Linux Terminal Server Projectリリース4.2

マサチューセッツ州ボストン――Linux Terminal Server Project(LTSP)はシンクライアントとLinuxサーバの接続を簡単化するためのソフトウェアであるが、このたびLinuxWorld Conference & Expoにて同ソフトウェアの4.2リリースがアナウンスされた。今回の新規リリースでは、ローカルデバイスサポートの改善、必要なメモリ量の削減、スキャナおよびマルチヘッドのサポート、および2.6カーネルの採用が行われている。

ローカルデバイスのサポートでは、USBフラッシュドライブなどのデバイスをプラグインで使用するための機能が改善され、こうしたデバイスをネットワーク経由で読み取ることが可能となったことで、これらを扱うシンクライアントを通常のデスクトップコンピュータであるかのごとく使用できるようになった。プロジェクトリーダーを務めるJim McQuillan氏によると、同プロジェクトの目的は、「シンクライアントを使用するユーザが不遇を託つことの無いようにする」ことであり、通常のデスクトップマシンと同等のユーザエクスペリエンスを提供できるようにすることである。

LinuxWorldのLTSPのブースには、LTSP 4.2で追加されたローカルデバイスサポート機能のデモンストレーション用に数台のテストマシンが用意されていた。今回のテスト環境を信頼する限り、この機能は実に見事に機能した。USBフラッシュドライブやCD-ROMなどのデバイスが、プラグインされるのとほぼ同時にシンクライアントのデスクトップに認識されたのである。また、ファイルを開いたりローカルデバイスからサーバにコピーするなどの操作も、通常のLinuxデスクトップに匹敵する速度で動作していた。

なお、こうしたローカルデバイスのサポート機能はデフォルトではオフにされており、システムへのデバイス接続をユーザに許可するかは、システム管理者が設定することができる。McQuillan氏の説明によると、ローカルデバイスに関するLTSPの設定は、シングルオプションとして指定できるとのことだ。

必要なメモリ量の削減では、シンクライアントのブートに求められるRAMの容量が、従来の20MBから12MBに引き下げられた。ただしMcQuillan氏の説明によると、たしかに必要最小限のRAMは12MBだが、システムには最低でも32MBを搭載した方が「操作性が向上する」とのことである。また今回のリリースではブート速度も若干向上しており、McQuillan氏によると、通常のマシンのブートに4.1リリースでは約40秒を要していたものが、4.2リリースでは約22秒で済むようになったと言う。

今回のリリースでは、NFSによるスワップではなくネットワークブロックデバイス(NBD)でのスワップを使用しているが、2.6.xシリーズのカーネルではNFSスワップが扱えないため、この仕様はLTSPチームが2.6.xカーネルを使用できるようになったことを意味する。

X Window Systemのサポートについても、いくつかの変更が行われている。McQuillan氏の説明によると、LTSPチームはXFree86のサポートを取りやめ、今回のリリースでX.org 6.9に移行したということである。またマルチヘッド構成がサポートされたことで、シンクライアントでの複数モニタの使用が可能となった。

将来的なプラン

McQuillan氏の語るところによると、同プロジェクトによる次回リリースについては、現在その構想が練られている段階であるが、オーディオサポートとセキュリティの2点は最優先事項として扱われているという。たとえば現状のLTSPでは、ローカルネットワークに流されるトラフィックに対してNFSなどのサービス用の暗号化は施されていないが、McQuillan氏によると、次回リリースではすべてのサービスに対する暗号化オプションを提供したいとのことである。

もう1つの課題は、オーディオサービスの提供である。McQuillan氏の説明によると、現行のLTSPにおけるローカルオーディオ機能は4.2リリース以前と変わりなく、「かつてのローカルストレージと同様の状況」にあるという。

現在のところLTSPはUbuntuディストリビューションの一部としてのみ使用できるだけだが、McQuillan氏によると、同プロジェクトはFedoraプロジェクトと提携してLTSPを組み込むための作業を進めているという。同氏の説明では、特定のディストリビューションでLTSPを使用するのは比較的容易なことであり、これはデフォルトで同梱されていない場合でも可能であるが、できることならば、すべてのディストリビューションの標準機能としてシンクライアントのサポートを追加させたい、とのことである。

同プロジェクトはリリースサイクルを特定していないが、McQuillan氏によると、おそらく4.3のリリースは6から8か月以内に行われるだろうとのことだ。なおLTSPのソースコードはLTSPのサイトからダウンロードできる。

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