今日のLUGの意義を考える

Linuxユーザグループ(Linux User Group:LUG)がLinuxの急速な発展と拡大に大きな役割を果たしたことは間違いない。Linuxの初期の時代、LUGには、Linuxを広めようという熱意を持ったさまざまな職業の人々が集まっていた。だが今日では、メンバーのほとんどはIT業界の玄人だ。LUGは今でも有意義なものだろうか?

私の住むオースティンでは、この地区の元祖LUGの創設メンバーで、会の発展に大いに貢献したある弁護士がLUGミーティングの場所を提供してくれていた。当時のLUGには、ホビイスト、主婦、フランス語教師、エンジニア、サラリーマン、大学教授、学生、プログラマなどが参加していて、誰もがLinuxについて熱い想いを抱いていた。今日では、初期のメンバーはほとんどいなくなってしまった。現在のメンバーであるシステム管理者たちは、Linuxをもっと客観的な目でとらえ、他のOSと比べた場合の長所と短所を冷静に検討している。

私が1995年にLinuxを使い始めた頃は、助けを求められる場所はあまりなかった。当時、私は自分のニュースレターを配信するために自宅にWebサーバをセットアップしようと努力していた。私は地域のメーリングリストで中古のISDNルータを見つけ、ISPにはネットワーク設定を通じてお世話になった。オースティン在住の初期のLinuxユーザが立ち上げたDeja Newsというニュースグループにもかなり助けてもらったが、一番役に立ったのは、毎週のLUGミーティングで直接人に会って話をすることだった。

当時のLUGを取り仕切っていたのは、Stu GreenというコンピュータマニアのLinuxグルだった。彼は毎週、面白くてためになる話を聞かせてくれ、Microsoftを罵り、ハードウェアを格付けし、Linuxとその機能を褒めちぎった。Microsoftバッシングは会の主な目的ではなかったが、楽しみの1つではあった。Windowsに満足している人など誰もいなかったからだ。私もそうだったが、メンバーの多くはOS/2から流れてきた人たちで、我々は単にLinuxというOSそのものではなく、Linuxという社会現象に夢中になっていた。なぜなら、Linuxは、独占企業が競争相手を打ち負かすために使う汚いトリックや略奪的なビジネス手法とは無縁の存在だったからだ。

概して、コンピュータマニアは一般の人々よりも社会的スキルに欠けている。オースティンのLUGの歴史は、エゴのぶつかり合いや、メーリングリストやミーティングの主導権争いに彩られている。月日が経つにつれてグループは分裂し、その中でさらに分裂したものもある。私が知る限り、現在では3つのLUGがオースティンで活動しているが、そのどれも、元祖LUGほどの盛り上がりは見せていない。元祖LUGでは毎週木曜の夜に常に25〜50人の人が集まっていたものだが、現在のAustin Linux Group(元祖LUGから名称変更)では10人以上集まればいいほうだ。今日では以前よりもLinuxを使う人や企業が増え、Linuxへの投資も進んでいるが、LUGの参加者は減少傾向にある――少なくともここオースティンでは。

LUGの参加者も、その場を楽しんでいるとは限らない。参加者の中には、Windows帝国の版図を脅かすLinuxについて勉強するよう命じられて来たMSCE資格者もいるだろう。あるいは、ユーザを高価なハードウェアのくびきから解放しようとする「雑種ども」を見下しているプロプライエタリUnixのグルもいるかもしれない。コンピュータをかじりはじめた健全な学生もいることはいるが、ほとんどの新会員は、なんらかのディストリビューションの管理者である。彼らは「Linuxを使って何事かを効率よく行う方法を学びたい」という玄人的視点からのニーズを持っており、LUGは、同じような境遇にいる人々と知り合い、お互いに学ぶための場所になっているのだ。

私は、Linuxやオープンソースアプリケーションについて助言を請う電子メールをもらったときには、まずその地区のLUGを探し、そこで相談してみることをお勧めしている。だが、これが今でも昔と同じように有効なアドバイスなのかどうか自信が持てないでいる。LUGの参加者の減少と、LUGの性格そのものの変化を考えると、最初の疑問につきあたる。つまり、「LUGは今でも有意義なものだろうか?」ということだ。

私の答えは「YES」である。LUGは今も意義を失っていない。だが、その意義は初期の頃に比べて小さくなっている。LUGは、もはやかつてのようなLinux導入のリーダーではない。最近のディストリビューションに見られるインストールの簡便化、Linuxユーザベースの広がり、エンタープライズツールとしての受け入れの拡大といった要因のおかげで、LUGの必要性は小さくなっている。今日のLUGは、ユーザたちの刺激的な出会いの場というより、むしろ管理者たちの親睦クラブとしての性格を強めているのだ。

原文