調査結果:オープンソース開発者は速やかにバグを修正し、非オープン技術の利用にも前向き
この調査の対象になったのは、2005年10月にオープンソースのプロジェクトに従事していた456名の開発者だ。
こうしたオープンソース・ソフトウェアの速やかな修正は、バグ修正までのレスポンス量が年々10〜20%向上しているという最近の傾向に沿ったものである、とEvans Data社の社長John Andrews氏はNewsForgeに語った。 「オープンソースがより身近になったことと、周辺コミュニティによるサポートが向上したことの相乗効果である」と彼は言う。
Apacheの開発者であり、米CollabNet社の創立者で最高技術責任者(CTO)を務めるBrian Behlendorf氏は、このバグ修正に関する調査結果を真剣には受け止めていない。彼は、ここでいうバグが、デバッグを必要とするような製品の問題ではなく、ユーザによる単純な設定誤りの問題だった可能性があると指摘している。 しかし、オープンソースにおけるレスポンス体制の成熟と発展によって、修正が効率的かつ迅速になったことはBehlendorf氏も認めている。
「大部分のオープンソース・プロジェクトは、コミュニティに属す他の人々がレスポンスを返しやすいようにバグ報告ツール ― Webベースのデータベースのような正規のツールと、メーリングリストのような略式のツールの別を問わず ― を構築している」とBehlendorf氏は説明する。 「そうすれば、すべての顧客について報告への対処が遅れがちな少数のフルタイム開発者ではなく、折に触れて回答することをいとわないパートタイム開発者の潜在的にもっと大きな集団を利用して、最初の回答者としての信用と承認が得られる」という。
オープンソース・ソフトウェアのユーザは、自分が使っているソフトウェアの欠点やバグを詳しく調査でき、その報告時には、ソースコードにアクセスできなかった場合に通常入手できるよりも豊富な情報を提供できる、ともBehlendorf氏は述べている。
「人口統計的に見ると、オープンソースのユーザ像は、Microsoftに対してPCがフリーズし続けていると不平を言うような平均的なユーザではなく、先に述べたような調査を進んで行うもっと技術指向のユーザに近づく傾向がある」と彼は言う。 「FirefoxやOpenOffice.orgのようなより複雑なプログラムが一般的になってはいるが、ユーザベースは非技術指向のユーザに移行しているため、実際にこの傾向が続く可能性は低いかもしれない。 しかし、非技術指向のユーザはおそらく“手がかりのバッファ”的な役割を果たす技術系の組織にまずサポートを求めるだろう。 すると、こうした組織にいる技術者には上流プロジェクトに対するバグ報告が数多くもたらされることになる」という。
米Illuminata社のシニア・アナリストであるGordon Haff氏は、バグのレスポンスに関するEvans Data社の調査結果の重要性を評価するのは難しい、とNewsForgeに語っている。 活動を休止したオープンソース・プロジェクトから修正が提供されることはまずないという点を彼は指摘している。 それでも、世界各地のRed Hat社とサポート契約を結んでいるLinuxユーザであれば「結局のところ、それがコミュニティであるかRed Hatであるかには関係なく」修正をすぐに入手できる、とHaff氏は説明する。
順調に発展するコミュニティ
Evans Data社は、オープンソース・ソフトウェアのコミュニティの発展について「開発用の知識リポジトリ」としてコミュニティが役立っている点にも言及している。
「第一に、コンテンツと知識、それにあらゆる数値において、こうしたコミュニティとそれらを育てる周囲の環境が途方もなく成長するのを我々は目にしてきた」とAndrews氏は述べる。 「これはオープンソースの提唱者たちが予期していた成熟過程そのものであり、こうした進化はゆっくりと、しかし確実に起こっている」という。
Behlendorf氏も賛同し、CollabNet社がこの知識共有のメッセージを企業ユーザに届けようと懸命に努力していることを示唆した。 「これは、普通の知識管理ツールはもちろん、かつて流行した“資産再利用リポジトリ”をも凌いでいる。 資産と知識に“傾倒した”活気あふれるコミュニティは、非常に強力だ」と彼は語る。
Haff氏は「コミュニティ」という表現を画一的に使おうとはせず、 Linux、Solaris、OpenOffice.org、SugarCRM、BugTraq、および他のコミュニティの違いを指摘している。 「コミュニティは数多くあるが、規模と投資レベルはそれぞれ異なっている」と彼は言う。
それにもかかわらず、Haff氏が認めているように「個々のコミュニティに関わる人の数は増加」している。
独占的な実用主義?
オープンソース開発者の多くが、十分に機能するのであれば、概して非オープンソース・ツールの利用に反対していないこともEvans Data社は示した。 Linux用の非オープンソース・ツールを「絶対に」購入しないと答えたのは、回答者のわずか6%だった。
「こうした状況を後押しする要因はパフォーマンスにある」とAndrews氏は述べている。 彼は非フリーのオープンソフト・ソフトウェアに関して「彼らが非フリー・オープンソース・ソフトウェアを使って生産性を向上できるなら、それに越したことはない」と発言した。
以前はオープンソースにするためにパフォーマンスを犠牲にすることをいとわない場合もあったとAndrews氏は補足しているが、現在、開発者の多くは複数の開発環境を利用し、パフォーマンスに基づいてこれらの環境を選択している。
Behlendorf氏は、自らの経験によって、非オープンソースのツールの積極的な利用を認めるようになった、と話している。 「ほとんどのプログラマがオープンソースに惹かれる理由は、その柔軟性とセキュリティ、それに協調作業の信頼性と機能にある。ある種の利益追求体制に対する思想的な嫌悪が理由になっているわけではない。 ただし、非オープンソースのツールが利用されるためには、ユーザにとって重要な点においてフリーの代替ソフトより著しく優れていなければならない」と彼は述べている。
Illuminata社のHaff氏によると、Linuxまたはオープンソース開発のために非フリー・オープンソース・ソフトウェアを積極的に利用したのは「オープンソースを利用する多くの人々が、成熟性と実用主義の双方の高まりをある程度考慮した結果だった」という。
Evans Data社の調査結果についてHaff氏は「確かにこの調査結果では、大多数のオープンソース開発者がオープンでないソースまたは独占的ツールの利用検討に少なくとも前向きではあると報告されている。しかし、それは比較的小さな多数派に過ぎない」と語っている。 「オープンソースの世界には、オープンソース・ツールを支持する強い嗜好性が間違いなく存在する」とのことだ。
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