開発者時間が必要になると指摘した。

シングルFedora CDか最初の2枚のCDを使ってインストールを最小構成で行うことは可能だが、Ubuntuのようなシングル・インストールCDの提供を期待する意見も少数ながら聞かれた。明らかに、これが実現する望みは薄い。Fedora Projectが、インストールCDで「自己ホスト型」環境を提供することを望んでいるからだ。この環境をシングルCDで実現するのは不可能である。

Fedora Foundationの店じまい

Fedora Foundationと新しいFedoraのリーダーシップ・モデルを議題に予定したMax Spevackの講演「The State of the Fedora(Fedoraの現状)」を最後まで聞きたかったが、帰りの飛行機の便をつかまえるためランチ後に中座しなければならなかった。ただし、その前にRed HatのCommunity Development ManagerであるGreg DeKoenigsbergと席を交え、Fedora Foundationの終了とRed Hatが計画していることについて意見を交わす機会があった。

もともとFoundationはオープンソースを保護するための特許の保管所として設立され、その後「あらゆる種類のFedora関連の問題を解決するために活用できるツール」とSpevackが呼ぶものに徐々に姿を変えていった。

「Fedoraの問題の1つ1つがFoundationというハンマーに打たれる釘になり、Foundationの守備範囲は、てきぱきと片付けられれないほどの大きさにあっという間に広がった」

DeKoenigsbergによると、Foundationの発表後にOpen Invention Network(OIN)が姿を現し、ソフトウェア特許に関してFoundationが担うと見込まれた役割を引き受けることになった。

そうなってからは、Foundationを独立したNPOとして組織するかどうかはちょっとした問題になった。というのも、Fedoraへのサポートは大半がRed Hatからのものであり、NPOがサポートの1/3以上を同じ支援元から受けることは禁じられているのである。Fedoraが事業として自立できる見込みは少ない。DeKoenigsbergによると、Fedora単体で設備と帯域幅のコストは100万ドルを超えるのだ。

Fedora Foundationの構想が葬られたもう1つの理由は、この組織がRed Hatから独立して活動することをRed Hatが喜ばないことだ。Spevackの声明文に、こう書かれている。

Red Hatは、Fedoraの決定に一定の影響力を”絶対に”持たなければならない。なぜなら、Red Hatのビジネス・モデルはFedoraに”依存している”からだ。Red Hatは、Fedoraを成功させるためにスタッフとリソースを数百万ドルも寄付している。また、Fedoraの法的リスクを全面的に負うのもRed Hatだ。したがって、Red HatがFedoraに関して難しい決断を迫られることもあるだろう。たびたびではないだろうが、そういった決断を下すときは、決断に至る理由をできるだけオープンに ─ 最近のMonoの決定でしたように ─ 議論することになる。

しかし、決定に対する拒否権を持つからといって、Red Hatがそれを喜んで行使するわけではない。また、Red HatがFedoraに関する重要な決定を常に決めるわけでもない。事実、コミュニティによる効果的な意思決定は、Fedoraの成功を測る最も直接的な物差しである。

Red Hatは、Foundationに代わるものとしてFedora Project Boardを再構築した。このBoardでは、コミュニティのメンバーとRed Hatのスタッフが協力してFedora Projectの進路を先導する。発足時の9人のメンバーのうち、5人はRed Hatのスタッフで、4人はコミュニティのメンバーである。Red Hatから指名される議長は拒否権を持つが、投票権は持たない。

SpevackはFedora Project Boardの議長に就任し、Red HatのBill Nottingham、Elliot Lee、Chris Blizzard、Rahul Sundaram、KatzがRed Hat代表として参加する。Red Hatの発表によれば、コミュニティから参加するメンバーはRex Dieter、Paul W. Frields、Seth Vidalである。DeKoenigsbergによると、Red Hatは4人目のコミュニティ・メンバーに参加を打診中で、1週間前の時点で回答待ちということだ。

この「ブートストラップ・ボード」を除いて、Fedora Projectの統括モデルの細かいシワにはまだあまりアイロンがかけられていないと、DeKoenigsbergは言う。Fedora Project Boardの活動が一定の期間で区切られて、経験あるメンバーが常に参加できるようになることを彼は期待している。

また、Boardのメンバーを選出する方法もまだ決まっていないが、DeKoenigsbergは、少なくとも数人はコミュニティでの投票で選ばれることを期待している。その場合、選挙権をコミュニティ・メンバーのどの層に与えるかを決める必要があるだろう。

DeKoenigsbergがこのBoardに期待するのは、Red Hatエンジニアリングの外部からFedora Coreへコードの寄与を受け入れる仕事に取り組むことだ。このパッケージを制御するのにRed Hatエンジニアリングは必要ないからである。「Coreをよく見れば、Red Hatが管理している部分は10%ないし20%を超えないことがわかります」たとえば、MySQLやVimの管理は、Red Hatエンジニアリングの外部の開発者が簡単に行える。ただし、Red Hatは、エンタープライズ・リリースで提供することに努力を傾注している最先端の領域(Xenなど)に属するパッケージを管理下に置くことを望むだろう。

Fedora Project Boardの構成はまだあまり固まっていないので、アップデートを定期的にリリースしたり、Fedoraコミュニティの他のメンバーにBoardの活動状況を知らせるためにミーティングの議事録を投稿したりする必要があると、DeKoenigsbergは考えている。

将来のFUDCon

全般的に言って、FUDConには良好なコミュニティの感触があり、くつろいだ雰囲気の中、大勢の熱心なFedoraユーザと開発者が集まっていた。遅い時間帯のセッション、特にMIT OpenCourseWareセッションとMythTVセッションに参加できなかったのは残念である。

FUDCon Boston 2006に参加できなかったことを口惜しむ必要はない。これが年内最後の開催ではないのだ。FUDConのオーガナイザは、サンフランシスコでLinuxWorld Conference & Expoが開催された後の8月18日にFUDConを開くことを、すでに計画している

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