SWsoft、Virtuozzoの無料オープンソース版を提供

昨日、VirtuozzoなるVPS(Virtual Private Server)ソフトウェアを推進するSWsoftから「半完成」のオープンソース版OpenVZをリリースするとの発表があったが、これで同社のプロプライエタリ版の開発に弾みがつくものと思われる。

OpenVZプロジェクトのマネージャ、Kir Kolyshkinは、OpenVZがVirtuozzoの開発成果を享受するだけでなく、コミュニティ参加型の無料オープンソース版開発によってVirtuozzoとOpenVZの両方が利益を得ることになると述べている。オープンソース版は、プロプライエタリ版の購入前に実動製品を見てみたい、あるいはプロプライエタリ版の開発に弾みをつけることに役立ちたいと考えている技術好きのユーザーを主たるターゲットとしている。

どちらの製品を使用しても、サーバー管理者は1台のマシンの上に最大100セットの独立した仮想サーバーを構築できる。両製品を所有する会社、SWsoftの広報担当、Rufus Manningによれば、アプリケーションはいずれも1つまたは複数の物理サーバー上に構築された仮想サーバーを扱えるように設計されており、1日24時間、週7日の環境で稼働するという。

OpenVZは、Virtuozzoコードから単に枝分かれしたものというよりもVirtuozzoの中核となるコンポーネントであり、オープンソース・プロジェクトによってフル装備のプロプライエタリ版の「製品開発に弾みがつく」とKolyshkinは述べている。「Virtuozzoは、OpenVZの商用アドオンと位置づけることができる」

「OpenVZの新機能のほとんどは当然、Virtuozzoに組み込まれることになる」が、同社としてはその後の開発をプロプライエタリ版に限定してコードを閉じるようなことはしたくないとKolyshkinは言う。「開発はOpenVZについても続けられ、両製品が成果を享受することになる」

OpenVZは2つのライセンスのもとでリリースされる。Kolyshkinによれば、今後の開発と改良を可能にすると共にプロプライエタリ版とオープンソース版の両方について開発者の著作物を保護することがその目的だという。ソフトウェアの中核部分はGNU General Public License(GPL)に従う。これはLinuxカーネルの派生著作物に求められる要件だ。Virtuozzoの最新リリースはバージョン2.6.2で、Linuxカーネル 2.4をベースとしており、OpenVZのベースはカーネル 2.6である。

Kolyshkinによれば、OpenVZのユーザーレベルのツールはQ Public License(QPL)のもとでリリースされてきた。「本質的にツールの支配権は手放したくないものだ」が、OpenVZ開発者はユーザーの求めに応じてライセンスを変更する用意があるようだ。「コミュニティや、ディストリビューションにOpenVZを含めたいと考えている一部のベンダにとってQPLのライセンス条項が好ましくなければライセンス変更もあり得る。我々は意固地でないし、話し合いの用意はある」

QPLがGPLと大きく異なるのは、コードの再配布や変更は可能だが、ソフトウェアの改変箇所をユーザーに具体的に警告しなければならないことだ。OpenVZの場合、これでユーザー・ツールの改良や変更が可能になると同時に、オリジナルのバージョンは元の開発者の手を離れることなく保護される。

一般的な開発活動

OpenVZをより信頼性の高い仮想化ツールと評するKolyshkinは、同プロジェクトのカーネル開発工程で旧版のLinuxカーネルを使用するのは、Red HatやNovellなどの大手ベンダがよくやる手と同じと言う。これでソフトウェアの信頼性を高めることができ、「敢えて綱渡りせず、旧カーネルにこだわり、必要に応じてセキュリティ修正、バグ修正、ドライバのアップデートをすべてバックポートするわけだ。非常に手間がかかるが、既知のバグやセキュリティ・ホールがすべて塞がれ、新カーネルの新たなバグやセキュリティ・ホールに悩まされずに済む」

南アフリカに本拠を置くKruger Networksの所有者で創設者でもあるChris Krugerは、OpenVZのドキュメントを読む限り、Virtuozzoは最高の製品だと思うが、オープンソース版は価格的にずっと魅力的で自社の用途に向いていると述べている。

Krugerによれば、同社のWebサイトは3月の開業前に立ち上がるようだが、Kruger Networksでは、OSを「新規インストールした」サーバーでのテストがどうしても必要なら、OpenVZを使用してソフトウェア・テスト用の仮想システムを構築するという。これらのテストに要する時間が短縮されるだけでも、このソフトウェアは彼や彼の会社にとって利用価値があるとKrugerは言う。

「OpenVZの展開とメンテナンスは信じられないほど簡単だ。他のオープンソース仮想化ソフトウェアは展開にずっと時間がかかり、Linuxについて相当の知識が必要で、しかもリソースを多く消費する」

ライバルの意見

OpenVZと同様の製品で、3年の実績を持つLinux-VServerの中心的な開発者であるHerbert Poetzlによれば、SWsoftがオープンソース版を提供するのは、製品開発やマーケティングに専念できるように「カーネル開発のアウトソーシング化」を目論んでいるのだという。同社はXenのようなソリューションの人気が高まるのを見て、SWsoftや彼のプロジェクトが行っているような仮想化にも関心を向けようとしているのだろうとPoetzlは言う。

「ライバルがいてもまったく問題ない。逆に、OpenVZとの競争があるおかげでLinux-VServerは既に多くの利益を得ている。我々はアイデアばかりでなく現実の機能を求められており、実際に比較検討も行われている」

Kolyshkinによれば、OpenVZとLinux-VServerは仮想化の手法は似ていても、仮想システムの実装が大きく異なる。OpenVZの方が、提供する機能セットが大きく、独立性に優れ、DOS攻撃への耐性も高い。この2つの特長は、メモリおよびカーネル内部のオブジェクトが適切に管理されているからだという。

Poetzlによれば、OpenVZにあってLinux-VServerにない機能は、ユーザーの要請がない機能か現在取り組んでいる最中の機能のどちらかだ。OpenVZの提供するネットワーク仮想化/分離機能は「まだ計画段階」で、NGNETと呼ばれる機能は2〜3カ月のうちに完成する予定だ。Linux-VServerは現状でもネットワーク分離を実現しているが、多くの点でホスト・システム側の設定が必要だという。

OpenVZは、CPUのメモリ使用率を監視する/proc/meminfoを仮想化していないが、Linux-VServerでは、そのようなことがこれまで必要とされなかったので、カーネルに特別なメモリ制限を設けていないという。また、Linux-VServerは現在あるすべてのカーネル・アーキテクチャをサポートするのに対し、OpenVZが扱っているのは、ごくわずかだとPoetzlは指摘する。

OpenVZはx86システムとx86_64システムのダウンロードを提供しており、ソースRPMはそのカーネル・ダウンロード・ページにある。

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